三話
Eternal League of Nefia、通称Elona。あの名作フリーゲームを舞台に書かれた小説です。
※二次創作はフリーということで書かせていただいております。
elona作者様のサイト
http://ylvania.org/jp/elona
3日あまりが経った。
プチやイークに襲われつつも、俺の魔法の矢で退け、なんとかヴェルニースへ辿り着く。
「輸送先は?」
「雑貨屋の店主さんだよ」
「となると街の西側かな」
「そーいうのは覚えてるのね」
「その言葉何回聞いたことか」
酒場を通り過ぎた辺りで、断末魔のような叫び声が聞こえた。
「ひっ!?」
リシェはひどく驚いているようで、一瞬なぜだかわからなかったが、すぐに理解した。
「リシェ、ヴェルニースは初めて?」
「うん、ずっとルミエストで暮らしてたから」
「ヴェルニースの酒場では吟遊詩人が歌を披露するんだが…… 」
「えっ、見に行きたいなぁ!」
「やめといた方がいい、客のなかに相当やばいやつがいる」
「やばいやつ?」
「いつもいるわけではないが、大体いるんだ、そいつは」
「どこがどうやばいのさ」
「演奏が気に食わないと、演奏主を殺すんだ、石ころでな」
「えっ」
「だからあそこで演奏する奴も見に行く奴も物好きばかりだよ」
「そ、そーなんだ……」
「結構知れてる情報だけどな……先を急ごう」
リシェは酒場の方向を信じられない、とでも言いたげな目で一瞥するが、歩みは止めない。
雑貨屋の前は少しばかり賑わっていたが、客の隙間から店主に話しかける。
「こんにちは、あなたがブラトムさんで間違いないですか?」
「いかにもそうですが」
「ルミエストからのお届けものです」
リシェは魔法書と引き換えに、報酬を手にした。
「報酬はなんだったんだ?」
「古書物とお金だよ!」
「なるほど、古書物か。それでこの依頼を受けたんだな」
「そういうこと」
「で、その古書物のタイトルは?」
「えーっと、あっ!!」
「まさか」
「ドール讃歌、だって」
「読めないのか」
「読めないよ!! どーしよー!!」
「貸せ」
古書物を半ば強引に手に取り、ページをめくる。
記憶がない、とばかり思っていたが、不思議とすらすら内容が頭にはいってきた。
やはり、自分のこと以外は記憶にあるみたいだな。
「時間があれば解読できるかもしれん」
「むむっ、記憶喪失さんに負けるとは」
「残念だったな」
「むぅー」
「今日は宿屋に泊まるんだろう? その間に解読しておく」
「でもそれじゃ試験に合格できないよ……」
「魔術師ギルドの入会だけなら解読できていれば問題ないだろう、もっともそこからさらに先を求めるなら意味はないが」
「ねぇ、わたしにも解読の仕方教えてよ」
「ただでは無理だ」
「洞窟でパンあげた借しがあるじゃん」
「……わかった、教えよう」
「やったね」
「その代わり、その借りはこれでチャラだ」
「わかった」
宿屋で古書物を共に解読しているときのこと。
ふと、リシェが俺に質問をなげかけた。
「ケイブって、記憶失う前は相当な腕のたつ魔術師だったんじゃない?」
「なぜそう思う?」
「わたしより魔法の詠唱が速くて正確だし、古書物もすらすら読むし、それに」
「それに?」
「ケイブの杖、なんか特別な感じがする」
様々な色の丸い玉が先端に埋め込まれた、洞窟で横にあった杖。
確かに、普通は長棒か、先端が丸くなった形の杖だし、装飾もあっても飾り程度だ。
だがこの杖は、過度な程に装飾が派手だ。
そして俺が杖を手にしたときの悪寒。
特別ななにかがあるのだろうか。
「なんだろうな、その記憶は持ち合わせていない」
「いつかわかるよ」
「だといいが」
夜が段々と更けはじめたが、俺とリシェは再び古書物の解読を始めた。




