五話
Eternal League of Nefia、通称Elona。あの名作フリーゲームを舞台に書かれた小説です。
※二次創作はフリーということで書かせていただいております。
elona作者様のサイト
http://ylvania.org/jp/elona
「やっと、集まった!」
「全てお前が解読したわけではないがな」
「今はだいぶできるからいいの!」
古書物を指定されたポイント分集め、ルミエストにある魔術師ギルドへ向かう。
パルミア市街地から向かうので、そう時間はかからないはずだ。
しかし、そう簡単にはいかなかった。
「止まれ」
一人の大柄な男が行く手を阻む。
指示通り止まると、相手は要求を提示した。
「今もってるありったけの金と食料、置いてきな」
「置いていかないと言ったら?」
「殺して奪えばいいことだ」
すると、木々の裏から仲間であろう盗賊達が姿を見せる。
既に囲まれていたことに、今気づくが、もう遅い。
この人数差では、仮に実力が互角だとしても勝ち目はほぼないだろう。
ここはおとなしく渡すのが吉、か。
リシェの方へ目をやると、怯えて震えているのがわかる。
どうしよう、とでも言いたげな目でこちらに助けを求めるほどだ。
「わかった、それで命は助かるんだな」
「話が早くて助かるぜ」
盗賊団のボス的存在の男は、俺らに剣の切っ先を向け、抵抗されてもいいよう臨戦態勢で見つめてくる。
俺は荷車から手を離し、少し離れたリシェの隣で杖を置いた。
盗賊達は荷物をあらかた荒らし、金目のものと食料を盗むと、再び木々の間に消える。
なるほど、待ち伏せているのか。
だが不思議なのは、ボス的男が切っ先を向けたままなのだ。
「要求には答えた、見逃してほしい」
「生憎、俺らは人肉が好物でな」
「話が違う」
「そんな話、忘れちまったなぁ?」
「くっ、やるしかないか」
地面に置いた杖を手にとり、構えた瞬間。
右足に鋭い痛みが走り、がくりとひざまづく。
「お前らエウダーナの民か? 馬鹿だよなぁ、弓や魔法より銃火器の方が強ぇのによぉ」
「……イェルスの民か」
「ま、そーいうこったな、よしお前ら、女の方は傷つけずに捉えろ」
辺りを囲んでいる盗賊達がじりじりと迫ってくる。
ここまでか。
そう思った時だった。
杖の装飾の一つが白くまばゆい光を放ちはじめた。
なにも見えないほどに輝く光が辺りを包む。
そして光が輝きを失うにつれ、周囲の景色がさっきとまるで違うことに気づく。
「ここは」
「わたしたちが出会った洞窟だね」
リシェはまだ怯えているようだったが、同時に混乱しているようにもみえる。
そりゃそうだ、急に光に包まれて違う場所に転移しているのだから。
……転移?
「そうか、帰還の魔法だ」
「帰還の……魔法? でも、ケイブ詠唱してないよね?」
「詠唱は魔法を使う者の技量によって、省略したりできるのは知っているか?」
「まさか全部……?」
「多分、そうだ。全部省略した、としか考えられない」
「それって相当凄いことじゃ」
「あぁ、相当凄いことだ」
「信じられないよ……」
俺も信じられない。
だが、この過剰な装飾が施された杖。
これを持っている自分が、見習い魔術師とも思えないのだ。
「助かったんだ、今は置いておこう」
こくりとリシェは頷く。
集めた古書物などは荷車ごとなくなったので、しばらくはその辺に自生してる薬草や山菜、アピの実でしのぐしかないな。
まぁ、今は命が助かったことを喜ぶべきだけれど。




