5
9
それは初めてのことだった。あれもこれもどれも、最初は全て初めてのことだった。ガキンチョが目の前を通り過ぎていく。
10
それはまるで儀式のようだった。告白の後にキスをする。それは義務でしたか?儀式のようなそれに違和感を覚えて、拒んでみる。意図などない。
11
日記を書いていた。
日常、前と変わったのか変わらないのか
変わらないはずがない日々
それでも似かよる日々
もう飽きる必要はない
飽きたっていい
それでもただ、生きるだけ
可能性に夢をみて
12
風が口笛を吹いている
まわるせかいのくりかえし
ひろいせかいのせまいせかいに生きる
13雨の日
「バカじゃないの?」
と言いながら近づいてくる君は、呆れたような顔。雨予報で傘を持ち歩かない僕を君はバカにしたように怒る。良い加減に学習しろ、と。僕はそう言いながらも、駅まで迎えにきてくれる君が愛おしい。呆れた顔ですらかわいい。これがお熱ってやつか?僕は君に風邪を引かされて、こじらせている。でもそれはそれで、今はこれで、最高に幸せだ。
近づいてくる君に聞こえるか聞こえないかの声で言う。
「バカじゃないし。天才だし。」
「バカ、バカだよ君は。」
聞こえてたか…。そう言いながらも傘の中に入れてくれる。
「ありがとう。」
「感謝しな!」
ドヤ顔を向けてくる。思わず笑ってしまう。かわいすぎか。
「ふふ。ありがとう。」
「帰ろ。」
「うん。」
「帰ったらさ、映画観ようよ。」
「いいね。何観るよ。」
14
同じ現実を見る目が、何かで変わる
同じなのに違う世界
物語のような現実は現実で
現実は物語のように美しくなる
周りに見える人間の浅はかな悲しみに
自分の喜びが伝わるはずもないのに
まるで伝わってしまったかのように
世界の人までよく見える
その不思議を
どうして、
どうして感じてしまったのか
なぜ、こんなにも
また襲う飽きに
焦がれる世界を探したい
15
そこにある空朝日は変わらない。朝の電車。下を向いて歩く人。窓の外の景色はこんなにも美しいのに、気づけないでいる。そんな言葉はいくらでもあるのに、自分は関係ないと思っている。僕らの日常はこんなにも美しい。