8話 女王様(超美人)に会った
広い広い謁見の間。
(おお~~~~~~)
西洋のお城のようなつくりに、心の中で感嘆の声を出しながら前に進む。
一番奥に、一際高く作られた場所が見えた。
ステージの様なその周りには、豪奢な布が幾重にもカーテンの様にかけられていて、そこがこの部屋で一番重要なところと主張してる。
遠目に、玉座が見える。
玉座の足元には、槍を持った兵士たち。端の方に側仕えの様な女性たちも数人見える。
うんうん、テンプレだね。
その辺りに、他にもなんだかゴチャゴチャいる感じがする。
そして、玉座には女王様が・・・
「あれ?」
いなかった。
キョロキョロと周囲を見回す。
いない・・・もしかして、怒って自室に帰っちゃったとか?
慌ててエスタークさんを見るが、エスタークさんの視線は玉座より下。
足元のゴチャゴチャといる方を見据えて慌てた様子もなく、張りのある声で叫んだ。
「女王様、最後の契約者を連れて参りました。お目通りをお願い致します。」
と、玉座の足元のゴチャゴチャとした中から、女性が一人・・・
人混みだと思ってたけど、よく見れば小さめなモンスターの集まりぽい。
モンスターの集まりに埋もれてた女性が、すっと立ち上がってこちらを向いた。
年の頃は30前後?
銀色のふわりとした髪の上にティアラ。体のラインがくっきりと出るドレスを着た女王様は、エスタークさんの言う通り、確かに美しかった。
いや、これは何と言うか・・・頬はうっすらピンクで、明るく優しそうなその表情が、なんだろう・・・その・・・
ずっと見ていたい?
女性の私にそう思わせるくらいだから、男の人にはたまらんだろうなぁ、と言うくらいの、超美人さんだった。
なるほど、さっきエスタークさんが力を込めて、敬愛してるとか言うはずだ。(いや、容姿だけじゃなくて、行動も含め全てを敬愛してるってのは分かってるよ?うんうん)
「遅いぞ、エスターク。わらわをどれだけ待たせれば気がすむのじゃ。」
と、ドスをきかせた愛らしい声が響いた。
え?
幻聴かな?あれ?
そっと女王様の方を仰ぎ見ると、眉間にうっすらと皺。
表情は・・・うん、怒ってるね。
慌てて下を見る。
綺麗な人が怒ると・・・怖い。
黙っていよう・・・幸い、さっきエスタークさんに、最低限の返事だけして後は黙ってろって言われたし。
「申し訳ございません。契約内容の確認に少々手間取りましたが、先ほど完了いたしました。」
エスタークさんは焦った声でそう言うと、後ろで控えていた私を、女王様の前にズイと押し出した。
「三人目の契約者、ちょこでございます。」
いきなり女王様の前に押し出された私は、慌てて挨拶をする。
「ちょ、ちょこでございます。よろしくお願い致します。」
初対面の第一印象は大事だ。
にこっと笑・・・多分、ひきつった笑顔を向けたと思う。
女王様の視線が、じっと私を見続ける。
居心地悪・・・見られているから目を反らすこともできず固まっていると、女王様はふいに笑顔を作り、口を開いた。
「ちょこ。そんなに固くなるな。そなたを歓迎する。そして、我ら魔族との契約を承諾してくれたことに対し感謝する。」
超美人が華やかな笑顔でそう言った。
歓迎?感謝?
女王様にそう言われて、ちょっと嬉しい。
「詳しい内容は、エスタークから聞いておろうから割愛する。」
そういえば、ここで何するとか細かいこと、聞いてない気がする。
ちらりとエスタークさんを見ると、焦った顔でこちらを凝視してる。
ああ、はい・・・黙ってろ、って事ですね?
女王様が怖いから、黙ってますけどね?
「基本ギフトを貰っておると思うが、今から特別ギフトを渡す。」
こちらの世界にスキル持ちは多くいるが、その中でも、特別ギフトは超レアスキルが貰えるそうだ。
その人との相性などによって、貰えるスキルも変わってくるので、何が貰えるのかは女王様にも分からないが、きっと良いものであろう、と笑顔で言われた。
女王様の合図で、側仕えの女性たちがワゴンを押して、何かを持ってきた。
私の背丈より少し低い細長い形の箱だった。
上半分が透明になっていて、その中に、透明の丸い球がいくつも入っている。下半分には、回したら良さそうなハンドルと、何かが出てきそうな受け口。
・・・・・・・・・・
「これ、ガ、むっ!!」
ガチャですよね?
と言おうとした私の口を手で塞いで、エスタークさんが耳元で囁いた。
そういえば、黙っとけって言われてたの忘れてたわ。
「趣味だから。」
「は?」
「女王様の趣味だから。黙ってそのハンドルを回せ。ガチャに見えても、その中からギフトが出てくるのには変わりないから。文句を言わずに回せ。」
・・・・・・まあ、うん。貰えるものに文句はないよ。
しかし、魔族にもガチャとかいう概念があるってのが驚きだね。
ガチャもどきのハンドルを回すと、透明の球が3個、コロン、コロン、コロン、と出てきた。
球を触る。
それぞれの球が、触ると同時に薄っすらと光りながら、文字を浮き出させた。
神速(レベル1)
神技(レベル1)
神命(レベル1)
「ふむ。その3つが出たか。その3つのスキルは、そなたが己を鍛え、努力することで成長する。成長するためのサポートもこちらで用意しておる。細かい事はエスタークに聞け。」
お任せ下さい、とエスタークさんが頭を下げる。
「十分にレベルを上げ、我らの役に立てるよう、精進するようにな。」
そこまで話すと、女王様は手をひらひらと振って、向こうへ行け、というような仕草をした。
「それでは、失礼致します。」
退出しようとするエスタークさんに誘導されて、一緒に謁見の間の出入り口に向かう。
「ああ、それとな。」
女王様の声に振り返る。
「そちらのそのリンク、わらわでも解けない程しっかりと繋がっておるぞ。まあ、運が悪かったと諦めるのじゃな。」
女王様がにやっと笑って言う。
やっぱり分かってたみたいだ。
怒っている風じゃないけど・・・面白がってる様に見える。
エスタークさんを見ると、女王様の方を向いて、力いっぱい固まっていた。