九話
Eternal League of Nefia、通称Elona。あの名作フリーゲームを舞台に書かれた小説です。
※二次創作はフリーということで書かせていただいております。
elona作者様のサイト
http://ylvania.org/jp/elona
あれから幾月か経った。
大体三ヶ月周期で来るエーテルの風を二度挟んだが、なんとか古書物を集めることができた。そして今、俺らはルミエストにいる。
魔術師ギルドのある、ルミエストに。
「ようやくルミエストについたな」
「盗賊団と遭遇しなくてよかったね!」
「何度か夜中金貨やら古書物やらを盗まれたがな」
「まぁまぁ、結果として集まったからいいでしょ」
「それもそうか、さぁノルマを報告しに行こうか」
しかし、ルミエストは綺麗な街だ。
清掃が行き届いているし、綺麗に舗装された水路が街中に伸びているし、あちらこちらで吟遊詩人がメロディーを奏でる。
まさに水と芸術の街、ってところか。
魔術師ギルドの入り口へ着くと、ギルドのいわゆる門番がいた。
「ここは魔術師ギルドだ、何か用かね」
「ギルドに入会したくて来ました」
「ふむ、ならば古書物を25ポイント分解読してくるがよい」
「はい、解読してきました!」
「拝見する」
ぱらぱらと解読した古書物を門番は閲覧する。
「どれもこれもヴォイニッチ写本やドール讃歌ばかり……まぁいいでしょう、中で手続きを済ませなさい」
「や、やった!」
「よかったな」
「でも、入れるの私だけだね……」
「俺にはギルドは必要ない、その辺で時間潰してくるから、手続きを済ませてこい」
「わかりまーしたっ!」
リシェはかなり上機嫌だ。
階段を踏み外すんじゃないかという勢いで下っていった。
「ルミエスト……気になるところがあるな」
俺は古書物を集める間、妙な噂を聞いた。
《全てを統べる黒》という異名をもつ、イツパロトル教祖がいる、という情報。
記憶を失ってから、大きなできごとといえばイツパロトルの祭壇に向かう途中のあれ、しかない。
見えざる壁、顔を見せるなという声。
イツパロトルと何の関係もないとは到底思えないのだ。
そして全てを統べる黒がルミエストを拠点とひていた、と聞いたので気になっていたのだ。
「そこのガード、話を聞いていいか」
「ん? あぁいいけど」
「全てを統べる黒、って人物を探してる」
「ええっ!? あのリトルフス様を!?」
「まて、リトルフスといったか」
「えっ、えぇ言いましたが……」
「全てを統べる黒の異名を持つ者が、リトルフスというのだな」
「はい、でも確か、イツパロトル様を裏切ることをして追放されたとか……」
「追放……?」
「えぇ、だから今リトルフス様の居場所を知ってる人はおろか、生きてるかどうかさえ誰にもわからないんですよ」
「なるほど……ありがとう、助かったよ」
「えっ、あ、はい」
イツパロトルを裏切った追放者。
名を、リトルフス。
前に頭痛がして声がした時、声の主は確かに
「リトルフス、殺さなかっただけありがたいと思えよ、そして二度と私に顔を見せるなよ、いいな?」
と言った。
文脈的に、俺に話しかけているのだから、俺がリトルフスという名だと考えるのが普通か。
となると、俺は。
「追放者……俺が……?」
確かに、イツパロトルを裏切り直々に制裁をくらうほどの人物なら、今の俺の詠唱速度や古書物が読めるのにも納得がいく。
それほど実力も兼ね備えていた、ということなのだろうからな。
だからあの時、殺さなかっただけ、と言ったのか。
全てを理解した瞬間、全身を激しい電流が流れるかのような感覚が襲う。
目の前が真っ白になり、記憶が次々と頭に流れ込む。
そうだ、思い出した。
俺は、ケティアを守るために――
――ケティア……っ!!
「手続き終わったよケイブ……ってどうしたの?」
「全てを思い出した!! 俺は今すぐノイエルに向かう必要がある!」
「えっえっ思い出した? どういうこと?」
「詳しいことは道中話す! とにかく一刻も早く向かわねば!!」
「う、うん? わかったけど……その前に」
「なんだ!?」
「ご飯、買ってかないと」
「……っ!! ……あぁ、そうだな」
急に興奮を冷まし、冷静にパン屋でパンと旅糧を買うと、荷車を押してノイエルヘ向かう。