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9話 ダブルオー要員とかいうやつですか?

 ショックで疲れた様子のエスタークさんに連れられて、宿泊施設のようなところにやって来た。

 お城の兵士たちの訓練場の側に作られたそこは、私のような契約者が来たときにだけ使われる部屋だそうだ。

 簡素な作りで、宿というよりは宿直室みたいな感じ。

 私の部屋の両隣には、あと2人、私と同じような契約者が泊まっていた。

 2人は私よりも少し前に契約を結んで、こちらで訓練を始めていたそうだ。

 仲間が増えて嬉しい、と大歓迎され、同じ日本人ということが分かって、私もちょっと安心した。


 3人並んだ部屋の、道を挟んだ真ん前に広い会議室が一室。

 フリースペースぽい部屋のソファーに座って、ここでの私の仕事をエスタークさんに教えてもらった。


「つまり、今いるここが魔族の国だけど、人間の国も多数あって、お互いに地球の国々と同じように、協力しあったり、牽制しあったり、時には戦争しあったりしてると。で、魔族の国は、人間と異なる種族ということで仲間はずれにされたり、変な言い掛かりをつけられたりすることが多い、と。これで合ってる?」

 エスタークさんの話を、端折って言ってみる。

 そんな私を、エスタークさんは残念な人を見るような目で見ていた。

 何か間違えてた?


「いや、簡単に纏めたらそうだけど・・・俺は、今の話で、それぞれの国の政治的な情勢とか立ち位置とかどこの国とどこの国が仲が良いとか悪いとか、そういう話もしたよな?それはどこにいったんだ?」

 大事な事なのにもう忘れたんですか?って顔で睨むのは止めて欲しい。

 困った顔を向けてみても睨むので、えへ・・・と笑ってみたら、もっと睨んできた。

 そんな事言っても、政治とか国と国との関係とか、一度にわーーーっと言われても覚えられる訳ないじゃん。

 エスタークさんは、はぁぁぁぁっと深くため息を吐いた。

「分った。よぉく分かった。国の情勢とかはお前が覚えこめるまで何度でも俺が教えるし、そのための時間もとるからな。」

 とうとうお前よばわりですか。そうですか。

 抗議したいけど、こちらの分が悪すぎるので、黙っておく。

 咎めても無駄だとでも思ったのか、エスタークさんは気を取り直して、説明を続けた。


「契約者にしてもらいたいのは、人間の国に入り込んで、情報を集めることだ。」

「??スパイってこと?」

「スパイ?」

 エスタークさんは、スパイという単語が分からないらしい。

 ふいに目を瞑ると、こめかみをトントンと軽く叩いて、目を開いた。

「スパイでもいいが、『草』の方が意味は近いかな。」

 エスタークさんの頭の中には、Google様が住んでるようだ。

 すぐに検索してみせるなんて、便利な機能だね?

「草?」


 草とは、忍者用語で、国とか街に一般人のように入り込んで、普通に生活をしながら情報を集めて、大事な情報を雇い主に知らせたり、戦争なんかが起きたときに、今まで味方と思わせておいたところを裏切って、雇い主のために動いたりするものらしい。

(*注・・・エスタークさんが話した事を、ちょこの頭で咀嚼して言ってる事なので、間違ってるとか言われてもエスタークさんに罪はありません。)


「まあ、今は戦争中とか戦争前の状態ではないし、魔族へのちょっかいもたいしたレベルのものじゃあない。それでも、いつそういう事になるか分からないから、そのための情報収集だ。」

 なるほど。

 じゃあ、私たちは国々を回って情報を集めるのが仕事という事ですね?

「情報の集め方は、チームそれぞれに任せてある。」

「それぞれ?」

「ああ、ちょこたち以外にも、契約者のチームが大体10程ある。商人になって各国を回るチームもいるし、周囲の国に喧嘩を吹っ掛けるのが趣味という国には、常駐してそこで商売をしてるチームもいるな。ポピュラーなのは、冒険者になるやつらだな。」

 冒険者!

 ライトノベルの異世界ものに出てくるやつだよね?

 

 なんでも、エスタークさんによると、冒険者になって冒険者ギルドに登録すれば、世界中の情報もギルド経由で集まりやすいし、盗賊や魔物の討伐とかの依頼をこなしていれば、戦闘スキルも上がっていくので、一石二鳥との事だった。

「登録して最初のうちは、薬草採取とかしながら、こちらの世界に慣れていって欲しい。少しずつ弱い魔物との戦闘に慣れて、徐々に強い魔物との戦闘まで勝てるようになったら理想だな。」

 まだ冒険者になるなんて一言も言ってないのに、エスタークさんは決まっている事のように話す。

 戦闘とかやったこともない事言われても、怖いという感情しか出てこないんだけど?

「あのー、まだ冒険者になるなんて決めてないんだけど・・・?」

「神速や神技のギフトをもらっておいて、冒険者にならないだって?」

 エスタークさんは、意外そうな表情でこちらを見る。

「ちょこは知らないだろうが、他2人の特別ギフトも戦闘に威力を発揮する当たりギフトだった。今、情勢は平和な方に傾いているが、いざ戦争となった時に、戦える者が少しでも多いことは魔族にとって大事だ。即ち、ちょこのチームには冒険者になることを勧める。」

 

 勧めるとか言われても・・・・・・・・

 職業については、3人で話し合って決めます、と返しておいた。

「明後日から戦闘訓練を始めるからな。その時に、スキルの使い方とかも説明するから。今日明日はゆっくり体を休めるのと、両隣の二人と親睦でも深めておくように。」

「あ、出来れば一度家に帰りたいんだけど。娘と話したいし。」

 娘と会う、これ大事。

 突然ですが、あなたの母は出稼ぎに出ることになりました、と一言でも言っとかないと悪い気がする。

「その顔でか?」

 あ・・・・・・・・・

 

 どうしよ~~~~~~~~~~!

 こんな皺無しシミ無しの顔じゃあ、娘に会えないじゃん!!

 朝、鏡を見たけど、どう見ても17,8・・・

 8憶当てたお金で整形しまくってきました?

 お肌もプリプリにしてもらいました?

 そんな言い訳、娘は信じるだろうか。

 あんた誰?って言われそう・・・・・


「ついでに言っておくが、お前のその顔、朝あった時よりだいぶ美化が進んでるぞ。俺とのリンクが深いところまで進んだからだと思うが。」

 そこまで話すと、リンク=嫌な事、を思い出したようで、エスタークさんは顔をしかめた。

「!!」

 声も出ない。

 そういえば、こちらの世界に来てから鏡を見ていなかったな。

 覗き込まなくても、目の端にも鏡は見かけなかった気がする。

 ・・・後で見てみよう。

 もしや、尚更娘に会えない仕様になってる?


「それと、こちらに来てすぐに言ったと思うが、ちょこの世界とこちらの世界では、時間の進み方が違う。娘はまだ授業中だ。会えるようになるのは、1ヶ月くらい後だ。それまでに娘に会えるように顔の事は手を打っておくから、まあ心配するな。」

 うう・・・お手数かけます。


 話し合いは終わり、私を部屋に送り届けると(目の前の部屋だけど)、エスタークさんは、じゃあな、と帰っていった。

 

 夕飯は、両隣のチームメンバー誘って食堂に行こう。

 そこで、ここでの生活とか色々聞かないとだ。

 うまくやっていけるのかなぁ・・・


 

 

 



ちょこの考えでは、エスタークさんの頭の中にgoogle様がいる事になっていますが、もちろんそんな事はなく、エスタークさんの自室にあるちょこの世界のネットとつなげたPCを魔力で遠隔操作して調べたんですよ。誰か、ちょこに教えてやって下さい(^o^;

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