十話
Eternal League of Nefia、通称Elona。あの名作フリーゲームを舞台に書かれた小説です。
※二次創作はフリーということで書かせていただいております。
elona作者様のサイト
http://ylvania.org/jp/elona
ノイエルヘ向かう道中。
険しい雪道を進みながら、俺の過去の話をリシェにした。
俺はかつて、魔術師ギルドの中でもかなり上の、重鎮クラスの存在だった。
そして後継者を見つけ、その座を譲るも、イツパロトルへの信仰を深め、ついにイツパロトルから直々に杖を賜った。
その名も、エレメンタルスタッフ。
元素の神らしい杖だ。
杖には派手な装飾が施されており、先端にはいくつもの丸い玉が埋め込まれているのだ。
この玉が元素それぞれと呼応しているため、どの魔法も最大限の力を引き出せるのだ。
そして俺には、愛を捧げた人物がいた。
その人物の名はケティア。
可憐で優しい女性だった。
ケティアはルルウィを信仰し、モンスターを借り、その肉や素材を売って生計をたてていた。
いつものようにネフィアへ潜ったケティアだったが、彼女の前に強大な敵が立ち塞がった。
一緒にネフィアへ潜っていた俺は、なにもできなかった。
俺ですら、歯が立たない敵だったのだ。
そして俺は、ルルウィの加護を受けているケティアに、イツパロトルの加護を追加で授けた。
禁忌に、触れた。
そして俺は、追放された。
黒かった神は白く染まり、持っていたものもすべ失い、眠りについていた――
「そうなんだ、まさかケイブがあの全てを統べる黒だったとは」
「ケイブじゃない、リトルフスだ」
「わたしの中ではケイブなの」
「まぁなんでもいい、とにかくノイエルまで向かわねば」
「ノイエルに、ケティアさんはいるの?」
「まだそこに住んでいれば、な」
「そう、いるといいね」
「本当に人がいいな、お前は」
「それほどでも」
にしし、とリシェが笑う。
まるでケティアのように。
早く、早く彼女の元へいかねば。
彼女もまた、神からの罰を受けているやもしれないから。
* * *
「ついた、ノイエルだ」
「へぇーこんなところなんだぁ」
「ケティアを探す」
「わかってるってば」
しかしケティアの家は、もうなかった。
絶望にうちひしがれ、歩いていると、見世物小屋が目に留まる。
なぜだか、興味というか、懐かしいような感情が芽生えるのだ。
見世物小屋には、火の巨人エボンが鎖に繋がれ、その横にどろどろとした人間をばらばらにして、ゴミの山にでも突き刺したかのような生物がいた。
「モイアー、といったか」
「いかにも、見世物小屋のモイアーとは俺のことだが」
「この生物は?」
「こいつが気になりますか、お目が高い」
モイアーの口から飛び出した言葉は、あまりに残酷なものだった。
「元々人間だったモノですよ、こいつは。なんでも神の力を授かりすぎて、許容量を越えて爆散して死んだ後、奇跡的に命を宿した人間の欠片でさぁ」
「神の力を……授かりすぎて?」
「そうそう、たまーに人の言葉で鳴くんよこれが」
「なんて、鳴くのだ」
「リトルフス、リトルフスって鳴くんすわ」
「……っ!!」
ケティアは、もう形を留めずに命だけ保っていた。
全て、俺のせいだ。
俺のせいだ。
俺のせいだ。
俺のせいだ。
俺はケティアを――
いや、ケティアだったはずのモノを強く抱き締め、自分の犯した罪の重さに押し潰されて、泣きわめいた。
これが、天罰か。