7話 説明を求める!
おーーーい!エスタークさーーーん!
どうなってるのか説明してよーー!
・・・・・・・・・・・
声をかけても返事はない。
いつまでも固まってこっちに戻ってこないエスタークさんを後目に、私はもう一度ステータスを見た。
名前 ちょこ
種族 人間
性別 女
職業 ?
レベル 1
HP 128 (± 8985 )
MP 98 (± 7612 )
攻撃力 104 (± 7014 )
防御力 119 (± 9899 )
魔力 101 (± 8670 )
素早さ 113 (± 7833 )
器用さ 108 (± 4621 )
知性 99 (± 3240 )
魅力 156 (± 8199 )
属性 火2(10) 水2(9) 風3(10) 氷1(8) 光3(5) 聖5(8)
スキル 言語 アイテムボックス 鑑定
固有スキル リンク
この、固有スキル リンク、って、さっきの話に出てこなかった気がするな。
「ねえ、エスタークさん。この『 固有スキル リンク 』って何?この説明はまだ聞いてない気がするんだけど。」
固まったまま動かないエスタークさんに聞いてみる。
固まりすぎて聞いてないかもしれないけど、自分でこちらの世界に呼んでおいて、こんな放置プレイはダメダメだよね?
「リンク・・・?」
いつの間にか石化が解けたらしいエスタークさんが呟いた。ちゃんと聞こえていたらしい。
「ああっ!そうか!!」
いきなりの大声に、体がビクッ!となる。
心臓に悪いから止めて欲しい。
「何がそうかなの?説明が欲しいんだけど?」
エスタークさんは、困ったような顔でこちらを見る。
「原因はちょこの3つ目の願いだ!健康と美肌のために俺のを分けたつもりだったが、なぜかリンクで繋がって、俺と全てのスキルを共有してる形になってる。」
ふむふむ。
で?
「このまま繋がってるのはマズイ。女王様にばれたら、大目玉を食うだろう。そもそも、契約者と魔族が繋がったなんて話、聞いたことが無い。・・・・・よし、話は簡単だ。今すぐリンクを切ればいい。」
そう言うと、エスタークさんは私をじっと見つめる。
何かやってる?・・・
多分、リンクを切るとかいう作業をしてるんだろうけど、何も言わずにじーっと見つめられて、すごく居心地が悪い。
バシッ!!
エスタークさんと私の間に、いきなり火花が弾けた。
少し焦げた匂いがする。
私も驚いたが、エスタークさんはもっと驚いたらしく、目を見張ってしばらく硬直した。
表情は、どう見てもリンクを切る作業が成功したようには見えない。
さっき大声で叫んで固まったエスタークさんを見た時は、今まで向こう主導で話が進んで、振り回されてる感が抜けなかった私からしたら、ちょっといい気味とか思ってしまったが・・・
「大丈夫?」
いくらなんでも、ここまで困った様子の人(魔族だけど)を前に、いい気味という思いはどこかに行ってしまっていた。
「これは・・・ダメだ。」
「ダメ?」
エスタークさんは静かに頷くと、ダメな理由を説明してくれた。
「契約の確認の時に、魔族の契約は覆せないと話したが、それはこちら側にとっても同じだ。契約はちょこを縛るのと同時に、ちょこと契約した俺の事も縛ってる。報酬で渡した健康と美肌のために、リンクになった今の現状は、変えられない。今、どうにかリンクが切れないかやってみたが、どうにもならなかった。」
そこまで話すと、フラフラとさっきまで座っていたソファーに戻り、座り込んで頭を抱えた。
うーーーん。
大変そうだけど。
何がそこまで大変なのかよく分かってないけど。
どうにもしてやれずに困った私は、おろおろとエスタークさんを見つめ続け、そこにドアをノックする音が聞こえた。
エスタークさんの返事に入ってきたのは、最初の部屋で会ったドウムさんだった。
ドウムさんはこの部屋での一大事に気づくはずもなく、エスタークさんに一礼。
「エスターク様。女王様がエスターク様の事をお待ちですが、どう致しましょう。待たされている事を少しお怒りの様ですが・・・」
エスタークさんは、とび跳ねる様に立ち上がった。
表情は・・・焦っているな。
女王様、どんだけ怖いんだろう・・・
「う・・・分かった。ちょっと確認が長引いたが、すぐに行きますと女王様に伝えてくれ。」
分かりました、と優雅に立ち去ろうとするドウムさんを、押し出す様にして扉を閉めると、私に最終確認とやらを言ってきた。
曰く、今から女王様の前に連れていく。
紹介その他はエスタークさんがするから、聞かれた事を必要最低限答えるだけで、あとは黙っていて欲しい、だそうだ。
リンクの事は?
「リンクの事は・・・黙ってろ。・・・って、あの女王様の事だから、すぐにバレる気がするが・・・。とりあえずは黙っててくれ。様子を見ながら、話した方が良い様なら俺から話す。」
なんでも女王様は、さすがに一国を統べる方らしく戦闘も魔法も超一流。
美しく、賢く、政もそつなくこなす素晴らしい女性らしい。
「俺たち魔族のものは、女王様の事を敬愛している。俺たちの統率者が女王様であることを誇りに思う。」
女王様と会うため、謁見の間に向かいながらそう話すエスタークさんは、とても誇らしそうだ。
力が入っているからか、少し声が大きいよ?
そんなに素敵な女性なら、今から会えるのが楽しみだ。
「でもさ、そんなになんでも出来る女王様って、もしかして周りに厳しかったりしない?」
さっきもドウムさんに、女王様が少し怒ってるって言われて、エスタークさん焦ってたよね?
並んで歩いていたエスタークさんは、驚いたような表情でこちらを見る。
「何を言う!女王様はとても優しい方だぞ。厳しいときは厳しいが、それはこちらに非がある時だけだ。さっきの焦りは・・・こちらに非があるから焦ったが・・・。基本、俺たち魔族にはとても優しい。それは、会ってみればすぐに分かることだ。」
そこまで話すと、エスタークさんはとても大きな扉の前でピタリと止まった。
艶々と良い色で輝く木の扉は、とても丁寧に手入れがされているようで、このお城の豊かさを象徴しているようだ。
右に曲がり左に曲がり、方向音痴な私には、とても大きな建物の中を随分歩いたという印象しかなかったけれど、やっと着いたようだ。(あとで聞いたら、建物は『我らが女王様が住むに相応しくこの世界でも一二を争うほどのお城』だそうだ)
「入るぞ。」
エスタークさんは私にそう言うと、扉の両脇に立つ石像にちょっと挨拶をしてから、重そうな扉を押した。