八話
Eternal League of Nefia、通称Elona。あの名作フリーゲームを舞台に書かれた小説です。
※二次創作はフリーということで書かせていただいております。
elona作者様のサイト
http://ylvania.org/jp/elona
無事に戦利品を持ち帰った俺らは、また出会った洞窟で作戦会議をはじめる。
「なんか、この洞窟が拠点みたいになってるなぁ」
「そだね」
「まぁいい、とりあえず手に入れた魔法書は鈍足の魔法書だった」
「なるほど」
「なるほど、じゃない! 今からお前がこれを習得するんだよ」
「えっ」
なんか主従関係が半ば逆転してるなぁ、とも思いつつ、魔法書をリシェへ渡す。
「なんか難しそうなんだけど……」
「お前がこれを習得する間、俺は近くでモンスターの残骸集めをしておくからな」
「はーい」
「ちゃんとやるんだぞ」
完全に主従関係が逆転してることが可笑しいが、とりあえず俺はモンスターを借りにいく。
残骸を集める、というのも資金稼ぎの上で大事だが、一番の目的は魔力の強化だ。
基本的に、魔力は魔法を詠唱すればするほど高まる。
つまり、数をこなせばその分強くなる、ということ。
地道な道のりだが、積み重ねこそが大事なのだ。
「プチだらけだな」
まぁ街道沿いは人通りが多いため、モンスターはあまり姿を見せない。
盗賊団にだけ気を付けつつ、ひたすらプチを借る。
「まーたプチか、魔法の矢で……って、ん?」
そこにいたのは、一回り小さなプチ……そう、ポチだ。
危うく魔法の矢を放つところだった。
「なにしに来た?」
ポチはひょろっと体から伸びた突起をふりふりして、ご機嫌そうに跳ねてみせる。
「……こっちへこい、危ないからな」
俺の腰袋にポチを収納する。
やはりひょっこり顔を出すのがお気に入りらしいな。
流石にポチの前で同族を狩るのはやめておこうか。
帰路につくが、プチは完全に無視して進む。
そもそも、プチは普段は自分より弱いカタツムリや乞食しか襲わないものだから、この前の道を塞いできたプチがやたら後進的だったのだろうな。
「魔法習得したか?」
「まだ半分も読めてない……」
「やれやれだ」
必死に本を読むリシェに、俺は問いかけてみる。
「リシェの軽外套と服、見たところ霊布のようだけど、そんな高価なものなんでもってるんだ?」
「親が魔術師ギルドの上のランクの、いわばエリートでさ」
「つまり甘やかされてるんだな」
「お恥ずかしながら」
「お前が信仰してる神って、誰だったか」
「イツパロトル様だよ」
「……この前、イツパロトルの祭壇に近づこうとしたら頭痛がした」
「あ、あのとき?」
「そうだ、明らかに近づかない方がいい、といった感じだった」
あえて声が聞こえて、二度と私に近づくな、といわれたことは言わなかった。
「へぇ、なんかあったんかなぁ」
「イツパロトルを信仰してるのは、やはり魔術師を目指しているからか?」
「そうだよ」
「そうか」
杖を強く握りしめる。
恐らくだが、あの声はイツパロトルのものだろうと思う。
神様直々に声がかかるなんて、普通は考えられないが、俺の握る杖が、どうも神様ってレベルじゃないと手に入らないような、不思議な力と不気味な圧迫感を感じるのだ。
そして前の無詠唱魔法。
到底人間ごときが無詠唱で魔法を詠唱できるレベルだとは思わない。
魔法発動前に杖が光り輝いていたな。
恐らくは、この杖の力なんだろう。
「どうしたの?」
「……なんでもない、さっさと魔法習得しろ」
「はーい」
この魔法を習得してもらったら、また古書物を集めようか。