一話
Eternal League of Nefia、通称Elona。あの名作フリーゲームを舞台に書かれた小説です。
※二次創作はフリーということで書かせていただいております。
elona作者様のサイト
http://ylvania.org/jp/elona
「今日の夜営地はここね、全く……エーテルの風が吹くなんて、まぁ外じゃないだけましかな」
聞こえたその声に目を覚まし、軽い頭痛を覚える。
だが不思議と、なにかをしようという気は起きなかった。
なにも、わからないからだ。
記憶があるならば、事前になにをしていたか、や何を確認するかがわかる。
だが生憎、思い出そうにもなにも思い出せず、頭痛と少しばかりこの洞窟に吹き込むエーテルの風を肌に感じるばかりで、何をしたらいいのかさえわからない。
とりあえず立ち上がる。
差す光が人形のシークレットをつくっていたので、先程の声の主がこちらへ向かっていることはすぐわかった。
殺されるだろうか。
守るものも、失うものもわからない俺からしたら、どうでもいいことだが。
今の装備を確認してみる。
俺が寝転んでいたであろう場所の横にはボロボロの禍々しい気を放つ杖が。
着ているのは布の服だけで、右手の中指に金の指輪をつけている。
魔術、を使っていたのかな。
それも思い出せないな。
段々と人影は大きくなる。
が、こちら側……いわゆる、洞窟の奥側には光源がないので、顔や身なりはある程度しかわからない。
身長はやや高めで、相手も同じく杖を装備している、ということはわかった。
「まって、敵意はない」
怯えているようだった。
まぁそうか。
「大丈夫、襲う気はない」
少し強気にでて、態度を伺ってみる。
まぁ伺ったところで、下手にでてもなにかできるわけではないが。
「あなたもエーテルの風から逃げてきたの?」
「いや、気づいたらここにいた」
「白髪……エウダーナの民ではなさそう、魔術師なの?」
「なぜ、魔術師だと?」
「そこに、杖があるから」
「これか、これは……」
拾い上げた途端、悪寒がした。
奥底から身体を駆け巡るような、強い悪寒が。
「どうしたの?」
「なんでもない、そして俺は恐らく魔術師ではない」
「恐らく?」
「記憶がない、ここがどこで、俺が誰かさえもわからん」
「記憶が……それは好都合だわ」
殺される。
そう確信していたのだが、彼女が発した言葉はそれよりもむごいものだった。
「奴隷を買うには、お金が足りなくてね」
「俺を奴隷にする気か? 使い物にならないと思うが」
先程、守るものも失うものもないと言ったが、なぜか死に対する恐怖感が沸き上がってきて、必死に抵抗する。
「仲間になればなんでもいいの」
「どういうことだ?」
「奴隷でもペットでも、なんでもいいから仲間がほしかったんだ」
「なぜ?」
「鍛えてるとはいえ、女手一つで旅糧を運ぶのは体力がもたないからね」
「抵抗する、としたらどうする」
「仕方ないから、魔法であなたを殺す……かな」
「わかった、仲間になる」
「やった! これで少しは楽になるかな」
「……そんなあっさり信じるのか? たった今顔を合わせた見知らぬ人間だぞ」
「なんか、あなたはいい人そうだから」
「裏切ってお前を襲い、荷物を奪う可能性もあるが」
「記憶がない、なら魔法も使えないでしょ、私の方が力量は上だから、いつでもあなたを殺せる」
「そうか」
彼女は右手を差し出した。
俺は右手でその手を握る。
「私はリシェ、あなたは?」
「記憶がないせいで、自分の名すらわからん」
「あー……じゃあケイブ、って呼んでいいかな」
「洞窟って意味か、安直だな」
「しょうがないでしょ」
「わかった、俺は今日からケイブだ」
「さて、外はエーテルの風が吹いてるし、止むまで動けないわね……幸い二人分の食事はある」
「食事を分けてくれるのか?」
「仲間でしょ、当然」
「ずいぶんと人がいいんだな」
「ここで恩を売っておけば、あとで返してもらえるから、なんてね」
「恩を返してもらえると思っているのか、やはり人が良すぎるな」
「そうかな?」
「あぁ、それでよく生きてこれたなとさえ思うほどにな」
「逆にそれで生きてきたんだけどね」
「そうか」
彼女はにっと笑うと、荷車からパンを二つほど持ってきた。
どうぞ、と一つ差し出されたので、受け取り口にする。
毒が入っているかも、と一瞬思ったが、ここまで人がいいと、不思議と信じきってしまっていた。
ぱさぱさとした、乾いたパンだった。
エーテルの風
ゲーム内でも大きな要素の一つ。エーテル病を促進させる天候で、この風が吹いているときはフィールド上のモンスターも強いのが多いです。
エーテル病
なにもせずとも進行していく病で、進行につれて様々な症状がでます。羽が生えたり、重力を発生させたり……。




