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第9話「ラファエル二戦目」

作戦会議を終えてから。

初めてのラファエルとの戦闘だった。


二人はドキドキしていた。


「いい、楓ちゃん、今回は二人で60発しかないの、しっかりラファエルを引き付けてから、戦闘をして」


そんなリリスの声を聞きながら二人はうなずいた。


そして、リリスとバフォメットが結界を張り。


その中に二人が入っていく。

すももはスライドを動かし。


チャンバー内に弾薬を滑り込ませる。

楓も同じ動作をして。


戦闘の準備が始まる。

2マガジンずつ、二人合わせて4マガジン。

これが今回の残弾。


ベルフェゴールの弾丸を拳銃にこめて。

最初にあまり体力を消費しないように。

すたすたと歩き始める。


最悪この弾丸が切れても。

ベリアルの弾丸が残っている。

こちらも2マガジンずつ。


楓とすももは打ち合わせをしていて。

それぞれ、右側に、ベルフェゴール。

左側にベリアルの弾丸を持っている。


魔法少女の格好だと。

多くの弾丸を持てないため。


近くのサバイバルゲームのショップで。

マガジンポーチを購入している。


店のお父さんに。

女の子が買うのは珍しいなんて言われつつも。

二人で挨拶しながら買いに行った。


その時に色々話をしながら。

一番多く入るものを選んで買っている。


二人はそのことを頭に入れつつ。

ゆっくりとラファエルを探す。


ザドキエルの時はよく動いていたので。

その辺を走っていれば。

必ず見つかっていたが、ラファエルはゆっくり歩くため。


あせらず二人で探していた。


そして、裏路地を覗き込んだ時。

ラファエルはそこに立っていた。


体から発せられるエメラルドグリーンのオーラは。


その天使が間違いなく。

ラファエルだという事を表している。


ラファエルと目が合った。


次の瞬間。

すももが3回発砲する。


前回は貫通しただけのベリアルの弾丸とは違い。


突き抜ける直前に。

黒くよどんで、その穢れが確かに効いていることが証明される。


ラファエルは少しよろけた。


「今よ、楓ちゃん」


すもものその合図ともに。


裏路地とは逆の方向に走り始める。

ラファエルが弱っている今なら。


少しきちんとした距離が取れると察知して。

二人で少し距離をあける。


ラファエルはよろけから回復して。

こちらにすたすたと歩いてきている。


「見た楓ちゃん? しっかり利いてた、ザドキエルの時と同じ」


「よかった、これで効かなかったら、また逃げなきゃいけないところだったね」


「その心配はないわ、二人で集中してあてて、さっさと送り返すわよ」


そう言って。

すももが二発を撃ち込んで。

後ろに退却。


楓はよろけているラファエルにもう2発撃ち込み。

後に続いた。


ラファエルは苦悶の表情を浮かべ。

とうとう、片膝を地面についた。


「やった!」


すももがわきたつ。

楓は、でもどんな反撃を受けるのか、少しひやひやしている。


「今なら封印できそう」


すももがじりじりと幅を詰めていく。

前に出ようとしているのを楓が止める。


「だめ、まだラファエルは弱ってない」


「やっぱり、近寄るのは危険かもね」


そう思い直して、二人でまた改めて距離を取る。


ラファエルは、また何もなかったかのように。

こちらに歩いてくる。


二人で二発ずつ。

撃ち込んで少し動きを止める。


それの繰り返し。

でも、まだ、マウントを取って。

封印ができるくらいの弱り方をしていなかった。


すももと楓は、焦りしか感じていなかった。


早くラファエルを封印して。

次のところに行きたい。


そんな焦りしかなかった。


そうやって撃っているうちに。

やがてワンマガジンを撃ち切る。


二人はマガジンキャッチボタンを押し。

次のマガジンに入れ替える。


ラファエルは少しずつ。

うろたえる時間が長くなっていった。


かなりの数の弾丸を当てているが。

ラファエルは倒れ込むほど弱り切っておらず。

二人はただただあせっていた。


じっくりと、ラファエルの様子をみつつ。

二人は根気よく、弾丸を浴びせ続けた。


ラファエルに撃ちこんだところは。

少しアザになっており。

少しながらではあるが、効いているのが感じられた。


少なくとも前回のような、まったく効かず。

ずんずんとこっちに向かってくるような、そんな状態ではないことだけは。

二人は認識した。


ラファエルはだんだん、足を引きずり始めていた。

それに、たまに止まる動作も見せ始めている。


どこかで倒れるのではないか?

そんな浅はかな期待をしつつ。


二人はラファエルをひたすらに見守った。


残りはおそらく二人合わせて、20発程度である。


次の瞬間。

すももはベリアルの弾丸に切り替えて、止まっているラファエルに弾丸を浴びせる。


楓も5発ずつ区切りながら。

ラファエルに弾丸を浴びせていく。


ラファエルはついに耐えかねて、両膝を地面についた。


「いまだ!」


すももが一気に走り寄り。

ラファエルをマウントする。


ラファエルは一瞬その自由を失い。

バタバタと暴れまわる。


そして鏡をかざすと。


ラファエルはそれをふりはらい。

鏡を手ではじく。

鏡はすぐそばに落ちて。


すももがそれを取りに行くと。ラファエルはすごい速さで。

逃げ始めた。


すもものマウントが外れた瞬間。

ラファエルは二人からかなりの距離を離した。


すももは不意の出来事に、舌打ちしながら。

逃げるラファエルの背中に銃口を向けるけど。


かなり距離があるので、撃つのをためらう。


「すももちゃん、今は撃たないで、ラファエルが逃げるのを辞めるまで待って」


「くっ、あと少しなのに」


すももの怒りがにじみ出ている。

もう早くとどめをさして。


ラファエルを追い返してやりたい気持ちが、見て取れた。

すももはギリッと歯ぎしりしながら。


立ち上がると、楓のもとへ戻った。


ラファエルは足が遅く、すぐ近くの空き地に隠れていた。

二人ともすでに隠れている場所は把握しており。


そんなにあせって追撃するような事はしなかった。


「ラファエルを倒す時間と、結界の限界、どっちが先かな」


楓が時計を確認しながら。

すももに相談する。


すももも時計を確認しつつ。

かなりイライラしている。


「あー、もう少しなのに、きっついわね」


「まあまあ、すももちゃん、次もあるよ、今回分かったのはこの弾丸はかなり効くし、次は確か剣も出来上がる」


「そうしたら確実に仕留められるね」


「今日はそろそろ結界の外に向かいましょう、追ってる途中に結界が解けたら、大変」


「そうね、天使のいない普通の空間で銃を撃っちゃうことになるわね」


「そんなことしたら、普通の人間が死んじゃうからね」


「そんなことはあってはいけないしね」


すももが徐々に冷静になっていく。

今まではラファエルのことで、頭がいっぱいで。


本当にラファエルに向かって銃弾を撃ち込むことしか考えられずにいた分。

そこから見れば、かなりの進歩である。


「くやしい、本当にくやしい」


「でも、きちんとみんなの事を考えれて、すももちゃんは偉いね、さあ、結界の外にいそごう」


すももの手を引きながら。

結界の外に二人は向かっていく。

ラファエルは追ってこない。


リリスたちの力が尽きてしまう前に。

結界の外に出ることに成功する。


かなり長い時間戦闘をしていたので。

リリスもバフォメットもぐったりしていた。


ぬいぐるみの姿をしていた二人だけども。

抱きかかえるその手からは。


二人が疲れ切っているのがよく伝わってきた。


抱きかかえると同時に。

結界は消失。


すももと楓も中学の制服にもどる。


抱きかかえながら。

二人は歩いて家の方向に向かう。


「本当に、ギリギリだったね」


楓がぽつりと漏らす


すももは首を縦に振る。


「今度こそ、きっちり送り返そうね」


またすももは首を縦に振る。


それ以降、二人は少し沈黙して歩いていた。


魔法少女として戦闘していた時はおろしていた。

学生カバンの重みを感じつつ。


二人並んで歩いていた。


やがて、分かれるポイントである駅の近くまで来た時だった。


「ねぇ、楓ちゃん」


すももが呼び止めた。


「なぁに? すももちゃん?」


少し二人の時間が止まった。

でも、二人は気にしない。


疲れてそんなことを気に留めていられなかったからだ。


「おなかすかない?」


すももが切り出す。

楓はその言葉を受けて、少し考えてから。


ぽつりと言葉を漏らした。


「おなか減った」


その言葉を聞いてすももはしばらく考えた。

そして、切符を買う前に楓に切り出した。


「うちの教会でお茶飲まない?」


「この前のピンクのやつがいいな」


「あるある、まだあるよ、お菓子はこの前神父のもらってきたレーズンクッキーがあるよ」


「レーズンってあの、ドライフルーツ?」


「そうそう、ゆっくりクッキー食べようね、なんか疲れちゃった」


すももの一言で、二人の空気が一気にやわらぎ。

普通の会話に戻っていった。


天使を攻撃していたことは少し忘れて。

二人の頭の中は、クッキーのでいっぱいになっている。


まるで部活を終えた仲間どうしみたいな。

そんな空気が流れていた。


「楓ちゃんの家とは離れるけど、おいしいの出すから」


「いいのいいの、ちょうどおなか減ってたから」


そういいながら、二人で同じ電車に乗る。

普段は逆方向に乗るのに。


何か二人そろって乗ると。

とても新鮮な感じだった。

電車の中では、それぞれの学校のはなしなどをしながら。


すももの家のある駅までしばしの談笑を楽しんだ。


その後、電車を降り、二人で教会に向かっていた。


二人はやけに明るい感じで話していた。


「ねぇねぇすももちゃん、こっちの方ってめったに来ないんだ、なんか新鮮」


「そうだよね、なんか買いたいものとかある?」


「あんま詳しくないからなぁ、おすすめとかは?」


「そのおすすめが、今日のレーズンクッキーなんだよね、最近できたの」


「そうなんだね、おいしいかどうか、楽しみだね」


「ほかの駅の近くにあって食べたときはあるんだけど、すごくおいしいよ、バターがたっぷりなの」


「わあ、すごく楽しみ」


そんな会話をしながら、二人は駅前を歩いていく。


少し遠めのすももの家までの道のりを二人で楽しんでいた。

どことなく残る、天使の不安を感じながらも。


二人は今、関係ない話をして笑うしかできなかった。

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