10話 仕事の後の麦酒は美味しい
あけまして おめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
つたない文章ですが、よければ読んでやって下さいませ。
「「「かんぱ~~~~~い!」」」
三人の少女たちの声が響く。
もちろん、私もその中の一人。
麦酒の入った木のコップを打ち合わせて、一気に飲み干す。
あまり冷たくはないけれど、一仕事終えた後の麦酒は美味しいよね。
仕事と言っても、異世界に連れて来られたり、女王様に会ったり、いろんな説明をされただけだけど。
いや、それが問題だよね。
今日は本当に疲れた。
食事の時に一杯飲んだって、バチは当たらないと思う。
私より先にこちらの世界に来て、先に戦闘訓練まで始めているという少女二人は尚更だろう。
美味しそうに麦酒を飲んでいる。
4席の丸テーブルの、私の目の前に座っている少女が、アイズ。
少女と言っても見た目17,8の私よりは、少し年上に見える。
細身で背が高く、スラっとしてる。
顔も整った顔の美人で、例えて言うならタカラ〇カ系?
南国風の濃い顔立ちに、ショートヘアーがよく似合っていた。
「訓練はどんな感じかだって?うーーーん・・・・・。一言で言えばきついよ。長い時間しごかれるし。それでもギフトのお陰もあってか、日に日に上達してるのが分かるから、嫌じゃないかな。」
食事に誘おうとしてた私が、部屋の前でどう誘おうかと固まっているとドアが開き、
「おー、新入りさん。ちょこちゃんだっけか。今から食事に行くんだけど、一緒に行かない?」
と誘ってくれたので、今私の方から誘いに来たところだったと言うと
「なんだ、考えてる事一緒じゃないか。いいねー。」
と、背中をバシバシ叩き、そのまま肩を組んできたのがアイズさんだった。
そのまま今度は二人で反対側の部屋に行き、リィンさんを誘ってこの食堂兼酒場に来たんだけど・・・
「ま、これで教官がもうちょっと良い男だったら申し分ないんだけど、それは贅沢っていうものだよねー。」
大声でそう言うと、あっはっは、と笑いながらアイズさんは麦酒を呷った。
ふと周りを見ると、食事中の兵士たちがチラチラとこちらを見ている。
兵士という職業柄、男女の比率は極端に男性が多そうだ。
女子はただでさえ珍しいのに、アイズさんたちの容姿を考えると、絶え間なく兵士たちが見てくるのは仕方ないだろう。
けれど、その目はなんだか残念そうだった。
うん・・・性格は良さそうだけど、これだけの美人なのに、いろいろ残念だよね。
「アイズ、せっかく教えてくださってる教官にその言い様はいかがかと思うわ。とても丁寧で親切にしてくださってるのに。」
アイズさんの右隣り、私の左に座るリィンさんが言う。
窘めているようだけど、その声は可愛らしく優しく聞こえる。
年は・・・17,8?
私と同じくらいかな。
肩までの髪がふわふわと揺れて、アイズさんの美しさとはまた違う、優しげで愛らしい顔立ちの少女だった。
最初に会ったときもそうだったけど、今もずっとニコニコと笑っている。幸せそうだなぁ、というのが率直な感想だ。
で、その幸せそうなリィンさん。
10杯目の麦酒を空にして、そっとコップをテーブルに置くと
「すみませーん、麦酒おかわりお願いします。」
と給仕さんに手を上げて、お願いしていた。
周りの兵士さんたちが、そっとため息を吐いている。
もしかして、リィンさんも残念認定されてる?
そして、兵士の幾人かは私のこともチラチラ見てる。
その目は何かを訴えてるように見えるけど・・・
いや、今日初めて会った二人に、皆に残念がられてますよ、少しどうにかした方がいいですよ、なんて言えないし。
「リィン、そのくらいにしとかないと、またエスタークさんに怒られるぞ。いくら食べたいだけ食べても無料っていっても飲みすぎだ、ってね。」
アイズさんはそう言いながら、リィンさんの肩の向こう側に何か見つけたような視線を送った。
「ほら、噂をすれば・・・」
確かに、食堂の入り口に丁度エスタークさんが入ってきたところだった。
誰かを探しているように視線をさまよわせている。
私たちを探してる?
アイズさんもそう思ったらしく、エスタークさんに向けてひらひらと手を振って見せると、それに気づいたエスタークさんが、こちらに近づいて来た。
「お前たち、ここにいたのか。」
「新しいチームのメンバーとして、親睦を深めてたんですよ。偉いでしょう?」
褒めてください、と自慢そうに言うアイズさんに、リィンさんも私もうんうんと頷いて賛同する。
エスタークさんは、そんな私たちを少し嬉しそうに見回しながら、テーブルの上に箱を置いた。
箱と言っても、宝石を入れる箱のようなビロード張りのそれは、とても豪華だ。
両手で包んでも手に余りそうな大きさで、宝石を入れるには少し大きすぎる気もする。
「「「???」」」
の視線で三人が見つめる。
「これは?」
「これは、女王様からだ。女王様とお前たちを繋ぐ連絡係と思ってもらっていい。」
そう言いながらエスタークさんが箱を開ける。
中にはフワフワの小さなベッドが入れてあって、そのベッドの上には、小さな女の子が寝ていた。
・・・・・背中に羽がついている。
「女王様お気に入りのシルフだ。女王様はテイマーというわけでもないんだが、こういう妖精とか魔物とかに好かれる体質で、いつもこれらに囲まれて過ごされている。」
そういえば、謁見の間で会った時も、小さい何かの集団に囲まれてたような気がする。
「で、だな。女王様は、これらと離れていても意志の伝達を行える。どんなに遠く離れていてもな。そこで、一チームに一体ずつ、女王様との連絡ツールとして、これらを付き添わすことにしている。」
もちろん、妖精や魔物の意志も尊重して、私たちのことをその妖精や魔物が気に入らなければ、別の妖精や魔物と交代ということもあるそうだ。
「シルフというのは気難しくて頑固なところがあって扱いにくい。能力は高いんだけどな。それでもこのシルフを連れてきたのは、女王様からこの子が良いだろうという指名があったからなんだが・・・」
ちらりと寝ているシルフを見て、エスタークさんはしまった、という顔を一瞬した。
何がしまったなんだろう?
「まあ、お互いに気に入らなければ交代すればいいし、もしかして上手く気が合えば上等だ。お試しのつもりで付き合ってみてくれ。」
慌てた口調でそう言うと、エスタークさんは立ち上がってこの場から立ち去ろうとした。
いや、まだこの子の紹介がちゃんと終わってないし。
この子を起こして、きちんと名前とか紹介してよ。
そう言おうとしたところで、声が聞こえてきた。
『誰が気難しくて頑固ですって?!』




