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異世界でバイオハザード  作者: なまむぎ
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転生、そして渇望

なんだ…。眩しい………。何も見えない。瞼を開いても光が眩しく見えない。しかし影が徐々に近づき、そこには女性のような人間が見える。

だがほとんどボヤけて本当に女性かは分からない。


「ギャアーー!!オギャアアア!!!オギャアアアアアアアア!!!…」


耳障りな声が響く。近くで誰か泣いているのか?うるさいガキだ。……違う。俺が泣いているのか!?さっきからなぜか口を開けて腹から力強く声を出す。そうしないと呼吸がうまく行えない気がして無意識に泣いてしまっている。


お、おかしい!?どういうことだ!?これはまるで俺が新生児になったみたいだ!


ほとんどボヤけて見えない目で周りを見ても何もわからない。すると目の前の女性が俺を掴んで顔近くに近づける。そして女性の温もりが俺を包む。


どうしてか。その温もりに心が落ち着き、先ほどまで思考を巡らせていたことがバカらしくなって急に眠気が襲ってくる。女性は何か言っている。他にも周りに人がいるような気がする。でも今はそんなことどうでもよくて、ただただこの温もりをもっと味わっていたい。そんな風に考えているといつの間にか意識は無くなっていた……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



気づけば俺はこの世界で生まれ変わって3歳児になっている。初めは毎日1時間程度しか自我を保てず、毎日何も考えず、母親の温もりを感じているだけで満たされていた。だが月日を重ねるうちに視界が広がり、色彩が現れ、そしてこの世界を知る。


俺は確か29歳の時に数々の実験を繰り返していた時に突然胸が苦しくなり圧迫され、意識が遠のいて…そこからは記憶がない。今の状況からして死んだのだと思う。クソっ!!まだまだやりたいこと、やれることがあったはずなのに…!


だがあの世界で残したものと言っても何がある?家族もおらず、友人もいない。そして…共感者もいないあの世界で…。前世の知識、そして実験結果は今も鮮明に覚えている。もう、いいか……。何が起きたか分からないが生まれ変わって第二の人生を送れている。前世ではできなかった……『生物兵器』を生み出してやる……。



「ルナティ、こっちへおいで。」


後方から優しい女性の声が聞こえる。後ろを振り返ると白髪で白色のワンピースを着た女性がにこやかな笑みを浮かべて俺を見ている。彼女は椅子に座って右腕でこっちへおいでとジェスチャーを行う。


黙って俺は彼女の方へ向かう。


「何?母さん。」


彼女は笑みを浮かべたまま手を広げる。その仕草をされるとなぜか俺は彼女の前に歩き、自分もまた手を広げる。

彼女は腋窩を掴んで持ち上げ、胸に抱き寄せる。その温もりにどうしてか心が落ち着き、そして自分の居場所のようなものを感じる。


「可愛い子ね。ルナティ、私がついているわ。大丈夫。私はあなたの味方よ。」


「そんなこと知ってるよ…。」


やっぱりこの女性の前では照れてしまう。頬を赤らめながら目線を逸らし、鏡が視界に入る。そこには笑顔で俺を抱きしめる母親と同じ白髪の小さな少年が映る。


これが今の俺の姿。白い髪に容姿は母親に似た中性的な顔立ち。前世の感性からすると容姿端麗といえるのではないだろうか。


母親は抱きしめるのことをやめ、少し俺を離して表情を覗いていくる。


「ふふ…、やっぱり私に似てるわね。…あなたはあなたの道を進みなさい。でもどんなことがあっても私はあなたの味方で私以外にもあなたの味方をする人はいるわ。だから…あなたのしたいことを突き進めばいいのよ。」


母親はまじめな顔で少し悲しそうに話す。


どうしてそんな表情で話すのか分からない。…でもどうしてかそのことを聞き返す気にはならなかった…。

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