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女子高生とゾンビとリボルバー拳銃

「ああもう……なんでこんなことに!」


 ゾンビの大きく開かれた口が目の前で()()()と音をたてて閉じる。

 その勢いで折れ飛んだ歯が、トウコの(ほお)にあたって跳ねる。


「んなろうっ!」


 (くさ)った体を押しのけ、手の内の六連発(リボルバー)拳銃を突きつける。

 引き金(トリガー)を引く。撃鉄(ハンマー)が落ちる。


 小さな発火炎(マズルフラッシュ)をあげて、銃口から弾丸が飛び出す。


 (ひたい)から侵入した弾丸が、(くさ)った脳を吹き飛ばす。

 後頭部まで突き抜けて、派手に血と脳漿(のうしょう)をぶちまける。


 (くず)れ落ちたゾンビへ、さらに弾丸を打ち込む。

 死体が(ちり)となって消える。


「ははっ! やったっス!」


 トウコはあとに残された弾丸を、素早い動作で(ひろ)いあげる。



 薄暗(うすぐら)い通路から次のゾンビが現れる。


「ウウ……アアア」


 トウコは(ひろ)った弾丸を慣れた手つきで再装填(リロード)していく。


 エジェクターロッドで空薬莢(からやっきょう)を排出する。

 飛び出した薬莢が床に落ちて涼やかな音をたてる。


 弾倉(シリンダー)を回しながら新しい弾丸を込めていく。


 そうしている間に、もうゾンビが間近(まじか)に迫っている。


「死ねっス!」


 腰だめで二連射し、ゾンビを打ち倒す。


 通路の奥から、()()()ゾンビが現れる。

 先ほどの個体に比べて腐敗(ふはい)の度合いが小さい。

 トウコを見つけ、威嚇(いかく)するように叫び声をあげる。


「シャアアッ!」

「ちっ! また早いヤツっス! ちょっと待ってほしいっス!」


 ゾンビが手を振り回しながら素早い動きで走ってくる。


 頭部に狙いを定め、引き金を引く。

 狙い通り、頭部を撃ち抜いた(ヘッドショット)


 だが、死体となっても走ってきたゾンビの勢いは(おとろ)えない。

 つんのめるように倒れた死体が、トウコにのしかかる。


「あっ!」


 支えることができず、床へ押し倒される。

 死体にのしかかられ、起き上がることができない。


 そこへ、新たなゾンビがうめき声をあげて近づいてくる。


「消えろっ!」


 のしかかる死体の頭部に銃口をあて、引き金を引く。

 頭部を破損した死体が塵となって消える。

 自由になったトウコは死体から()()()()()()()(ひろ)う。


 近寄ってきたゾンビから転がるように距離を取る。

 (ひざ)立ちの体勢から二射。ゾンビを塵に変える。


 トウコは荒い息を吐く。

 通路から、さらに大量のゾンビが現れる。


 上階から威嚇音(いかく)が聞こえる。

 階段を転げ落ちるようにして、走るゾンビが向かって来る。


 弾倉(だんそう)の弾丸は残り二発。

 弾を込める余裕はない。


「まずは走ってくるヤツからっス……落ち着いて狙えば当たるはずっス……」


 走るゾンビがよろけるように走ってくる。

 銃を向け、狙いをつける。

 だが、左右に体を揺らすゾンビの頭部へは狙いが定まらない。

 乱れた呼吸が狙いを難しくしている。


 視界の端にはこちらへ向かってくるゾンビの群れが映っている。

 トウコは焦りの表情を浮かべる。


 頭部を狙うことはあきらめ、胴体を狙って引き金を引く。

 狙いをそれ、肩に命中する。

 銃弾がゾンビの肩の肉を吹き飛ばす。


 姿勢を崩しながらも、ゾンビは止まらない。


「シャアァッ!」

「ちょ――とまれッ!」


 跳びかかってきたゾンビに銃口を向ける。

 しかし引き金を引く前に、ゾンビが振り回した腕が銃を(はじ)き飛ばす。


「ああっ」


 銃が手を離れ、床に落ちる。

 くるくると回転しながら床を滑った銃が塵となって消える。


「ガアアッ!」


 ゾンビは片腕をだらりとたらし、無事な腕を伸ばす。

 その腕がトウコをつかむ。

 強い力に、トウコは表情をゆがめる。


「いっ――はなせっ!」


 トウコはゾンビを突き飛ばし、からくも拘束を逃れる。

 よろけたゾンビはバランスを崩して、後ろ向きに倒れる。


「銃を……早く――!」


 トウコは手に意識を集中し、銃を(つく)り出す。

 手の中に力が集まり、銃を具現化(ぐげんか)――創造する。


「早く……できたっ!」

「ウウ……ァ」


 背後にはゾンビの群れが迫っている。

 手の中に生み出した新たなリボルバー拳銃を構えて振り向く。


 振り向くと同時に、腰だめで銃を放つ。

 手のひらであおぐように撃鉄(ハンマー)を起こし、連続して六射する。


 ゾンビの群れがなぎ倒される。

 数を減らしても、それを乗り越えて新たなゾンビが押し寄せる。

 ポケットから銃弾をつかみ出し、後退する。


 ――その足を倒れたゾンビがつかむ。


 トウコはバランスを崩して転倒する。

 手の中の銃弾がばらまかれ、宙を舞う。


 受け身も取れずに床に転がったトウコの頭が床に叩きつけられる。

 意識が朦朧(もうろう)とする。


「う……」

「ウアア!」


 涙でゆがむ視界のなか、頭を起こす。

 目前にゾンビが迫っている。


「い、いやだーっ!」


 とっさに銃を向け、引き金を引く。

 かちりとむなしい音をたてるだけで弾丸は発射されない。

 弾倉に弾はない。


 ゾンビの歯がトウコの首に突き立つ。


「うわああっ!」


 わらわらと、ゾンビの群れが抵抗のできないトウコへと覆いかぶさる。

 ――トウコは絶叫した。




 ここは山奥の、霧に囲まれた洋館の中。

 人間ではありえない、腐った体を持つ化け物がうろついている。


 これはゲームではない。現実だ。

 夢であればどんなに良かったか。


 平和な日本の女子高生――トウコは気づけば洋館の中でゾンビと戦う羽目(はめ)になっていた。


 ――どうしてこんなことになったのか。

次回、なぜこうなったのかの話です!

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