MINAMI
スイミングスクールのインストラクターに恋する、シングルマザーの話です。
女主人です。
桐蔭美波 とういんみなみ 24歳 150cm
シングルマザー。6歳の娘(美琴みこと)がいる。
お相手は、
水城亮一 みずきりょういち 31歳 160cm
競泳一筋でやってきたが記録が伸びず5年前に引退。インストラクターへ転職した。独身。
「こんにちは!」
元気よく声をかけてきたのはコーチだった。
「あ、こんにちは〜」
「あ、みずきこーち♪」
手を繋いでいた娘の美琴が、パッと手を離しコーチの元へ駆け寄った。
腰より下にガシッと掴まり、美琴は水城コーチの足元にぶら下がった。
「今日はちょっと寒かったですねー」
そんな娘を横目に流し、戯れている二人を見ながら世間話を振る。
「気を付けないと風邪引きそうですよね、あ、でもーまた週末から暑くなるみたいですよ」
「えーやだなー。あさって、木曜日は寒くて、雨予報ですよね?」
「あめでもおかーさんがうんてんするからだいじょぶ!」
足元から美琴のフニャフニャした声が聞こえた。
「そうね、前橋(駅名)から車でここまで来てるので天気にはあまり左右されないのが良かったです。コーチはお家近いんですか?」
コーチとこんな世間話をするようになってから3ヶ月が経った。初見で外見も中身もイケメンそう!とビビッときてから、話をしたくてたまらなかったが、なかなかそんな機会もなく、美琴がスイミングスクールに入会してから半年が過ぎていた。
私はシングルなので人を好きになることに後ろめたさはそこまでないのだが、なんせ一回結婚に失敗しているバツイチということがあって、なかなかストレートに恋へ発展したくないのが不安なところだった。
それに相手が子どものコーチとなると、周りの目も気にしなければならないのかというストレスも感じてしまう。
そんなこんなで自分からアプローチすることは諦めていた矢先、コーチから呼び止めらた。どうやら美琴が鼻血を出してしまったとのことだった。
子どもはよく出すからなどなど、いろいろと話してくれた。美琴は、あまり出したことのなかった鼻血に随分驚いたらしく、しおらしくなった娘を間に挟んで、コーチと初めて長々と話をしたものだった。
良く目を見て話してくれる水城コーチの目を凝視してしまい、さぞ変なお母さんだと思われたことだろう、、
いやそれ以前に、子どもたちのレッスン中に何十回も目が合ってしまうくらい、コーチを見つめている私は見るところが違くない?と思われていたことだろう。。
鼻血事件以降は、何度か話する機会が増え、美琴も水城コーチがお気に入りになり、3人でたわいもない話をする時間を作ることに成功した。成功した。うん。
人は7秒で恋に落ちる。。という言葉があるが、私はそれに習いコーチを7秒以上見つめながら話をしているが、果たして効果はあるのだろうか?コーチも仕事のプロフェッショナルだからなのか、目を逸らそうとせず、しっかりと見つめてくれるからこっちとしてはドキドキしてたまらないのが辛いところ。じゃなくてめちゃくちゃハッピーなところ。
そしてパーソナルスペースというものをガンガン攻め、手を繋げるくらいの距離で会話している。側から見ると距離が近いと言われてしまうかも?
最近収穫した話によると、コーチは一人暮らしということも分かり、益々気合の入る(何に?)日々を送っているが、今日はそれとなく、なんとなく、家の場所を探ってしまおうという算段だ。
で、さっきの会話に戻ると、、おっと時空に歪みが、
「ぼくは、中溝の方です、自転車でもこれるんですが、トレーニング兼ねて走ってきてます」
「へー!走るのもやってるんですね!さすがです。
あ、中溝って路線違うけど結構近いですね!」
「はい、前橋もたまに行きますよ」
「コーチがオフのときに会っちゃったりして。ねー美琴」
「ははは!」
危ない、本音が出てただの変態なストーカーだ。大丈夫かな?とコーチの顔を伺うが、相変わらず爽やかな笑顔で神対応だった。
「みずきこーちにあったら、みこと、はぐするー♪」
「じゃあコーチもしていい?」
「いいよー」
ぎゅー、ってコーチとしたいのは私です。。
妄想するのは自由よね。
ぎゅー、、、
あ、写真撮りたい!
「あ!そうだ、写真撮ってもいいですか?」
「勿論いいですよ!」
「やったー!みずきこーちとくっつくー」
うちカメにして、はいポーズーで私も画角に入る。
「あ、3人で?は、はい!」
コーチをちょっと困惑させちゃったけど、、
「ありがとうございます!」
よし!今日はまた進展、スリーショットも撮れたし、家の場所もなんとなく知ったし、電車の路線は違うが、中溝といえば家からは2kmほどしか離れていない。それこそ歩きでも行かれる。なんだか嬉しい!
「ねぇみずきこーち、こんどおうちあそびにきてくれる?」
とここで豪速球!まさかの美琴が私の言いたいことを100億年くらい早く言ってくれた。が、さすがにうまくはいかず。
「それは難しいかなー」
そりゃそうだ。
「えーだってだって、みことはみずきこーちがだいすきなんだよ」
「ありがとう、コーチもだよ」
い、言われたい。。
「おかーさんが、えっと、おかーさんもだーいすきなんだよ」
「え、美琴!」
「え?、、んとね、だから、いつでもあそびにきていいんだよ。おかーさんがしごとのときは、だめだけど」
え!なんで!いま!それを、
ほら水城コーチが焦って、
「え、あ、はぁ、え?いや、そ、あ、ありがとうございます!」
言いながら私に視線をずらして、じっと見つめて、、
きゃー!今こっちを見つめないで、、!
絶賛赤面中だから。。
とりあえず何か言わなきゃもたない!
なんでそんなに見つめるのー?
「あ、その、、違う?というより、それは、こういう、、なんでもないです、、、すみません、、」
もう、何を言っているのか分からない。。涙出てきた、、、
「えっと、、ははは、いや、はい、いつもありがとうございます?、、ははは」
ほらー変な空気になっちゃったじゃない。
それにしてもどうしてずっと見つめてくるの、、、?
美琴、ありがとうなんだけど、やーめーてー。
「お、お母さん、お仕事されているんですね?あ、前にも聞いたかな?」
「あ、はい、、前にチラッと、、」
顔を見てしゃべれない。。鼓動が速いわ。。深呼吸したい。。ふー、、
「パートですか?いや、こんなこと聞いちゃ失礼かな?」
よし、ここでシングルマザーアピールをしないと。旦那がいると思われている可能性が高いものね。
「いえいえ!そ、そうですね、私はシングルなんで、これでも会社員でして、フルタイムです、と、娘がいるので、そのー、優遇してもらい、短くて、9時から15時の、、6時間と、えっと、6時間なんですけどね」
なんか舌が回らないよ!最近面と向かって話をすることに、7秒以上目を合わせて話をすることに慣れてきていたのに。
「すごい、お疲れ様です!そっか、お一人で美琴ちゃんを育ててらっしゃるんですね!明日も仕事ですか?」
コーチが急に饒舌、、
「あ、いえ、祝日は基本お休みでして、」
「あ!明日は祝日かー、忘れてました!」
「みずきこーちはおでかけ?」
いつの間にかコーチにぶら下がることをやめていた美琴は、キッズプレイスに行って椅子に座ったり立ったり歩き回ったり遊んでいた。
「コーチはね、どうしようかなー、前橋の新しくできたラーメン屋が気になっててー、昼間は混むだろうから11時頃行こうかな〜」
え!そこはおススメしたい!
「あ、あのお店美味しいので食べてください!」
「もう行きました?」
「2回行きました!白は素朴な味で赤は刺激的でいいですよ」
「へー、、、」
あれ?なんか微妙な反応?私、ちょっと興奮しすぎた?
「美琴ちゃんも食べたの?」
「みことはおかーさんとはんぶんこした。でもおかーさんたりないからごはんとぎょうざと、そうだすくないチャーハンたべてた」
「ぶ、、ははは!いや、ごめんなさい笑って」
「いえいえ、笑ってくれた方がいいです!」
もうーなんで子どもってこういうことをスイスイと言ってしまうの!
「ぼくたくさん食べる人がs、いや、あの、ぼくたくさん食べるのでなんか分かります!」
「フォローありがとうございます!」
今、ぼくたくさん食べる人が、好きなんでって言いかけなかった??
あ、っていうか楽しくて時間を忘れていたけれど、もう帰らないと、、コーチがキョロキョロして、周りを気にし出していた。
「あ、長々とすみません。そろそろ帰りますね。あさっても、よろしくお願いします」
「あ、はい!こちらこそ、引き止めてしまってすみまません、よろしくお願いします!」
「ばいばーいみずきこーち、すきよー」
「ありがとー美琴ちゃん、またね!」
「さようなら!よ、美琴」
「みずきこーち、さよーならー」
「はーい、さようならー」
3人で手を振って別れた。
今日はなんだかいろいろと脱線をし、進展もした気がする。
美琴がグッジョブすぎて、早くありがとうを言いたい気持ちでいっぱいだった。
車に乗り込んで、
「美琴!ありがとう!」
ぎゅーっとハグをする。
「にゃー、ありがとー、でもおかーさんなんでいわないの?」
「え?何を?」
私の腕の中で上目遣いをする。
「すきって」
グサッときましたー。
はい、子ども特有の恥ずかしがらないやーつ。
「えっと、、コーチにはそれは言わないって決めてるのよ」
「なんでだっけ?」
「うーんとね、それはね、、コーチは仕事中で、あくまでも、あくまでも?うーん、本当の水城コーチの姿じゃないから、だから、そのー、、」
「ということは、しごとちゅーじゃないみずきこーちにあえばだいじょぶ?」
「えー!」
「えーじゃないよー。そうよって!」
「いやいやいや、、ともかく、恥ずかしくて言えない!」
友達と恋バナをしているかのように、帰路の車内は大いに盛り上がった。
次の日は大雨だった。予報は早まり、曇りだった今日が雨となり、木曜日は晴れに変わるらしかった。
9時を回って、パラパラだった雨は更に加速した。
「こーえんいきたかったな」
リュックを前日に準備していた美琴は残念そうだった。
「トンネル公園にする?」
「せんしょーいったからそこはまたらいしゅー」
「先週、だね、うーんそれじゃあ、、」
「ナナちゃんとあそびたい」
「奈々ちゃん家に連絡取ってみる?」
「うん!」
ということで同じ幼稚園・同じ小学校の藤田奈々ちゃんのお母さんにメッセージを送ったところ、、残念ながら予定があったようだった。
「もーふてねする」
「え?」
そういうと、美琴は寝室に行ってしまった。
我が家は1LDKのアパートに住んでいる。10階建の9階で、眺めは富士山も望める最高な場所だ。その富士山の見える6畳の寝室へ追いかけていくと、
ベッドに突っ伏した娘がいた。
「美琴、じゃあ雨だけどお散歩しよう?」
「、、、、」
「桃色のカッパ着て」
「、、、」
「レモン色の長靴履いて」
「、、」
「お母さんもお揃いするよ」
「、」
「ねーねー美琴ー、」
「、、なーにー」
「どうしたいの?」
「、、、、、」
本当に眠いのかもと思って、私は添い寝することにした。1分もしないうちに美琴が口を開いた。
「ラーメン、」
「ん?ラーメン?お腹すいたの?」
「そ、ラーメン食べる」
「即席があったかな、」
そう言いながら立ち上がると、美琴は
「お店のラーメン」
言いたいことはなんとなくわかるが、私は分からないふりをした。だって、そんなこと、
、、、
、、
結局ラーメン屋さんに向かってしまった。。
「みずきこーちいるかな♪」
「まだ11時前だもん、早いかもよ」
ラーメン食べたいんじゃなくって会いたいんでしょ?
早く行こうという美琴に促され、来てしまった。そもそも水城コーチがお昼にラーメン屋さんに来るなんてこと、確実には言ってもいないし約束なんかしていない。だから、全然そんな期待することでもないのだけれど、なんだか気持ちが高まっていた。もしかしたら、、なんてね。
「あれ?」
え、
「あー!いたー!」
そんなドラマみたいなことが、空想の世界だからこそ、ならでは、起こりうるんです。だって二人が出会わなきゃ、物語は始まらないでしょう!
確率的にはかなり低いが、まぁその内どうしてかわかるでしょう。
って、水城コーチが待ち伏せていたんじゃない?っていうのはあまりにも軽率!
屋根が付いているので半分室内のような商店街の中にある、ラーメン屋さんの前の、車両通行止め?のU字のポールに腰掛けて、スマホをいじっている水城コーチを発見。私服姿を初めて拝見。
上は黒のTシャツ、下はこれまた黒の短パンというスラッとしたいでたち。靴は運動靴でこれも黒。
いつも同じようなネイビーよりの黒?っぽいジャージを召しているのでこれは、あまり変わらないかも?
「みずきこーちー!」
大声で美琴が駆け寄る。
「あ!」
かなり驚いた様子のコーチ。なんで?待ってたんじゃないの?なんて、自意識過剰は置いておいて、、
「ぼくも今きたんですよ!」
なんか、偶然ですね!って言いたいけどそれってどうなの。どうする?どこまで攻める?私、どうしちゃう?今日は何ポイントくらい稼ぐ??
「あ、あの、こんにちは」
ここは挨拶で一回冷静になろう。こっちのペースにしてから、、
「はい!こんにちは!」
「あのねあのね、みずきこーちのはなししてたんだよ!」
「そっかー、嬉しいな!」
と言いながら頭を撫でる。
いいなーされたい、
「へへへへ、おかーさん!みてーいいでしょー」
そう言ってお母さんの顔を見る。
「いいなー」
って、声に出しちゃダメでしょ私!
しかもニヤニヤしながら。
聞こえちゃった、、?
「え?ははは、あーーー、」
聞こえたよね。。コーチ、あー、何言ってんのこの人はって顔してる、だからってこっちをじーっと見つめないで、、!また見つめてきた。。
なんか、コーチの目って、引力みたいなのがある気がする。いや、そんなのないんだけど、コーチから目を逸らせない。。
そして「あーーー」って長めの「あーーー」ってなんだろう?髪をかきながらコーチは「あーーー」って、、それってどういう意味?とにかく、、
やだ、、その仕草もその瞳も、その姿が、雰囲気がすっごくかっこいい、、、
私はまた赤面モードです。。
それに追い討ちをかけるかのように美琴、すかさず、
「おかーさんもみずきこーちに、ぎゅってしてほしいっていってた!」
、、、、
、、、、
これは夢であってほしいと願うが、空想の世界あるあるで、そんなことはないと言っている。書いている誰かが言っている。
「、、、、」
完全にコーチと私の時は止まっていた。。
私はただ美琴の顔を見て、真っ赤な色した真顔で見つめるだけだった。長い長い時間だったと思う。体感ではなくて本当に10秒くらいしんと静まり返っていた。
コーチは、私と同じく喋らない。そんなコーチを、私は見ることができない。。
と、とりあえず、謝っておこう。。
「いろいろすみません!」
「それはまた今度ね」
あ、一緒に喋っちゃった!
って、え?
被ってよく聞こえなかったけど、
こ ん ど ?って言った?うそ?
空耳?いや、言ったよ、、
「え?」
何テンポか遅れて反応をした。
コーチは美琴と話をしていて、もう聞こえてなかった。
あ、その場しのぎ?
ね、うん、今度、して欲しいけど。。
そりゃ、して欲しいけど!
ねぇ、してくれるの??
今度があるの?
そんなことある?
ねぇ今度してくれるの?
空想の世界だからあるかも。
もー頭がグルグル。
じゃなきゃ、二人は、惹かれないでしょ?
期待しとく?妄想は自由だもん。ね!
美琴がコーチの足元ではしゃぐのを経由してから、チラッと水城コーチの顔を見るとバチッと目が合ってしまう。
そんな不思議。
気絶しちゃう。
私今目がうるうるしてない?ときめいちゃってない?ときめきがきっと伝わっちゃうと思うんだけど。。
耳まで赤い気がする。。
二人は何か話をしていたけれど、私はそれどころではなかった。コーチの様子はいたって普通に見えて、美琴の方を見て楽しそうに会話していた。
あー、水城コーチがお父さんだったらこんな感じかー。妄想は自由でしょ!!
「みずきこーちはみこととすわって、おかーさんのまえにすわって」
食券を買ってから、ラーメン屋さんの席に案内されて美琴に席順を仕切られた。
コーチの前は近いようで遠い。私はどちらかというと隣が、、いい。
「おかーさんはみずきこーちのとなり、またこんどね!」
「え?いいよ、大丈夫」
反射的に本音と逆のことを言ってしまった。
ええ、大丈夫じゃないっす。隣がいい!
水城コーチは何も言わない。
「ねー、このあとどこいく?」
「ふ、、このあと?うーんどうしよっか?」
カップルかよ。
まーぜーてー。
「ふたりで、でーとする?」
はい?なにそれ、、
まーぜーてー。
「いいけど、お母さんは?」
「おかーさんは、またこんどね!」
はまったな、その言い方。。
「美琴ちゃんどこ行きたいの?」
「うーんとね、みことのいえ!」
お家デートとは!!
「あー、、それは、また、こんど、ね?」
どうしてこっちをチラッとみるんですかコーチ。
いいの?期待して。。
「じゃあじゃあ、いっかいばいばーいして、またあおうよ」
「そんで?」
「そうしたら、こんどになるから!」
「あー、頭いいね!でもね、お家はお母さんがいいよって言わないと行かれないよ」
「なん、、おかーさーん」
「はい?」
傍観者A、会話に混ざる。
「いいよって」
いや言ってない!
「ねーねー!みんなでまたしゃしんとろうよ」
「いいね」
二人は乗り気だ。
「じゃあ、撮るね」
私がカメラを構える。
美琴とコーチはぴったりくっついて写真に写っていた。あーあー羨ましい。
私もくっつきたい。
それが顔に出ていたのかなんなのか、コーチが、
「お母さん、美琴ちゃんとこんなにくっついて平気ですか?」
なんて聞いてきた。
「コーチが嫌じゃなきゃ、、」
へーきだけどへーきじゃない。
「お母さん、」
え!今度はなんだろう?コーチがいつも通り私を見つめ、話しかけてきた。
「はい!」
声が上ずる。
「さっき撮った写真、俺も欲しいです」
「ぁ、もちろんどうぞ、と言いたいところだけど、どうやってあげられるかな?」
コーチは真剣な目で見てくる。
沈黙、、、
「え?あ、、冗談ですか?やだなーもう!」
「いや、冗談ではないです、本当に欲しい」
一瞬ニヤッとしてまた真面目な表情をした。そしてこれでもかというくらい、すごく見つめてくる。。
なになに?
言ってくれって感じ?
私から言うの?
「よかったら連絡先を、、交換しませんか?」
言っちゃった!あー恥ずかしい!
やー!いっちゃったよ、、
どうでしょう?どうなるんでしょう!
水城コーチが視線を逸らさず真っ直ぐな目で見つめてくる。
恥ずかしくて目を逸らしちゃう。。
「しましょう、LINEでどうですか?」
「はい、いいです!」
あーもう喉がカラカラ、、
これは本当に現実?
「おかーさんかおまっか!」
言わないでー!!
更に赤面モード、、
もう誰にも隠せません。
「おまたせいたしましたー!」
お姉さん、、私、今すごく恥ずかしいです。。。
「じゃあ、、はい、これで、はい、よろしくお願いします!」
「やたー!おかーさんとみずきこーちはおともだちだね!」
「ありがとうございます!」
ここはしっかりお礼を言って、、
水城コーチのLINEゲットー!!!
祝!!
しかも!なぜか!
『金曜日の夜って空いてますか?』
空いてますか?って?一番最初のトークなのに、LINEにそう書いてきた。
どういう意味ー!!
『空いてます』
と返しておいた。
目の前にいるのに、、
変なの〜。
、、、
、、、
、、
ピロン♪
絵本を読み聞かせながら、美琴が寝入った頃、LINEの着信がきた。
先ほどまでやりとりしていた母かと思って気楽に開くと、
水城コーチだった。
あの後美琴とコーチの二人はハグして手を振り別れ、私はそれを一歩下がったところで傍観者Aを演じて、さぁこれから我慢できない妄想大会をしようと俄然やる気になっていたところ、、
『昼間はありがとうございました!美味しかったですね。ぜひ今度は奢らせてください。美琴ちゃんは寝ましたか?お母さんも寝ていたらすみません。』
とのこと。
あら?さっきの「金曜日〜」のくだりは完全に無視?
まぁいいか。。
何度かやり取りして、コーチの方から
『タメ語ってダメですか?堅苦しいと思って、、』
ときたのでLINEではタメ語を使うことになりました。
それに加え、年齢を聞いたところ、コーチが7個も年上だったことに驚き!若く見えるから。。31歳ってことか。。私の年齢にも驚いていて、
『まだ20歳くらいかと思ってた!そっか、でもそうすると美琴ちゃんの年齢とお母さんの年齢で計算が合わなくなっちゃうもんね』
とのこと。
そして、「お母さん」と呼ばれるのがタメ語での文面だと変、というか嫌だったので変えてもらうことに。
何度か差し障りのないやりとりをしたところで、
『「お母さん」というのは間違ってはいないけど、文面で見ると違和感があるから、もしよかったら変えてくれませんか?』
いきなり丁寧すぎたかな。
それまで
でもねーとかそうそう!とかって返していたのに。
いきなり真面目かよ!
はい、可愛くないバージョンで送ってみました。
あれ?既読にはなったのに、、
10分返事が無かった。
焦らすね。。いや何か用事してたんでしょ。
『呼び方は、美波ちゃんでどう?馴れ馴れしいかな?』
きゃー!素敵!実際にそう呼ばれたい!
むしろ呼び捨て「美波」でも、、、
って送るか!ちょっと笑いを、、
『みなみー!でもいい。よろしくお願いします!』
『俺の名前は亮一なのでりょう、でもりょういちでもなんでも』
いや私が下の名前呼び捨てかよ。ハードル高いっす。。
『亮一さんって呼ぶね!どうかな?』
『はい!なんでもいいよ、金曜日が楽しみだなー』
と、突然の、、、
だから、金曜日なにがあるんだ、、、
その日はこの後何通もやりとりをした。時間は23時50分になった。
『そろそろ寝るね、楽しかった(^^)おやすみなさい』
と打つと、すぐ既読になったが数分待っても返事が無かったので終わりかな?と思いスマホを閉じた。
今日は心臓をめちゃくちゃ使って?だからかな、疲れたなと考えているうちに眠りに入った。
美琴を含め、私は夜中トイレに起きたが、スマホは見なかった。そのとき見ないでよかった。
だって、そこには目が覚めてしまう内容が書かれていたから。
朝起きて人生一、目が覚めた。
『美波ちゃん、ゆっくり休んでね。今日はありがとう。俺もすっごく楽しかったよ。また明日ね!おやすみなさい!』
俺も楽しかったって!また明日ね!って!!
はーい!きた!恋人じゃん!なにそれーもう大好き!
そうよ、今日もスイミングにいくんだから、会えるんだ。あー、あー、、
あーなんて、素敵な、響き!
思わずスクショを撮って、お気に入りにしておいた。
美琴はまだ起きない、
静まり返った部屋で、
一つ疑問。
私は、彼のなんなんだろう?
「こんにちは〜」
美琴のレッスンが終わってから、いつも通り水城コーチがジャージ姿に着替えてきたので声をかけた。美琴はロッカーの前で同じクラスの友達と話している。
「あ、こんにちは」
律儀に立ち止まってくれる。
えっと、何か話したい、、!あ、
「コーチの靴下、猫ですか?さっき見えちゃって。それいいですね!」
亮一さん、、は自分の足元を見て
「ああ、ありがとうございます」
とだけ一言。
ん?それだけか、、まぁしょうがないか。
でもなんだか素っ気ない?
いつもの営業?スマイルがない気のせいか。
「あの、、今は時間ないですか?」
今日は忙しいのかな?
「いや、そんなことはないですよ。何か質問ですか?」
質問という質問はないけど、、うーんなんか今日は、違うのかな?これで話を終わらせた方がいいかな。
「いえいえ、なんでもないんです。今日もありがとうございました、またよろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いします」
そう言ってコーチ室へ入って行った。
もっと話したかったけど、、今日はコーチ疲れたのかな?
「すみませーん、あ、あの、水城コーチいますか?」
誰かのお母さんがフロントのお姉さんに声をかけた。
「今呼んできますね、お待ちください」
何か質問があるのかな、私も何か質問用意してよんでもらおうかな。
「こんにちは!あ、リコちゃんのお母さん、どうかしました?」
あ、いつもの水城コーチに戻ってる。
ニコニコ笑って爽やか〜。
「それがですね、、、」
人の会話を盗み聞くのは気持ち悪いのでいいや。
「美琴〜帰ろっか」
「えーもうちょっと、」
「はーい。いいよ」
水城コーチが楽しそうに話をしていた。
私も話したいよー。
また明日ねって言ってくれたこと、期待しちゃったからかなー、まぁいいか、そんなときもあるよね。
、、、
、、
帰ってから予約で炊かれていた白米をかき混ぜ、ししゃもを焼き始める。その間、美琴は力尽きて眠ってしまった。
時刻は20時になったが、美琴は起きる気配がない。今日はこのまま寝かせておこうか。
ピロン♪
誰だろう?亮一さん、だったらいいな。
『こんばんは!明日の夜、どんな予定?』
亮一さんだ!あら、やっぱり会えるの?
『明日は特に予定はないので、よければ会いたいな!』
え、直球すぎ?いや、いいよね、だって、、
『今日はいろいろとごめんなさい。今朝出勤してからコーチ室でいろいろと言われちゃったから、ちょっと様子を見ようかなと思ったんだ』
そっか、、いろいろと?なんだろう、私とのことなんだよね?
『公共の場で親しく話しすぎだったかな?いろいろ言われちゃったのね?ごめんね、ちょっと気を付けよっか』
なんか、こう、やっぱり恋人みたい。。でも特殊の、イケナイ関係みたいな、、
『明日は前橋駅に18時でどうかな?歩いてくる?』
『うん、美琴と二人で歩いて行くね』
『ところでどk』
と打っている途中で着信。
え!亮一さん?
「は、はい!もしもし、、」
「もしもし〜電話しちゃった。今大丈夫だった?」
タメ語で話すのはLINE以外では初めて。なんか新鮮。。
「う、うん、美琴は帰ってきてからずっと寝ちゃって」
「そっか〜てことは夕飯まだ?」
電話口から部屋のテレビが付いているのか、賑やかな音が聞こえた。
「うん、でももう食べちゃおうかな」
「いいんじゃない?俺も夕飯まだー」
いいね、この感じ。付き合ってるみたい。
「亮一さんの手料理?」
「いや、スーパーで買った惣菜」
「お金持ち!」
「2割引のトンカツだよ?」
割引か、、かしこいね!
「いいね、うちはさっきししゃも焼いて、卵焼きと、なめこの味噌汁」
「うまそー!食べたい」
「食べる?明日一緒に作る?」
「何を?」
「夕飯!材料買って行って、家でご飯作って食べるのどう?」
「え!俺が美波ちゃん家にお邪魔するってこと?」
「うん」
やっぱりダメかな?
、、、、
しばし沈黙。
「それはやめておこう!」
そっか、、
「そう?じゃあ明日は夕飯食べてから行った方がいい?」
「ううん、知り合いの店に一緒に行こうと思ってたんだ!いいかな?」
そういうことか、外食のプランがあったのね。
「わかったー」
と、ここで美琴がぐずり始めた。
「美琴〜起きたー?お母さんここだよー、疲れて寝ちゃったんだね、どうしよっか、このまま寝る?着替える?ご飯食べる?」
「ん、、おなかすいた、たべる」
「よし、じゃあ今日は美琴の大好きなししゃもを食べようね」
「えーししゃも!たべたい!」
俄然元気になってしまった。
「もしもし、、ごめんね、ということで、明日はよろしくお願いします!」
「うん!美琴ちゃん大丈夫?」
「大丈夫だよーそれじゃ、またね!」
「おかーさんだれ?だれなの?」
「ん?あ、もしもし、いい、かな?」
挨拶くらいしたいよね。
「いいよ!、、美琴ちゃーん?」
「もしもしみずきこーちなの?」
「そ!ししゃもいっぱい食べて、お母さんとゆっくりして、ぐっすり寝るんだよ!」
「はーい!またねこーち、さよーならー」
「はい、おやすみー」
素直にスマホを返してくれる。
「ありがとう」
「いえいえ〜いい子だね」
「ありがと!」
「うん!じゃーまた明日!おやすみ!」
「おやすみー」
朝、、全然眠れなかった。
なんだか緊張してしまって。
2時間じゃ私にとっては睡眠不足です。。
はー眠い。。
でもそんなんじゃダメよね。
シャキッとして頑張りましょう!頑張れば夜はまた亮一さんと。。今度は、、
何がしたい?
ぎゅってしたいな。
頭撫でてもらったり、おでこくっつけたり、手を繋いでデートしたい。。
あー完全に恋してるなぁ。。
私、亮一さんのことが大好きだよ。
亮一さんは、何が目的なんだろう?
同じだったらいいな。
違ったら、恋破れたり、ですね。
告白して、振られるならそれで、いい。
言ってみようか。
うん、早い方がいい。
「おはよーもうふくきたよー」
「え!終わったの?すごくない?」
午前6時、美琴はいつの間にかパジャマから外着に着替えていた。どんだけボーッとしていたんでしょう。
いけないね。
「ごめんごめん!今朝ごはんやるからね」
、、、
、、
その日は結局、就業時間までソワソワしてしまった。
お昼前にLINEがきて、亮一さんかと思っていろいろ期待してしまった。
そうしたらさっき、
『仕事お疲れ様!俺は金曜日は15時と16時の2時間やったら帰れるよ』
なーんて旦那さんみたいなLINEが来たからテンション上がりまくり!
『お疲れ様!私はこれから美琴を迎えに行ってくるね。支度をしたら前橋駅に向かうね。気を付けてきてね!』
『はい!ありがとう』
美琴を学校に迎えに行って、18時に水城コーチと待ち合わせしていることを告げると、美琴もテンション上がったようだった。
嬉しいね、早く会いたいね!
、、、
、、
「みずきこーちもしごとがえりなの?」
「そうだね、一緒にご飯食べようね」
17時45分に駅前に着いたので、ベンチに座って美琴とおしゃべりして待つことに。
「なにごはんかな?」
「なんだろうね?コーチのお友達のお店なんだって」
「はんばーぐあるかな」
美琴は足をブラブラさせながら楽しみにしているようだ。
「ハンバーグ食べたい?あるといいね」
「なくてもいいよー」
「そう?大人だね、お母さん助かるな〜」
そうこうしているうちに目の前に車が止まった。
もしかしてと思ったら窓が開いて、
「桐蔭様、お迎えに上がりました」
なんてまた恥ずかしいことをスラッと、、
「あ!おうじさまみたい!」
「こんばんは〜ありがとうございます」
私はちょっとたじろいながら、、
「二人後ろ乗って」
と言いながら車から降りてきた。
「はいどーぞ!」
と言ってドアを開け、美琴を乗せてくれる。
優しいなって感心していたら耳元で
「美波ちゃん」
って、、、
きゃ!
一気に顔が赤くなる。
目を合わせることができず、車内を見たまま答えた。
「あ、ありがと、、」
やー近い!
こんなに近いと、顔をあげたらちょうどキスできる距離になってしまう。
身長差は10cmくらいなので、こういう体勢だとまずい。。
ドキドキしてしまって、、
まともに喋れない。
もっと言いたいことがあるのに。
今はまだダメね、そばにいるとドキドキしちゃう。。
落ち着くっていう感覚になったらいいな。
「ねーえ?おみせってどこー?」
「ここから車で5分も、5分くらいしか走らないから、知ってるかもしれないよー」
運転している姿もかっこいい。。
横顔が見えて常時ときめいています。
美琴は少し眠たくなってしまったのか、口数がいつも以上に減っていた。
「よし、着いたよー」
「運転ありがとー」
「いえいえ」
「すごい!一発で駐車したよね?」
「たまたまね!それに結構ここは来るから、慣れてるってのもあるかな」
それにしてもすごい。
結構来るって、どんな知り合いだろう?
「美琴ちゃんはちょっと眠いかな?」
「ううんまだだいじょぶー」
「帰ってからもはしゃいでたから、疲れたのかも」
「座敷もあるから、もし寝ちゃっても大丈夫かな?」
入り口を開けると、お店の人がすぐ出てきて、亮一さんの手を引っ張った。
え?
「早かったじゃん!お客さん2名ね!
いらっしゃいませ!私、シロと申します。
りょうちゃんのお知り合いということでー、、、なんと!デザートおまけサービスがつきます!」
テンションが、、酔っ払い??
「あ、ありがとうございます、、」
亮一さんは、美琴と繋いだ左手はそのまま、右手は元気なお姉さんに握られ、お店の奥へと連れて行かれた。
私はちょこちょこと後をついていった。
「それじゃ、まずはお飲み物を選んで待っててくださいね!」
そこは、半個室みたいになっていた。天井は空いているが、四方は塞がれていて、窓を覗くと外の川が下の方に見えた。
案内してくれたお姉さんは、赤みがかった茶髪ショートで、色白でよく笑う綺麗で可愛らしい女性だった。亮一さんよりは年上に見えるけど、とにかく元気がいい。
「ごめんね、騒がしくて」
「げんきなひとー」
「そうだね、大丈夫だった?」
「うん、めがさめたかも。さ、なにのみましょー」
「ははは!面白いね!ソフトドリンクはここだね、、」
席順はラーメン屋と同じく、前に亮一さん、その隣は美琴となっている。
それにしてもさっきの人、誰なんだろう?
亮一さんの、なんだろう?友達にしては距離が近いような。。あんなもんなのかな?
亮一さんは私に対してもさっき、近かったもんね。
そういえば『りょうちゃん』ってよんでなかったっけ?
かなり親しそうな呼び方、、
亮一さんはあの人のことなんてよぶんだろう?
年上が好みなの?
どんな関係なのか、聞いてみよっか。
と思ったら、ノックの後スライド扉が開いてさっきのお姉さんが来た。
「ね、りょうちゃん!昨日の結局何なのあれ?ちょーうけるんだけど!」
「なんで今その話なの、お客さん、お客さんがいるでしょ」
目前まで近寄ったお姉さんの肩を掴んで押した。
「やん!ちょ、押さないで!」
「変なこと言わないの」
「りょうちゃん冷たい、、」
「ん、ん、」
私たちを示しながら「お客さんでしょ」
というように知らせてくれた。
ずっと蚊帳の外、、、
あー仲良しだなって。
彼女さん、、なのかな?
一人暮らしと言っていたし、奥さん、はいないと思ってたけど、今のご時世いろんな家庭があるから、わかんないよね。
その後も3人だけの空間でお話ができると思ったが、事あるごとにさっきのお姉さんが来て亮一さんにちょっかいを出していくので落ち着かなかった。
そして疑問なのが私のことをチラチラと見てくること。
30分くらい経った頃、美琴は食べながら眠ってしまった。
亮一さんの横に寝かせて、亮一さんは
「寝顔も可愛いね」
と言って頭を撫でていた。
今がチャンス!と思って聞いてみることにした。
「あのお姉さんって、亮一さんの彼女?」
そう言い終わったあと、トントンとノックが聞こえ、そのお姉さんが入ってきた。
「サービスのデザートです!って、あ、」
「寝ちゃった」
亮一さんはそう言いながら横向きに寝ている美琴の背中を優しくトントンした。
「そっかー、、デザートはじゃあ持ち帰れるようにしてくるね」
「わ、本当ですか!」
えーすごい優しい、、
「はい!美琴ちゃん専用のデザートだったから尚更、かわいく包んでおきますね!」
「ありがとうございます!」
悪い人、ではないんだけど、、
終始亮一さんとの距離が近くてハラハラしちゃう。
私がハラハラするのは変だけどね。
扉がしまってから、
「美波ちゃん」
静かに私の名前を呼んだ。
「ん?あ、はい」
まだ慣れないので返事はぎこちなくなってしまう。
「あの人は俺の、」
あぁ、、なんだろう、1秒1秒、時間が長く感じた。
俺の、?
「姉だよ」
あー
そう?
「私なんていったっけ?」
「彼女とかって、、」
恥ずかしい、、、、
「でも!知り合いって言ってなかったっけ?」
「そ、ごめん!」
もー取り越し苦労ってこういうときに使うのねー。
穏やかな空気が流れる中、「お姉さん」が置いてったデザートを食べ始めた。
「亮一さんのとちょっと違うね」
「うん、そーなんだよねー。俺のはミントっぽいのが、、のってるよ。。」
変な間があった。
「ん?」
「、、、美波ちゃんのはイチゴが多いような気がする。それも、、美味しそうだね」
「ねー可愛いね。美琴のはどんなだったっけ?私よく見なかった」
「同じようにピンクぽかったけど、子供用だから小さいんじゃないかな?」
「亮一さんはミントが好きなの?」
「あーわかった?正解〜」
「お姉さんだからね、知ってるのかなって思った」
お互いの目をしっかり見ながら、デザートを半分くらい食べ終わったところで亮一さんは目を泳がせ始めた。しきりに私を見たり空を見たり。
「さっきからどうしたの?」
「うーん、、」
ん?
「ちょっと、、」
そう言いながら立ち上がってこっちへ向かってきた。
へ?なに?
座敷の畳に立ち膝をして固まってしまった。
「うんとね、、その、」
「え、え?え、、、、」
亮一さんは膝も折って正座になった。
そんな顔でみつめないで、、!
間髪入れずに指が伸びてくる。
何するの!指?
そのときまた扉をノックされ、いつも通り?返事をする間もなく扉が開いた。
「包んできたよー!ってあら!ごめんなさい!じゃなくて、りょうちゃん何してるの!離れなさい!」
いや、変なことしてたわけじゃ、、
「痛い痛い!姉さんの考えてるようなことじゃないから、そうじゃなくって、、」
耳打ちをする。
なになに?
「なによ、自分で言えないのー?エッチ」
亮一さんが小突かれる。ちょっと恥ずかしそう?
エッチって?
「あのですね、うちのおっちょこちょいだけど自慢の長男亮一がね、」
「一言多い」
「エッチな目で美波さんのことを見ちゃってるから、」
「!」
「自分で言えないのをお姉さんに任せて、、」
「もー!いいよ言うよ!」
「まぁまぁ、顔真っ赤にして無理しないで」
コントを見ているように面白かった。
亮一さんの表情がコロコロ変わるのが見ていて楽しかった。
ところで、エッチなことって?
「美波さんの胸のあたり、そうそうそこ、クリームがついちゃってます」
「あ!すみません、、お恥ずかしい、、」
「そんなことくらいねー普通に言えないもんかねー。やーね、この子ったら、興奮しちゃうんだって」
「えっと、、はぁ、、あ、教えてくださりありがとうございます!」
「落ちる?汚れ、おしぼりで拭けば大丈夫、かな?
もーしかし美波ちゃんは真面目なのね!失礼しました、もっと早く言っても良かったんだけど、りょうちゃんがおかしくて、つい」
下を向いている亮一の肩をガシッと掴み揺さぶるお姉さん。
「あの、お姉さんのお名前は?」
「え、知らなかったの?りょうちゃん、話してくれたって言ったじゃない!」
「、、まだ、、」
亮一さんは顔を持たれて、タコの唇になっていた。
「どーしたのかしら、借りてきた猫みたい。
えっと、、申し遅れました、亮一の姉の、水城白と申します」
ご丁寧にお辞儀をしてくれた。座ったまま、のこれなんていうんだっけ?
私も同じようにしてやる。
「こちらこそ、申し遅れました、桐蔭美波と申します。そこで寝ているのは娘の美琴です。名前は存じていたと思いますが、よろしくお願いします!」
それから3人で自己紹介てきなものを含めて話をした。亮一さんのお姉さんかー、元気で面白くて気配りができて、いい人だなぁ。
ほっこりした気持ちになって、いよいよ帰ろうかとなった。
時間を気にしてか、白さんが切り出してくれた。
「もう21時だね、美琴ちゃんもこれじゃ疲れちゃうし、帰ろっか。ほら、荷物持ってあげて、家まで送っていってらっしゃい!ああーでもね、悪いことしちゃ、ダメだからね?送るのは、お家の前までよ?いい?」
「わかってます!はい、ありがと」
終始そんな調子で返す亮一さんは、照れ隠しなのか本性なのか、私に見せる面とはまた違った表情だった。
「いろいろよくしてくださり、ありがとうございます!お会計を、、」
「へ!?何言ってるの、全部りょうちゃん持ちだから!」
「そうはいきませんよー!好きにいただいちゃったので、」
「ダメダメ、今夜の分は違うことに使って。ね、りょうちゃん」
「うん、姉さん持ちで」
「、、あー、、じゃあ、二人が何かあーなってこーなってそーなったって日には奢ってあげる。で、どお?」
「なにそれ分かんないよ!」
私はなんとなくわかるけど、妄想が捗る、、、
、、、、
、、、
美琴が少し起きたが眠そうなので亮一さんが抱っこしてくれた。私が乗ろうとしたとき、サッとドアを開けてくれて、紳士だなぁと思いながら「ありがとう」と今回はしっかり顔を見て言えた。
車に乗り込み、亮一さんが車を走らせて、家の案内を始めた。
こんな、家族に紹介してくれるなんて、本当に脈ありなんじゃないかな?自惚れじゃないよね。しっかり言ってほしいけど、私たちって、両思いだよね?違うの?
思うだけで言えない。。
マンションの一時駐車スペースが空いていたのでそこに止めてもらった。
ドアをまた開けてくれて、今度は私が美琴を抱っこする。荷物は背負ってあるのでオッケー。
「うーんやっぱり俺がもとうか」
「ありがとう」
優しいなぁ。嬉しいな。
またときめいてしまう。
私の背後に周り背中のリュックを取ってくれる。
それだけでドキドキ。
肩に指が触れてビクッとしてしまった。
敏感になってる、、
反応しちゃったの、気付かれたかな?
、、、
大丈夫そう?
「よし、あ!、、俺玄関前まで行って大丈夫?」
「ん?あ、よろしくお願いします!」
「お、おう」
リュックを持って私の後ろをついてきてくれる亮一さん。
一緒に家に帰ってきた感じがして、楽しい!嬉しい!
「ここだよ、
カチャ、、
鍵持って触れれば開くようになってるんだ」
「えー!ハイテク、、」
「あ、どうぞ、、」
しばしの沈黙、、
「いやいやいや!ここまでにしておく!では、俺は帰るね、美波ちゃん美琴ちゃん、おやすみなさい!」
「えっと、、リュック、、持ってくれてありがとー?」
そ、亮一さんはまだリュックを背負っている。
「え?、、、あー!ごめん、これ、あ、じゃあ、そこに置くね」
荷物の配達員のようなスピードで置いて、、出てきた。
「ありがとーとっても助かったよ」
頑なに家にはあがらないみたい。なんでだろう?
「こんなんでよければ、、また会おう」
また嬉しい言葉、、、
「うん、そう言ってもらえて嬉しい、、」
長い沈黙、、、
美琴が重い、、、
「あ、じゃー、、帰るね」
「ありがとう!またね、おやすみなさい!」
「うん、おやすみ、ありがとう」
「気を付けて帰ってね!」
エレベーターに向かう角で、もう一度手を振ってくれた。
今日もかなり進展したんじゃないかな。
亮一さんが結構シャイだということと、とっても紳士だということも分かった。
私は早く、亮一さんにくっつきたいな。。
あの引き締まった筋肉質な体で、私のことを抱きしめてほしいな。
そんなことを考えていると、夜のアレが捗ってしまった。。
朝起きるとLINEが来ていた。
亮一さんだった。
『おはよう!土日はオフ〜今日は普段できない家の掃除をしようと思ったけどまだやってない(笑)筋トレしたらやります!』
Twitterに書くような内容を送ってくれる。
そんな亮一さんが愛おしかった。
『おはよう!筋トレが日課なの?』
『そうだね、出勤前にはほぼ毎日やってるよ。土日はその時の気分で』
亮一さんは筋トレが趣味と。
その他にも毎日やりとりしていく中、分かってきたことが何個もあった。
なぜかわからないけど話がエロ方向へいったときがあった。多分欲求不満の話からそっちへ進んだんだと思うけど、
『俺は性癖が特殊だって友達に言われたことがある』
だそうで。
『どんな?』
って聞いたらしばらく返事がなくって
『いままでそれを明かして嫌われてるからやっぱりやめておく!』
と話が終わってしまった。
もうこれ両思いだよね?
もしお互いが好き同士なら、抱きついてその先、拒まれないだろう。
二人きりの時にしたいから、それが難しいのよね。
目が合ってお喋りするだけでドキドキする今なのに、くっついたらどうなっちゃうんだろう。
そして亮一さんの性癖ってなんだろう!
結局、次のスクールのレッスンまで会えなかった。
「こんばんは!」
「こんばんわー」
コーチ室へ向かう亮一さんに会釈する。
スクールではあまり触れ合わない約束?だ。
でも私が我慢できるはずがなく、思わず「コーチに話があります」と言ってよんでしまった。
「はい!こんばんは!」
変なテンション!気まずいね。
もう周りには生徒はおろかお母さんたちもほぼいない。大人3人がいるがプールを見ているのでこっちは気にしていないと思う。
「えっと、、」
亮一さんは目の前に立って、じっと見つめてくる。
そんなに見つめないで、、!恥ずかしい。。
あぁ、どうしてそんなに目を逸らさないんだろう?
かっこいいから、かっこよくてじっと目を見てられないよ、、
しばらく目と目が合っていたが、亮一さんがニコッと笑って私は目を逸らした。
恥ずかしすぎる!!
「どうかした?」
タメ口?
だめよ、今は敬語なのに。。
「ん?なーに?」
なんでそんなにイケメンなの?
恥ずかしいを通り越して訳がわからない。
耳まで赤いのが自分でもわかった。
「あ、あの、よかったらなんですけど、ツーショット撮っても良いですか?」
「え、俺と?」
「うん、」
前よりももっと近づいて写真が撮れるかも。
グッと近づいてみた。私が振り返ったら亮一さんの胸の中に収まってしまうくらい近くに。
亮一さんはそのままでいて、離れようともしない。
調子に乗って少し触れてみた。肩に少し頭を乗せる感じ。
そこで写真を撮った。
パシャ
「あ、俺目瞑ったかも」
「じゃあもっかい」
なんかわざとらしい??まぁいいか。
今度も触れるか触れないかのところまで接近、撮る直前に触れる。さっきよりもピタッとくっついてみた。
パシャ
離れたくなくて少し固まっていると、そうしたら耳元でまた
「美波ちゃん、俺、、、、やばい」
なにが!?
何がとは言わず、亮一さんはそっと離れていった。
少し顔を伏せ、あたりを見回しているが、ニコニコ?いやニヤニヤしているのがバレバレ。
「何が、ですか?」
「え、まぁ、いろいろと、、」
そこが知りたいのに、、言いたくないのかな?
「よし、じゃあ、、帰ります!」
「はい!寒くなってきたし、あたたかくして、体に気を付けてくださいね!」
「コーチも、気を付けてください」
「では、、また、、」
目を逸らすことなく、最後までニコッとしていた。いつも私が先に目を逸らしてしまう。
そうこうしているうちにロッカー前で友達と遊んでいた美琴がこっちへきた。
友達といっても5歳も上のお姉さん2人、
「いつもありがとうね!」
今日は特に!なんて。
前を通る時、お礼を言ってその日は帰った。
美琴が眠りについたので、最近ハマっている英語の勉強をしていたところ、中断というか即終了してもいい理由ができました。
亮一さんからLINEが来た。
『お疲れ様!美琴ちゃんは眠ったかな?あのー、ツーショットください』
そうだ、独り占めしてあげてなかった。
『どうぞ〜どちらも目はつぶってなかったよ!美琴はぐっすりだよ。』
いつも美琴のことを気にかけてくれて、子供が好きなんだなーって感じる。
『ありがとう。マスク取って写真撮ればよかったね』
たしかに。じゃあそれは、
『それはまた今度ね!』
うーん、、二人は付き合っているのでしょうか?ほぼほぼ恋人よね?なんなんでしょう、この感じは。
はっきりさせたいわ。。
よし、誘ってみよう!
亮一さんから返事が来る前に追加で送る。
『もし予定が空いてたら、来週の金曜日に家に来て?』
送っちゃった〜。来週の金曜日はちょうど、美琴を実家に預ける日。2ヶ月に一回あるイベントで、お泊まりしてお迎えは土曜の昼だ。
二人きりで腹を割って?話ができるいい機会だ。
どうだろう?オッケーしてくれるかな。
既読になってから早20分が経過した。
引かれちゃったかな?早すぎたかな。
ダメならそう言って欲しいな。
『勿論ダメならハッキリそう言って!』
と送ろうとしたところで、、やっぱり返事を待つことにした。
流石に眠くなってきたので寝ることにする。
おやすみって、、送らなくていいか?
部屋の明かりを保安灯を残して消して、さあ寝ようと思ったら、、
ピロン♪
あ、、
ドキドキする。。きっと亮一さんだろう。
、、、
やっぱり亮一さんだ。
どうする?今開いちゃう?やめとく?
いいや、開いちゃえ!!
『18時頃行ってもいいの?』
はい!勿論ですとも!
美琴がいないこと言わなきゃ、
と思って文章を考えていたら、いつのまにか、、
眠ってしまった。。
あら、、
気付くと日付を跨いで2時だった。
あー、、私、亮一さんのLINEを既読無視して寝ちゃったんだ。
遅い時間だけど返しておこっと。
『ごめん寝落ちした〜来週の金曜日はね、美琴が留守なんだ。とりあえず!おやすみ〜』
そう書いてまた眠りについた。
亮一さんの夢を見ながら、心地よい眠りだった。
その後の一週間は、なにごともなく?平穏に時が過ぎた。でもいままでとは明らかに違って幸せが増えた日々だった。
娘のレッスン中に亮一さんをジーッとみてしまう癖は健在で、コーチしている亮一さんと何十回も目が合う。
なんのルールを決めたわけではないけど、毎日続いているLINEでは、
『あんなに見つめられると仕事に集中できないよ!』と怒られ?
めげずに?というか見たくて、、見つめていたらレッスン後に真っ先に来て、
「ダメだって、本当に!」
と小声で行ってロッカーへ行ったり。。
少しの接触すら幸せに感じる今日この頃。
あなたの目を追って私は恋を映して。
光った瞳を逃さないように、見逃さないように、
私を最大限にアピールしたい。
あなたの視線の先に、ぜひ私がいたい。
ストーカーの完成じゃん!
LINEでは
『今日は何回目が合った?』
と来たので
『コーチ、よそ見しちゃダメです』
と面白半分に返すと
『分かってますよ!俺は、ちゃんと仕事してる!』
と怒られ続けています。。
遠くにいる時、私と一瞬目が合った。
きっと気のせいだともう一度見つめると、
やっぱりあなたはこっちを見ていた。
恥ずかしくて目を逸らすけど、
あなたが見たくてまた追ってしまう。
短時間で何度視線を交わしたか分からない。
とにかくあなたに意識してほしい。
私の気持ちに気付いて。
でも気付かなくてもいい。
ずっとこのままでもいい。
亮一さんは、私のことどう思ってるんだろう?
刻一刻と約束した『来週の金曜日』に近づいてきた。
三日後がその日だ。
確かに分かるのは、
あなたの優しさと真剣な姿。
いつも一所懸命に頑張るあなたの横顔。
後ろ姿はたくましく、
その体で、腕で私を抱きしめて欲しい。
そのまま押し倒して、
覆い被さって私を支配して欲しい。
なんて破廉恥な妄想でしょう!
恥ずかしいけど本音です。。
亮一さんは、何を思うんだろう?
、、、
、、、
木曜日、いつものようにスクールに到着。
いつもなら、ここから4日間は会えなくなるのだけれど、今週は違う。明日、会える、かもしれない。
レッスン中に亮一さんの横顔を見る。
最近も相変わらず目が合うが、LINEでそれについて問い正されることはなくなった。
だってかっこいいから見てるんじゃん。見たっていいじゃん!ってことがようやく分かってくれたかな?
そしてレッスンが終わった後、久しぶりに二人きりで会話をした。
「こんばんは〜」
「こんばんは!美琴ちゃんの平泳ぎのキック、もうすこしで完成ですね!」
普通の会話が愛おしく思えた。
こんな時間も、大いに楽しい。
「そうですか!ありがとうございます。当たり前かもしれませんが、プロであるコーチが教えるの、上手だからです」
お辞儀をすると亮一さんもお辞儀した。
「それと、あの、、何度も言うようですが、、あの視線は、、、ねぇ?ハハハ」
全くもうと言った感じ?呆れられてる?
「すみませーん!」
男の子が駆け寄ってきて亮一さんに声をかけた。
私はそのまま会釈してその場を去った。
一瞬目が合ったが、すぐ外されてしまった。
もうちょっと話したかったなー。
家に帰って、その日の夜、電話がかかってきた。
嬉しい、、さっき不完全燃焼だったから。
私も電話したかった。
亮一さんから
『電話できる?』
とLINEで突然言うもんだから、
初めは驚いてすぐに返信できなかった。
手が震えた。
『美琴寝たらでもいい?』
と返し、30分後に電話することになった。
♪〜♪〜♪〜
「もしもし、」
「もしもしーあ、今もう大丈夫なの?」
今夜は外が静かだった。亮一さんの空間からは虫の鳴き声だけが聞こえた。
「うん、さっき寝たよ〜」
「最近ちょっと肌寒いから、風邪ひかないようにって今日話したんだけど、そのとき美琴ちゃんがさ、「ママは寝るときたまにズボン履かないで寝てるよ」とか言うから、、
「えー!!そんなこと言ったの??」
突然なんの話かと思ったら!ちょっともう!めっちゃ恥ずかしい。。
「うん、だからね、「ママが恥ずかしいから、他の子がいるときはそういうこと言うのはよくないよ」って言っておいたんだ」
「ありがとう!でもいや、、ごめんねなんか、、」
ちょっと沈黙があって、
「ん?どしたの?」
って聞いたら亮一さんは気まずそうに?
「いや、、やっぱりこの先は言わないでおこうと思って、、」
「いや言って!」
「うーん、うーん、、、はい、じゃあ言います」
何をだろう?え、こわい。
「その後ロッカーに向かうところで美琴ちゃんに「ズボンを履いてないけど上は着てるの?」と聞いたんだ」
「うん、、」
もーこどもにそんな話聞いちゃって、、
「そうしたら「上はTシャツで下はパンツだよ」って教えてくれて。でね、でね、、
「昨日のパンツは水色だった!」って補足までしてくれて。「模様はないの?」って聞いたら「ない!」って教えてくれたよ。。。」
「亮一さん!」
「はい!」
「変態!」
「ごめんなさい!」
「でもいいよ、そうよ、その通りなのよ」
「えー!そう?あぁ、、、ふーん、、そっかー」
「な、なによーその反応は」
「ありがとうございます!」
「は、はい、、、」
自分でもまた顔が赤いのが分かる。
「ところで!」
「ん?な、なーに?」
「仕事中はあんなにみつめないで!何回言ったら分かるの!」
やっぱりその話かー!
「えー、、だって、、」
「もう!「ごめんなさいご主人様」は?」
え、、
ごしゅじんさま?
「なにそれ!」
あら、そういう趣味なの??
ドキドキする、、
えっと、えっと、
「え?ほら、言って」
いやん、なんか強引な感じ、、
いつもクールなのに実はガツガツくる人なの?ね?ギャップ、ドキドキしちゃう!
えー、恥ずかしい、、
うー、、私が怒られたい・ちょっといじめられたい・からかわれたい、そんな感じ?なタイプ=Mなのを察したのでしょうか?亮一さんは私をいじり始めた。
「ねぇ?なんだっけ?」
うーーー、、
めっちゃ恥ずかしい!
「ご、、、ごめんなさいご主人様、、」
最後の方めっちゃ声が小さくなっちゃった。
「はい!それでよろしい!」
あら、満足みたい?
よかった、もっと恥ずかしい言葉を言わせてくるのかと思ったわ。
そのあとは普通の会話、今日あったこととかを電話でやりとりをした。なんだかんだ30分くらい話をしてしまっていた。その日はグッスリ眠れた。
いよいよ金曜日。
18時に来てくれる?のかな?
『おはよう!今夜は夕飯用意して待ってます』
なーんて、ママ?奥さん?みたいな文章使っちゃった!
そうしたら亮一さんが
『おはよう!ありがとう、楽しみ!』
だってー、あー私も楽しみ!
(9/11 00:04)(9/20 21:11)
今日は美琴の学校が終わったらそのままの足で実家に送る。いつもならその後私は一人で買い物をして→家に帰って→友達と遊ぶ約束していたら会って→なかったら家でのんびり、と言った感じかな。
今日は違うわ。
買い物して→家に帰って→せっせと大事な日?の夕飯を作って→亮一さんを待つ。。
もうドキドキしてきた。
何が、どうなるんだろう?もしかして、もしかすると、大人の、、、なんて!いや、、急展開すぎる?
部屋をあらかた掃除して、自分のお昼ご飯を食べた後、リビングでくつろぎながらそんなことを妄想していた。
時間は思ったよりあっという間に近付いてきた。美琴を車で迎えに行って、実家まで送る。
美琴と車内で話をするが、頭の中は殆どが亮一さんでいっぱいだった。
いけないね、きちんと美琴を優先しないと。
でもそうこうしているうちに実家へ到着、ちょっと顔を出して、
「今日用事があるからすぐ帰るね!」
と言って帰ってきた。
いつものスーパーで買い物をする。
私の好きな料理はパスタ。亮一さんの好きな料理はわからない!
ただ最新情報だと、亮一さんは今ミートソースにハマっているから、それをつくって、後はチキンとサラダにスープでいいかな。
最近野菜が高いなー、スープはコンソメにしようかコーンにしようか悩むなー。
チキンは4つ買えばいっか?手羽元にしようかな?
前々から準備していたレシピを元に最終確認をしながら買い物をしたので、なかなか時間がかかってしまった。
16時を回ってしまった。
料理は得意ではないので、時間がかかる。
早く取り掛からないと!
あ、お風呂も、、沸かしておく??準備良すぎる?
いや、、沸かしておこう。。
というか、この服装でいいかな、、ちょっと誘惑しすぎかな?
上はTシャツに下はスカートに見える短パン、キュロット。膝上15cmくらいなので短すぎるかな。。でも、女を意識して欲しいから、これでいこう。
♪〜♪〜♪〜
アラームが鳴る。
そして、、、え??いつの間にかLINEの通知が3件も、、、
もしかして、
あ!亮一さん。。
気付かなかった、ごめんなさい。。
美琴を送って『これからスーパーで買い物だよ〜』とかいう奥さんみたいな内容のLINEを送ってから、スマホをすっかり放置?していた。
亮一さんからは
『お疲れ様!買い物お願いします、楽しみにしています』
と、その1時間後に
『さっきチーフの三浦コーチに「なんでそんなにニヤついてんの?いいことあったでしょ」って言われちゃった。今日はずっと顔がニヤけているらしい。なんでかな?』
なんて思わせぶりなのが来ていて、それの20分後に、
『そろそろ帰ります!一旦仕事の荷物置くので帰ろうと思ったけど、遅くなっちゃったのでそのまま美波ちゃんの家に向かうね〜』
とかいうラブラブメールみたいな内容が、、、
「もう付き合ってるじゃん!」
と思わず声に出してしまった。
料理がそろそろ出来上がりそうだった。
サラダはお皿に盛り、スープは完成。パスタは茹で時間3分なので亮一さんが来てからにする。
チキンをお皿に装っているところでメインエントランスのチャイムが鳴る。
バタバタと走ってインターホンへ、
「、、はい」
「水城です、遅くなってすみません」
と急いで来てくれたようで息が少し上がっていた。
時刻を見ると18時18分、
「いえいえ!ありがとう!開けまーす」
テーブルに料理を並べ終えたところで、ほどなくして今度は玄関のチャイムが鳴った。
来た、。
ヤバイ、ドキドキが、、
全身がドキドキしてる。。。
また手が震えて、喉がカラカラになってきた。
「はーい!」
返事をしたのはいいものの、なかなか体が動かない。
手に汗握るとは、まさにこのことだった。
ようやく一歩を踏み出して、
といってもきっと数秒の出来事だったと思うんだけど、、
ガチャ、、
玄関を開けると、そこにはいつもの爽やかな亮一さんがいた。
「あ、、、、」
「、、、、ども、、、」
すごく気まずかった。
とてもじゃないけど上手い言葉は見つからない。
とりあえず、
「こんばんは、、、」
こんばんはって、、はい、
亮一さんは、どこが「今日一日ニヤけていたの?」といった具合に顔が固まってしまっていた。
「あの、、、あがってください、、」
私はカタコトのように喋り、大好きな人を、家にあげた。
バタン、、
玄関が閉まる。
亮一さんがゆっくりと鍵を閉めた。
ガチャン
沈黙。
「あの、、、、」
「、、、ん?」
亮一さんとじーっと目を合わせる。
時が止まっているかのように感じた。
周りの音が聴こえない。
心臓がバクバクして顔がみるみるうちに赤くなるのが嫌でも分かった。
どうしよう、理性が抑えられそうにない。
ねえ、このまま、
いや、今はまだ。。
すると亮一さんは重たい口を開いて、
「あのさ、、、俺さ、、その、俺のあhglhg、、、っ」
「ん?噛んだ?」
なんて言ったか分からなかったー!
「噛んだ、、、」
「ふふふ、それで?なーに?」
亮一さんは地面を見たりキョロキョロさせて、
「いや、、なんでもない!」
えー?なによもー。。
「え、え?そうなの?ま、いいや、、あがってあがって!」
「はい!お邪魔します!」
「使うなら、ここが洗面所、これはトイレ、とりあえず!で、あのドア開けるとリビングだから、そこで待っててね!私は夕飯仕上げちゃうね」
と駆け足で説明してキッチンへ戻る。
パスタを茹で始める。
洗面所から、亮一さんが手を洗う音が聞こえた。
あぁ、、、ほんとに二人きりなんだ、、
さっきは理性がぶっ飛びそうになって、そのまま抱きついてキスしてしまおうかとか考えてしまった。
亮一さんは、、何を言おうとしたのかな?
3分はあっという間で、亮一さんがキッチンへ顔を出す頃にはタイマーが鳴った。
予め作っておいたミートソースを掛けて、、完成!
最後にスープを装う時、背後に亮一さんを感じた。
鼻息がかかる距離だった。
「これで、完成だよ」
平静を装うのが難しい。なんでそんなに近いの?
なんで?
え、そこにいるよね?もう、すぐそこに。
「持っていってもらっていい?座って、、食べよっか」
なんとかセリフが言えた。
言いながら、今は振り向かない。だって振り向いたらきっと、、
(9/20 21:49)(9/21 22:28)
ぎゅ、、、、
へ?
スープを装い終わる前に、後ろから亮一さんに抱きしめられた。
これは現実??
動きが止まる。
心臓の音が聞こえそうなくらいドクドクしている。
亮一さん、、、
私のこと、、、?
「ごめん!」
優しく、ゆっくりと温もりが離れた。
あ、、、、
別にいいのに。。
私は、、
「じゃ、じゃあ、これで夕飯の完成ね!」
再び平静を装った。
無理!絶対無理、あー無理!
、、、、、
、、、、、、
「「いただきまーす」」
二人で横に並んで夕飯をとる。
我が家は窓に向かってダイニングテーブルを置いてあり、椅子は背もたれのないベンチで、いつも美琴と並んで食べている。
今夜は美琴の席に、亮一さんが座っていた。
「えー!うまー!」
ミートソースを一口食べた亮一さんは大きな声でそう言ってくれた。
「ありがと!亮一さんって大抵なんでも美味しいって言って食べてくれそうだよね」
「そんなこともないよー?これは、まじでうまい」
「頑張ったので!なんて」
「いいね!それとこの、サラダのドレッシングこれなに?うまいね」
買い物の話に、スーパーの話やらごくごく普通の会話が弾んだ。
さっきの、、、
さっきのぎゅうはなんだったの?
という感じで。。
ヤキモキしたので、食べ終わってお皿を洗ってくれている亮一さんに聞いてみた。
私はテーブルを拭いている。
「ねぇ?さっきのさー、、、」
「うん?」
沈黙、、
言おうとすると言えなくなる魔法。
「うんとね、、、」
「どした?」
水を止めて、手を拭いて、
「ちょうど洗い終わったよ。
ごめん、なに?水の音でよく聞こえなかったんだ」
そう言いながらこっちへ来た。
いやん、近付かないで!
「さっきの?」
私は一言も喋れなくなった。
亮一さんとの距離たったの30cm
20cm、、、
10cm、、
顔をあげたらキスできてしまう、、、
だめ!近い、、!
時計の針の音だけがチクタク聴こえた。
20回くらい聴こえた。
「っ、、」
声にならない声が出た。
変な感じ、、
フワフワしてる、、
お願い、、なにかして!いって!
心拍数が上がってしまう。
恥ずかしい!!
きっと何かされたとして、抵抗ができない、、いやしなくていいんだけど、しないとおかしい?いや意味がわからない、
抵抗する気はないけど、、
今のままじゃ何もできない。。ってことで、え?結局どういう意味?
「あ、」
あ?
なんだろう?
すると亮一さんは、
私の手を取り持ち上げ、持っていたタオルはテーブルに置かれ、私の手は元の位置に戻された。
離れるかと思った手は、そのまま触れている。
亮一さんの手に覆われる形。
ちょっとおかしいけどかなりドキドキして、なんだか不思議な気分。
どうしよう、、
手が触れていて、、
ドキドキする。
あぁ、こんなしっかりした手をしていたんだ。。
あったかいけど少し冷たい。
さっき洗い物をしてくれていたからだ。
形はゴツゴツして
男らしくて
ここも好き。。。
いいなぁ、この手。
ちょっと小指を絡ませてみた。
そうしたら、
亮一さんも中指を絡ませてきた。
少しお互いに力を入れた。
手繋いじゃった!
わー!幸せ!
少しずつ他の指も絡んでいく。
え、始まっちゃうの?
ちょっとまってここで?
どうしよう
いいのかな。
でも聞けず、
言えず、
顔も見れず、
「、、、」
亮一さんも相変わらず無言だった。
えっと私たち、
何してるんだろう?
我に返りそうになったとき、
手を撫でられた。
絡まっていた亮一さんの指が、私の手の甲を滑った。
触り方が、
いやらしい。
そう思ったとき、
電撃が走った。
ピクっと肩が動いてしまう。
見られたかな?大丈夫かな?
感じてるって、わかっちゃう、、
やだ、
すごく
エッチ。。
指が手のひらの方にもくる。
スルスルと撫でられ、
亮一さんは手を愛撫してくる
うう、
なにそれ
やばい、
初めての感覚だった。
さわさわ、
私の手の感触を確かめるように触られた。
指先で、
手の甲とか
指の形とか
指紋の模様とか、
手首まできた、
内側を触られて
私は、
息が上がってきていた。
あ、
あ、すごい、
そこ、
きもちいい!
さっきよりも肩がビクッとした。
絶対に今のはバレた。
恥ずかしいよ!
んっ
でもそれ、
きもちい、、
もっとして。。
今度は右肩を触られる。
はぁ、はぁ、
やだ、私
濡れてきちゃった。
左肩も同じようにスルスルと撫でられた。
それも、すごく気持ちいい。
こんなに感じるなんて、、
だめ、ムズムズしてきちゃう。
二の腕、肘を通り、また手首の方まで指を這わせて、
また順番に肩まで上がってくる。
あっ
それは、なんかもう、!
すごい、
あ、いい、、
いい!すごく、、いい、
またビクッと震えてしまった。
その時、全身がゾクゾクした。
やばい、じわじわしてきた、私、感じてる、
「っ」
我慢できず声がもれてしまった。恥ずかしい、!
もうきっとあそこはビシャビシャになって。。
私もう、
我慢できない。
亮一さんの大きな手で、私の手が、手首が、
腕も、肩も。。
すごく敏感になっていた。
今度は首の方まで指が伸びてきた。
「、、んっ、、っ」
やだ、恥ずかしいよ、こんな感じちゃうなんて。
初めて。。
「っ、、はぁっ、、、、っう」
声が出ちゃう、なにそれ、なんか媚薬とか塗った?
突然、ちょっとガラガラした、ハスキーな声で
亮一さんが喋った
「気持ちいい?」
その声もゾワゾワする!
「、、きもちい、っ」
なんで?こんなに感度良かったっけ私?
「いいよ、」
「っう、、、はぁ、、はぁっ」
体がまたビクッと跳ねてしまった。
そうしたらギュッと抱きしめられた。
あぁ、、それもいい、、
きもちいい。
もっと、
もっとしたい。。
亮一さん、
もっとして?
「はぁっ、、、はぁ、っ、も、
もっと、して、、」
「えっと、あの、ごめん」
頭上で、小さな声でそう言った。
あ、また終わっちゃうの?
勇気を振り絞って言った言葉が、恥ずかしい。
「ん、、う」
どちらともない返事をすると、
「よし、、ちゃんと言ってからだね」
今度はしっかりした声に戻っていた。
え?イッてから?
バカ!なわけないわよ。
「あのね、言いたいことがあるんだ」
はい、聞きたいです。
もっとしてほしいけど、今は我慢。。
、、、、、
、、、
ここで目が覚めないならいい夢だよね。
このまま夢見させてくれるってことだよね?
あぁ、、、亮一さん、、、
好き。
だから、やっぱりあなたにもそう思っていて欲しい。
同じ気持ちで、一緒に時間を作っていきたい。
少し息が整ってきた。
それがわかったのか、
亮一さんは真っ直ぐ私を向き直して、目を見て言ってきた。
久しぶりに目が合う。
めっっちゃ恥ずかしい。。
でも、そんなのことどうでもいいくらい、
それは、録音したいくらいレアな一瞬だった。
この瞬間は、もう2度と来ない。
、、、、、
、、、、、
、、、、、、
「俺、美波ちゃんが好き」
、、、、
、、、、
やばい、
あれ、、、、
涙が出ちゃった。。。。
え、、、?私、、、
なんで?泣いてる?
自分でも驚いた。
音を立てず、涙だけがすーっと伝っていった。
「あれ?」
そういうと亮一さんが、
「え、、、?え!なんで?泣いてるの?」
亮一さんの方が驚くだろう。
まさか泣くとは思ってなかっただろうから。
私は涙を指で拭った。
もう出てこないみたいだった。
「えっと、、、あの、、、亮一さん!」
「はい」
また真っ直ぐ見てくれる。
だから私も真っ直ぐ向き合った。
「あのね、私、、、亮一さんのこと好き!」
言えた。。。
やっと、、言えた。。
ホッとすると同時に今度は汗ばんできた。
亮一さんの表情は少しニヤけてきた。
可愛いなって思った。
「じゃあ、、ということは、、、?」
また私に言わせるの??
もーしょうがないなぁ。
「私と付き合ってくれますか?」
亮一さんはニコニコして返事をしてくれた。
「はい、喜んで!」
end