七話
Eternal League of Nefia、通称Elona。あの名作フリーゲームを舞台に書かれた小説です。
※二次創作はフリーということで書かせていただいております。
elona作者様のサイト
http://ylvania.org/jp/elona
休息を終え、といっても俺は寝ていないが、それは置いておいて。
とにかく休息を終えて五階層目に突入する。
四階層に足を踏み入れた時に感じた緊張感も、少しほぐれてはいたが、降りた瞬間に目の前に立ち塞がったブレイドが、慣れかけた緊張感をぐっと引き上げる。
両手に剣を持つ、機械兵隊。
斬りつけられた傷口からは血が止まらなくなるので、恐らくなんらかの魔法が付与されているのだろう。
俺らには少々格上のモンスターだ。
「やるしかない、か」
逃げようにも、既にブレイドの間合い。
下手に背中を向ければ斬りつけられておしまいだろう。
少しでも負傷させて、行動力を失わせてから逃げるか、倒しきるか。
その二択だろうが、どちらにせよ戦闘は回避できない。
「リシェ、離れて詠唱に専念しろ、俺が気を引く」
「でも、それじゃケイブが」
「お前にこいつの攻撃をしのぐほどの力量があるか?」
「……わかった」
といっても、リシェよりはあるだろうが、ブレイドに敵う力量が自分に備わっているとは到底思わない。
しかもリシェの詠唱に頼るにはかなりの不安がある。
だからこそ、元々リシェの魔法でブレイドを鎮めよう、とは思っていない。
リシェに低速の魔法の矢を放ってもらい、注意を引いたところで俺が詠唱すればなんとかなる、その可能性を狙うしかない。
だがそれには、俺の詠唱の速さが求められる。
……いけるかわからないが、やるしかない。
ブレイドは片方の剣を大きく振りかぶった。
上に振りかぶる、ということはそこから振り下ろす。
ブレイドの剣は振り下ろされるが、予想通りなので予め杖を横にして構えていたため、一太刀を杖で受ける。
凄まじい力がかかる。
両手で支えるのがやっとだ。
並大抵の素材でできた杖なら杖ごと斬り捨てられていただろうが、やはりこの杖は特別だ。
太刀を受けている場所が傷つくことも、削られることもなく形を保ち続けている。
ブレイドがもう片方の剣を横から振り切ろうとした瞬間、リシェの詠唱が完了する。
「また失敗した!!」
失敗、つまりは狙い通り遅い魔法の矢が放たれる。
ブレイドは二つの剣を一度上へ振り上げ、ばつ印をつくるようにして矢を防ぐ。
その刹那。
杖を両手で斜めに構え、詠唱をはじめる。
しかし、詠唱が終わりかけたその時。
ブレイドは矢を防ぎきり再び俺に剣を振るう。
「アイスボルト!!」
すんでのところで詠唱が完了した。
氷の矢が放たれ、ブレイドの右手を破壊すると共に、破損部をわずかに凍らせる。
だが、左手がまだ可動可能だ。
機械故か、痛みに悶えることもなく、左手の剣を振るう。
「……くっ」
とっさに回避し受け身をとるが、俺の右横腹にかすり傷がつく。
ビリっ、と痛みが流れ、かすり傷とは思えない程の出血が伴う。
話には聞いていたが、これほどまで血が出るとは。
再び詠唱を試みようとするが、体制を戻す内にブレイドは間合いを詰め、剣の届く距離まで迫る。
「わ、わわわっ!!」
リシェが驚き慌てた理由。
それは、状況を見た瞬間にわかった。
彼女が放った魔法の矢は、遅いながらも尋常じゃない数だったのだ。
魔力の、暴走が起きたのだ。
ブレイドは左手の剣を斜めに構え、急所を防ぐが、防ぎましたきれず、活動を止める。
「リシェ、このタイミングで魔力の暴走を引くとは……」
「びっくりしたけど、倒せてよかった」
「軽傷治癒のポーションをくれ、血が止まらない」
「そうだよね、そうだよね」
慌てながらもポーションを渡してくれた。
俺はごくりとポーションを飲み干し、仰向けに寝転がる。
「傷、大丈夫そう?」
「あぁ、ポーション飲んだし大丈夫だろう」
「よかった……」
「そんなことより、俺の足の先を見ろ」
リシェは俺の足先に視線を向けた。
そこには、帰還の巻物と彩られた宝箱が置いてあった。
そう、ブレイドがこのネフィアのボスだったのだ。
「宝箱だ! 見てくるね」
「あぁ」
「……凄い! お金いっぱいはいってるよ!」
「めぼしいアイテムはあるか」
「んーと、巻物と魔法書が一つずつあるだけかなぁ」
「……まぁレベルがレベルだからか、仕方ない」
「でも! これだけお金あればしばらく依頼をこなさずに済むよ!」
「よし、ひとまず目標達成……かな」
「だね!」
「あとは帰るだけだけど」
「けど?」
「帰り道に待ち伏せしてる冒険者がいないといいな」
帰るまでが遠足。
まさに、その通りだ。




