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第11話「作戦会議とお茶会」

すももと楓は。


すももの家の教会にいた。


前回お茶会した部屋である。


そこには、神父が会議で使うホワイトボードが置かれていた。



ぐちゃぐちゃした感じで。

さまざま書かれている。




丸の記号が二つ。

真ん中に四角の記号が一つ。


「だからね楓ちゃん、ここから撃って、怯んだら斬りつける、これが大事だと思うの」


「その時は当たらないように気をつけなきゃ」


「そうそう」


二人はそんな会話をしながら。

紅茶を飲んでいる。




楓はその図を見ながら。

考え込んでいた。


自分はどうしたら、効率的に天使を撃退できるのか。


最後の審判で、人類が滅びるのをどうやったら避けれるのか。


すももは、少し考えてから。

丸を一つ消して、離れた位置に、書き直した。


それを見ながら。

楓は何かに気がついた顔をする。


「すももちゃん、それ、ポジションを決めるのは?」


「そう、それを今考えてたの」


二人はそういいながら少し考え込む。


リリスとバフォメットは。

2人の邪魔をしてはいけないと。


別の部屋にいる。


「でも、固定しちゃうと、なんかあった時逃げれないのか」


すももが漏らす。

「そうそう、すももちゃんになにかあったら、1人になっちゃう」


「そうなんだよね、死にたくはないよね」


そこで2人の会話がとまる。

イヤな感じの沈黙。


しばらくみつめてから。

すももが先に切り出す。


「気を引いてるあいだに斬るのは?」


「それもいいかもだけど、天使は突くしかないから、難しいよ」


「なのよね、みんな、硬すぎる」


「そんなに一筋縄で行かないから、ラファエルの時みたいに、前の武器がきかなくなることも、考えなきゃ」


「難しいわね」



すももはそう言いながら。

椅子に腰を下ろした。


どちらかといえば。

天使を止める難しさに、絶望の色の方が強い。


そんなシリアスな表情を見ながら。

楓は、励ます言葉もかけられない。


と少し焦った。

すももに引っ張られ、場の空気が少しずつ冷え込んでいく。


楓が何かを言わなければと余計に焦るが。

空気を変えるような言葉を思いつかないでいた。


「まあ、目の前にいなかったらわからないよねー」


すももは突如大声をあげながら。

伸びをする。


いきなりの行動に楓は、びっくりするが。

なんかいきなりの変わりように。


少し微笑んでしまう。


「朝からこんなんじゃ、いくら考えても終わらないし、少し気分転換しましょう?」


すももの提案に少し戸惑う楓。


「あー、そうそう、パンケーキミックスが少し残ってるんだけど、食べる? この前カヌレも食べてたし、小麦アレルギーは多分ないよね?」


「ええ? うん、ないよー」


あまりにも急展開すぎて。

楓は少しびっくりする。


「じゃあちょっと、作るね、楓ちゃんも、手伝ってくれる?」


「うん、何すればいいかな?」


「それはキッチンで決めましょ」


すももの、悩むよりなら、何かを行動して、リフレッシュをするクセも。

何となく掴んできている楓にとっては。


あまり疑問でもなかった。



すももはキッチンの前で。

ピンクの無地エプロンを着替えている。


そしてすももは、何個かあるうちの。

花柄のエプロンを楓に渡した。


「それね、うちの教会で手伝いしてくれる人のやつなの、よかったらつけて、粉飛ぶだろうし」


言われるがまま。

楓はそれをみにつける。


でもなかなか。


後ろの紐が結べないでいた。


それをすももが助けて。

しっかりと結んでしまう。


「ありがとう、見えないと結べなくて」


「楓ちゃんあんまりお料理しないでしょ?」


「うん、ママがしてくれるから」


「いいのいいの、慣れればいいんだから」


なんてやりとりをしつつ。

すももは、パンケーキミックスと。


たまご、牛乳を取り出す。

すももは黄身と白身に手早く分ける。


そして、卵白の方を渡してくる。


「いい、楓ちゃん、これをかき混ぜるの」


そう言いながら。

泡立て機をボウルに入れる。


何のことかわからず。

キョトンとしてしまう。


「これでメレンゲを作ってくれる?」


「めれんげ?」


「これをね、泡立てるの」


すももちゃんは手を取って。

その混ぜ方をレクチャーしてくれた。




その感触を覚えながら。

手際よく。


かき混ぜていく。


卵白の感触が少しずつ変化していくを感じる。


その間にすももちゃんは。


手早く、いろいろなものを混ぜている。


牛乳や、卵黄。

ミックスを混ぜている。


やはり、すももちゃんは手早い。

普段教会に来た人に出しているからなのか。


それとも、自分が好きで作るのかはわからないけど。


かなり手慣れている。

なんてみながら。

だいたい3分くらい混ぜていると。


だんだん卵白が、泡立ってくる。


それを見逃さなかったすももちやんは。

そこに砂糖をくわえる。



砂糖と一緒に泡たでると、少しずつ。

ツヤ感が増していくのかわかる。


「今ね」


すももはそう言いながら混ぜてあるものを混ぜる。


「ねえ、楓ちゃん、苦いのは好き?」


「あんま苦いのは苦手かも」


「んー、ココアは好き?」


「うん、ココアは好き」


それを聞きながら、すももはニコニコしながら。

材料を半分にする。


もう一つのボウルに移していく。

そして片方に適量のココアを入れる。


「そんなことして大丈夫?」


不安そうに聞いてくる楓。

すももはそれを制しながら。


一枚一枚丁寧に焼き始める。

味が混ざらないように、一種類ごと。


きちんと最後まで焼いていく。

そうすると。


普通のパンケーキが2枚。

ココア入りが2枚できる。


合計4枚。


それを盛り合わせて。

メープルシロップをかけ。


上から粉砂糖をかける。


「今から紅茶作るから、待ってね」




そう言いながらティーポットにお湯を注ぎ。

少しさます。


適温を見ながら、茶葉を入れて。


3分の砂時計をひっくり返す。


「今日はね、アールグレイにしてみました」


「すごく楽しみ」


そう言いながら。

砂時計の砂が落ち切るのを見つめる。


最後の砂が落ち切ってから。

すももが静かにティーカップに紅茶を注ぐ。


キッチンのテーブルに。

パンケーキと。


紅茶が揃う。

パンケーキにつける。


スプレータイプの生クリームと。

ケーキシロップ。


ブルーベリージャム。

それぞれさらに出して。


好きなのをつけて、2人で食べ始める。


「ねえ、パンケーキなら、すぐに協力できるのにね」


「すももちゃん、でもケーキ作りながら少しわかったの」


「なあに?」


「お互いを見るのと、わからないときは声かけだなって」


「そうだね、出会ってまもないけど、だんだんお互いのこと、わかってきたよね」


そしてしばらく2人で見つめ合う。

少しの静寂あと。


口を開いたのは楓。


「ねえ、すももちゃん、わたしはすももちゃんのことは見捨てないよ、わたしのことは、すももちゃんに任せるよ」


するとすももは少し間をおいて。


ゆっくりと答える。


「楓ちゃんのことを見捨てたりしない、危なかったら、2人で逃げるし、きちんと、立て直してから、出直しましょう」


そう言って再び、2人でみつめあう。


手を繋いだりはしないけれども。


目と目を合わせて確認している。


その眼差しが、2人の決意を表している。


お互いが察したのか、

そのまま食事を続ける。

でもそこに、気まずさとかはなかった。


2人で、それぞれ好みのジャムや。

生クリームにパンケーキをつけて。




最後までたいらげる。


全てを食べ終わってから。

2人で皿を片付ける。


「ねえ、楓ちゃん、今日は作戦会議のはずだったんだけどね、お茶会しちゃったね」


「そうだね、でも、わたしはすももちゃんのクセとかもしれてよかったかな」


「ん? クセ?」


そう聞き返されて、楓は少し言葉を探す。

そして、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「なんかわたしよりお姉さんで、出会ったばかりなのによくみてくれてるなって」


「そっかな? 楓ちゃんも飲み込みがはやいからとても楽しいけど」


「知らないこと、たくさん知れて楽しいよ」


「そう、よかった」


そんな会話をしながら。

2人で食器を片付ける。


片付け終わってから。

2人でさっきの部屋に戻ると。


ホワイトボードをもう一回見直す。


そしてそこにすももは大きく書き始めた。


『よく見て行動、無理しない』


この2人の共通の作戦が決まった瞬間でもあった。


楓は、安堵の表情を浮かべながら。

カバンに手をかける。


すももは、すぐにホワイトボードを、消してしまう。


「楓ちゃん、気をつけて帰ってね」

「うん、バフォメットにもよろしくね」


そう挨拶して楓はリリスをバッグにしまい教会を出る。


楓は外の草木にすら。

何か愛おしさを感じていた。


そしてどこかで願っていた。

このまま明日にならなければいい。


戦闘なんてなければいい。

もし、すももとも。


ただの友達としてつきあえていたら。


どれほど良かったろうって。

でもすぐに気持ちを切り替える。


こうなることも、何か意味がある。

きっと誰かが。


この苦難を乗り越えた時に。

意味を見つけてくれるかもしはない。


今は余計なことは考えず。

目の前のことに。

集中するだけ。


そして深く感じるのであった。


自分がやるしかない。

でも、1人じゃない。


ザドキエルと初めて闘った時にはなかった感覚をしっかりと感じながら。


駅を目指して。

歩き始める。


明日は明日の風が吹く。

思い詰めても意味はないのだから。

前に行くしかできない。

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