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第12話「イオフィエル初戦」

束の間の休息を終えると。

すぐに天使が発見される。


リリスやバフォメットの言葉を信じて、フィールドを展開させる場所まで行くと。


すももちゃんと見つめあってうなづく。


深呼吸を一回すると。

そこには景色が広がる。


いつもの色が生気を失う。

あまり心地よくない世界。


色々思い出し。

今すぐ逃げ出したい。

そんな空間。


心臓はリズムが速くなり。

息が上がり始める。


「よく見て、無理しない」


すももちゃんがそう声を出す。

2人で、ブレスレットをつけ。


装備を整える。

普段持ち慣れた銃に。

何か、部品がついている。


不思議な顔をしながら見ていると。

すももちゃんはそれはセレクターというものだと、教えてくれた。


セレクターを操作すると。

1発、発射するモードと。

3連射するモードがあると、教えてくれた。


初戦から、動きが早くて、外してしまうことが多く。


すごく助かるカスタムだと思った。


そしてこの、すももちゃんと2人しかいない空間で。


天使を探す。

いつも早かったり。

逆に遅くても、強くて、弾丸が貫通しなかったり。


かなり、手間取っていた。


今回のスペアマガジンはたっぷり。


これならすぐ終わる。


ふと、遠くに見える巨体。

イエローの光を放ちながら立っている。


その腰には大きめのソードを下げている。


「イオフィエルね、また厄介なのがきたわね」


リリスの不満げな声が聞こえる。


少し目を疑った。

天使が武装してるなんて。


すももちゃんは小さく舌打ちをした。


気持ちはわからなくはない。

こんなの聞いてないもの。


今持っている銃をしまい。

すももちゃんは、2丁めを取り出し。

安全装置を解除する。


「楓ちゃん、さっさと終わらせるわよ」


そう言葉を発したのと同時に、すももちゃんは両手に銃を持つ


3発ずつ。

左右切り替えながら。


ピストルを撃つ。

いつもなら15回撃てるけど。


連射しているので、すぐさま、マガジンが空になる。


「楓ちゃん、時間を稼いで」


その声に促されながら。

ピストルのトリガーを引く。


三連の振動。

わたしにはこれは強すぎる。


そう判断して、セレクターを切り替える。


イオフィエルは、全身に穢れを受けている。


これなら、短時間で終わりそうだ。


すももちゃんに攻撃がいかないように。

もう一度、トリガーを引く。


撃ったのと同時に。


鈍い金属の音がする。

まるで台所のシンクに。

重いものを落とした時のような。


かなり響く音。


一瞬何が起こったのかわからず。


イオフィエルをよく見ると。

鞘からソードを出している。


おそらく、今の発砲を、それで防いだのだ。


「ウソでしょ」


そう言うしか、できなかった。


とりあえず、当てるのは諦めて。

少しでも動きながら、発砲を繰り返す。


撃つたびに。

鈍い音が響く。


さっきも聞いた、相手に弾丸が当たっていないと言う。


絶望の音。


もうわたしも弾丸が尽きる。

そう焦っていると。


「楓ちゃん、離れて」


すももちゃんの声がする。


イオフィエルを引き離すように、走る。


次の瞬間。

また、三連の発砲を始める。


さっきのように、短期間撃ち切りではなく。


隙を見て、撃ち込んでいる。


1回で3連射されるうち、1発か2発は、ソードにあたり、跳ね返される。


その光景を見て、呆然とする。


今回はスペアマガジンもたくさんあるが。


無計画にばら撒いたのでは、埒があかない。


フィールドの保持の時間も、持たないかもしれない。


そんな心配がよぎる。


すももちゃんがまもなく、弾が尽きようとしているタイミングで。


わたしもリロードが終わる。


本当に時間の流れがかなり長く感じる。


「すももちゃん、次の準備して」


そう声かけると。

また、イオフィエルを撹乱しながら。

どんどん発砲する。


少しでも遠く。

少しでも、穢れを多く体に残すために。


フェイントも入れながら。


発砲を繰り返す。


発砲するたびに。

鈍い音。


フィールドの中は戦闘の音しかしない。


かなり、頭がフラフラしてくる。


これは、戦闘が終わるまで、走りながら闘って。


次に、出直すしかないのか?


そんな絶望感さえあった。


もたない。


そんな不安も頭をよぎった。

声も出さず。

すももちゃんが。


後ろから発砲を始める。


次の瞬間、イオフィエルは、恐ろしい速度で反転し。


それをソードで受け止める。


戦慄する。


もはや人間のわたしには理解できない動きだった。


気力が尽きて、その場にへたり込む。


すももちゃんが慌てて駆け寄る。

わたしを庇うために。


イオフィエルは目の前。

しかし、攻撃はしてこない。


わたしたちにとどめを刺すどころか。


ソードを鞘にしまい。

何か諭すようにじっと見つめる。


その目はとても悲しみに溢れ。

何か諭しているようだった。


わたしは、腰の剣に手をかける。

引き抜こうと、一瞬力込めるが、イオフィエルは、その視線でわたしを止めている。


その、感情を受けて、体が固まってしまい、うまく体を動かすことはできない。


攻撃されるかもしれない恐怖。

その反面、その表情からは、殺意はうかがえない。


いつもなら、機転をきかせて。

次の攻撃に出る、すももちゃんですら。


今までにない間合いに入り込まれてしまい。


何も、言葉を発することはできていなかった。


イオフィエルも。

わたしたちも、何も言えないまま。


時間だけが過ぎていく。


少し、家族のことを思い出していた。


ああすればよかった。

こうすればよかった。


いろんな後悔に襲われる。


「剣を使いなさい、楓ちゃん」


リリスの声。

覚悟決めて、もう一度腰の剣に手をかける。


鞘から抜くと同時に。

斬りあげする。


イオフィエルは、素早いバックステップでそれをかわす。


視線はわたしをしっかりと見ている。


間合いは少し離れているが。

一歩踏み込めば、攻撃できるくらいには、近かった。


左手に力が入る。


それを見逃さず、イオフィエルもソードに手をかける。


思いきり、上から振り下ろすと。


イオフィエルはそれを受け流し。

間合いを取り。


わたしを見つめる。


少し距離が開いたのを見てすももちゃんが銃に再び手をかける。


イオフィエルはその危険を察知して。


はばたく。


「逃げるな!」


すももちゃんが何発か空に向かって発砲する。


脚に僅かに当たるが。

向こうは気にも留めない。


2人で、イオフィエルを目で追う。


慌てて走ったりもしない。

淡々と、天使を追い詰めていく。


どこに着地したのかも。

だいたい2人で把握する。


「楓ちゃんは左から、あたしは逆から」


それが合図だった。


2人で少しずつあるく速度を上げ。

イオフィエルとの距離を詰める。


着地地点の近くに行くと。


ここの建物のかげにいる。

そんな確信を持つ。


声は出さない。


アイコンタクトでタイミングを見る。


次の瞬間。


イオフィエルを挟み撃ちにすることに成功する。


すももちゃんが照準を合わせている間に、強烈な風を感じる。


イオフィエルは真上に飛び上がる。


羽根を使い、凄まじい力だった。


天使が抜けたスペースから。

3発の弾丸。


わたしのすぐそばをすり抜けている。


「ごめん、状況が整理できなくなって」


すももちゃんがわたしを撃ちかけて焦る。


「今はイオフィエルを追おうよ」


本当だったら叫びたかったし。

手に持っている剣で何かしらしたい欲求すらあった。


でも、このタイミングでの仲間割れは、天使にとって美味しいハプニングでしかない。


腹の奥底でフツフツと沸き返るものを抑えて。


今は相手を目で追うのに必死だった。


すももちゃんは、さっきのショックで少し動きが悪くなってる。


無理もない、今回が一番死に近い戦闘かもしれない。


何回も高速な動きや。

離脱をしているイオフィエル。


向こうもそんなにスタミナはない。


そしてそれはわたしも同じ。


もう詠唱をできるほどの穢れを与えることも無理かもそれない。


このまま止まって、諦めるか。


大きな一撃を与えるか。


そのうちの一つしか選択肢はない。

心の中で、結論が出る。


イオフィエルが着地と同時に。

走り出す。


一撃、一撃、少しでも、ダメージを。


そんなことで頭がいっぱいだった。


焦るわたしを横目で見ながら。


イオフィエルは身構える。


間合いを見ながら横になぐ。

バックステップでかわされる。


距離を詰めるために突き刺す。

相手は、ソードでそれを受けとめ。

阻まれる。


仕切る直しをして僅かにあいてるスキを見ながら。


上から斬り下ろす。


イオフィエルもよく見ていてそれをさらりとかわす。


わたしの方に大きなスキが生じる。


しまったと思った時には、遅く。

ソードがゆっくり動き。

わたしの喉元に先が来る。


死を覚悟した時だった。


「もう、フィールドの維持が時間切れね」


リリスの声が聞こえると同時に。

フィールドが解除される。


色が戻ったそこは。

日常が戻り。


小鳥たちがとび始める。


今回もなんとか殺されずに済んだ。

そんなことしか、考えられなかった。


すももちゃんは、まだ状況が掴めず

呆然としている。


無理もない、あんな怖いことがあったのだから。


イオフィエルの慈悲がなければ。

確実に、死んでいたのだと思う。


今までにない、完全敗北。


この日ばかりは、帰り道も無言だった。


おそらく2人とも。、


とんでもないことに参加したんだと言う、そのことに気がついた。


でも、どちらも怖くて、何も言えなかった。


そんな帰り道。


わたしは普段は感じない。

生きる喜び。


と言うものを噛みしめていた。

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