言葉が出ない出てこない
私めっちゃ伝えたいことがあるんです。
常に伝えたいこと考えてるんです。
面白いこと言おうと思ってるんです。
感動すること発表したいんです。
私の話を聞いてください。
私の物語を知ってください。
私すごいんです。
私いろいろ考えてるんです。
とにかくすごいから気になるはずです。
私自信あるんです。
私の話はすごく面白いの。
でも。
残念ながら。
言葉を知らないんです。
文章にならない私の気持ちがたくさんあります。
物語になれない私の思いがたくさんあります。
書きたいものが、かけません。
書きたいと思うのに、文字列がふえていきません。
目の前のパソコン画面の空白を前に、視線はうろうろ。
ただ漠然と、私の中にある想像力をもて余しているんです。
「なるほど、なるほど」
「では、まず書いてみることだ」
「書きたい事があるならば、書きたいと思うのではなく、書くのですよ」
「思うだけでは、君の世界は君の中でしか広がっていかないからね」
「言葉がなくても、伝わるようになっていく」
「まずはとにかく、君の物語を、君自身が、書きあげなければならないんだよ」
「書いてあげないと、君の中の物語がかわいそうだ」
「世界中に感動を齎すはずの物語を、君一人で独占してはいけないよ」
私、書いてみます。
私の物語を書きます。
書けないふりして何もしてこなかったんですね、私。
ただ妄想にふけっていたんですね。
私、書いてみた。
私の中の、私が生み出した世界。
誰もが感動する、素晴らしい作品。
きょうのわたし、とってももやもやする。
だからちょっと、うきうきしたくなって、いろいろかんがえたの。
ああ、そっか、なやまなくていいんだ。
わたし、すごくしあわせ。
ねえねえ、こっちおいで。
わたしといっしょにせかいをすくおう。
たびだったよ!
すごくおもしろいたびになったので、おおよろこび!
わたしすごくたのしいから、つよいひとたおしちゃった。
だいすきなひとがとなりにいるのに、なみだがでるの。
えーんえーん。
この物語が、十年後に映画化されるとは、まだ、誰も知らない。