四話
Eternal League of Nefia、通称Elona。あの名作フリーゲームを舞台に書かれた小説です。
※二次創作はフリーということで書かせていただいております。
elona作者様のサイト
http://ylvania.org/jp/elona
「パンも飽きたなぁ 」
「贅沢言えるほど金はないだろ」
「そうなんだけどさ」
ヴェルニースまでの輸送依頼を終えた後、パルミア市街地とルミエストを往復できて、かつ古書物が報酬として手に入る依頼をこなしリシェの魔術師ギルド合格への道を進む。
この数日でリシェはだいぶ古書物を解読できるようになってきた。
といっても、まだドール讃歌をある程度理解できるレベル、って感じだが。
それと、魔法店で魔法書もいくつか購入し、古書物とともに解読して新たな魔法、アイスボルトを覚えた。
リシェも覚えようと努力したが、未だ習得には至っていない。
現在、パルミア城下町で食料調達中だ。
「あ、ケイブって信仰してる神様だれ?」
「わからん」
「わたしはイツパロトル様信仰してるから、祭壇でお祈りしてくるね」
「俺も行こう」
祭壇のある教会へ向かうと、リシェと並んで歩いていたはずの俺は、なぜか見えない壁に遮られるかのように前へ進むのを拒まれた。
もちろん、眼前にはなにもないし、奥の景色がちゃんと見えている。
「どうしたの?」
「……先に行っててくれ、用事を思い出した」
「用事? まぁいいけど」
リシェは祭壇へと向かった。
なぜ俺はここから先へ進めないのだろうか考えていると、突然激しい頭痛が襲う。
片膝を地面につき、頭を抱える。
脈を打つような頭痛ではなく、ずっと同じ痛みの続く頭痛。
すると、ある声が聞こえ始めた。
「リトルフス、殺さなかっただけありがたいと思えよ、そして二度と私に顔を見せるなよ、いいな?」
「誰だ、俺はリトルフスという名なのか?」
「私は……いや、裏切り者に告げる言葉などないな、もう一度だけ言おう、二度と私に顔を見せるなよ」
「裏切り者? なんのことだ、俺は……」
「裏切り者、去るがいい」
ゾクッと背筋を伝う嫌な予感。
俺は怯えたようにその場を去ると、荒げた息を整え、胸に手をあてて心を落ち着けようとする。
頭痛は時間と共に和らいでいったが、胸の奥にさりげなく、それでいて存在感を放つ恐怖、いや、トラウマのようななにかが鎮座しているのを感じる。
なんだ、なにがあった?
とにかく、ここへはもう近づかない。
それだけを確かに心に誓った。
「終わったよ~」
リシェが祈りを終えて戻ってきた。
黒い長髪が風になびく姿は、どこか懐かしさのようなものを感じさせる。
リシェは俺に近づいた途端、驚いたように声をかける。
「汗凄いよ! どうしたの」
「……なんでもない、用は済んだか」
「うん、あ、そうだ、ケイブも誰か信仰するのはどう?」
「やめておく」
「そう? ならいいけど」
だいぶ冷静さを取り戻した。
手元にある古書物を確認すると、ヴォイニッチ写本が四つとドール讃歌が二つあるのがわかる。
まだ足りないな。
「もうしばらく依頼漬けの日々だな」
「そうみたいだね、頑張らないと」
気合いをいれるようにトントンとリシェは自分の胸を拳で軽く叩いてみせる。
急ぐことでもないとは思ったが、収入が依頼からだけだと、食費や税金を払うので精一杯だ、少しでも収入を増やさないとな、とも思う。
俺とリシェは、いつものように掲示板に貼り付けられた依頼を見に行くことにした。
古書物について
elonaの世界では古書物というアイテムがあり、現存する書物のタイトルが使われていたりします。しかし、古書物を一定数解読し、解読済みのものをたくさん納めるのが魔術師ギルドのノルマや入会条件となっています。ここはゲームシステムとしての部分なのでどうするか悩みました。というのも、同じ名前の古書物をいくつも解読して持っていく、ということが可能なのです。同じ名前なら内容も同じじゃん?となってしまうため、この小説では複数の巻が存在する、いわば断片的な、あるいは一枚のページの欠片という解釈で扱っていきます。