レベルアップ! 確実に、素早く!
<経験が一定値に達しました。レベルが上がりました!>
トウコの頭に合成音声のような中性的な声が響く。
レベルアップを知らせる天の声だ。
「やたっ! レベルが上がったっス! そういえばホラーだけどロープレ風だったっス!」
ステータスウィンドウを確認して、新しいスキルを物色する。
「うーん。新しいスキルより今あるスキルを育てようかなぁ。まずは、きちっと当てられるようににするっス!」
すぐに方針を決めて、スキルを取得していく。
トウコは迷わない。
早く射撃するよりも、確実に当てることを優先する。
弾は無駄にできない。
そして、銃を撃つよりも時間のかかるリロードタイムを減らす。
銃のスキルの使い勝手は悪くない。あとは、使いこなせればいいだけだ。
【照準精度】【装填】【安定化】のスキルレベルを上昇させた。
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名前 : アソ トウコ
レベル: 3
スキル:
【銃創造】1
【弾薬調達】1
【応急処置】1
【緊急回避】1
【銃器】1
【照準精度】2(上昇)
【装填】2(上昇)
【早撃ち】1
【安定化】2(上昇)
(残ポイント:0)
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「よーし! これで勝つるッス!」
トウコは手の中の銃を構える。
右や左に狙いをつける。
前よりも正確に、素早く構えることができるようになった。
「さーて、このドアを開けるとどうなるのっと」
ゾンビと連戦した通路にはいくつかのドアがある。
その一つを開けて、中をのぞく。
薄暗い部屋だ。
窓から差し込む月明りが頼りない光を投げかけている。
銃を構えながら、トウコは部屋へと踏み込む。
「誰もいないっスねえ……うわっ!?」
目の端でなにかが動いた。
その姿に驚いて、銃を向ける。
だが、誰もいない。
トウコは鏡に映った自分に銃を向けている。
壁の一面は全面が大きな鏡になっている。
汚れた鏡が、ぼんやりとトウコの姿を映している。
歪んで映るその姿は、自分のものとは思えない。
「ビビったっスー! もう、なんなんスかーっ!」
トウコは部屋の中を見回す。
テーブルやイスなどの家具は埃にまみれている。
帽子やコートをかける木製のハンガー、大きな鏡。
ここは、着替え部屋だ。
個人宅では考えられないような、専用の広い着替え部屋。
調度品は美しい装飾が施され、高級感が漂っている。
入ってきたドアとは別に、奥へ続くドアがある。
「この先にはなにがあるんスかねえ――」
ぎしり。
背後から、床が軋む嫌な音が響く。
ゆっくりと振り向いたトウコの目に、廊下から入ってくるゾンビが見えた。
「な、なんでっ!? さっき、廊下の敵は倒してきたのに……おかしいっス!」
ゾンビがトウコを見つけて、喉を鳴らすような音をたてる。
「シャアアアッ!」
そしてゾンビは、トウコへ向けて全力で走りだした。