ナルヴィ学校に行く
翌日、ナルヴィが学校に向かうが慣れない体を悔やむ。
「全くなんて動きにくい体なんだ」
そこに安岡をいつもいじめていた高本義之が近づいてきた。
「安岡、最近お前が学校休んでいたから金に困っているんだ。少し貸してくんないかな。」「おまえ、この男に殺したいと強く思われているぞ。まあ、すこし相手をしてやるか。」「ふざけるな、訳のわからないこと言っていないで金を出せ。」といきなり殴りかかってきた。しかし、ナルヴィに取っては安岡の体に乗り移っていてもスローモーションみたいなもの。難なくよけ、転んだふりをしながら腹に肘打ちをする。「ウギャー」高本は激しい痛みでのたうち回る。そこに佐久間さくらが通りかかる。
「ナルヴィくん、私は暴力をする人嫌いよ。」
「そう言うと思っていたよ。殴ったのをよけたら、たまたまこいつにぶつかっただけだよ。」
「まあ、今回はそういうことにしておくわ。この人も少しは懲りるかしらね。でも、私は悪いことする人は嫌いよ」
「堕天使って言うのはルシファーなんかがいるけど、おれは堕悪魔になっちまうなあ。」
「でも、本気で俺に惚れてもらうぜ。」
「ええ、頑張ってね。おそらく、あなたは私の心をある程度は読めるだろうから嘘はつけないでしょ。」
「ああ、いまはせいぜい友達ぐらいにしか見ていないよな。堕としがいのある女だ。」
そのとき、高本が起き上がった。
「安岡、何してくれるんだい。」
ナルヴィが安岡に何か言いかけようとしているのをさくらがわって入った。
「懲りない人だね。高本くん、私が相手してあげるわ。竹刀がなくてもあなたには負けないわよ。」
「くそ~。」高本は一目散に逃げていった。
「ほんと弱いくせに、弱いものいじめをしているどうしようもないやつ。」
さくらが吐き捨てるように言った後
ナルヴィの方に振り返って
「それじゃあ、ナルヴィくん私は友達と登校するからまた教室でね。」
さくらは近くにいた友達と並んで学校に向かった。
「まったく、俺に話しかけてくるやつはさくらだけか。ほんとに友達もいないようだな。」
ナルヴィはあきれかえっていた。それに、学校の勉強も少し不安に思えた。昨日のうちに教科書や参考書は少し目を通したがどこまで通用するかわからない。悪魔は人間と契約を交わすことがあるので人間の言葉を理解できるししゃべれる。一通りの人間の常識もわかっている。しかし、高校でやっているようなことがどこまでできるか悪魔といえども不安になっていた。
ナルヴィが教室に入っても、彼に話しかける人はいない。それどころか、ひそひそ声で安岡のことを話しているのが聞こえる。
「珍しく学校に来たけど、相変わらず暗いやつだよな」
「学校やめたんじゃなかったんだ」
などなど、この男をモテ男にするのがいかに大変かわかる。まあ、本気で悪魔を召喚して悪魔と契約しようなんてやつだけある。クラスのほとんどの人から嫌われているのが現実だった。
ナルヴィは今の状況では自分から話しかけてもクラスの中には入れないだろうと感じた。
とりあえず様子を見るしかないと判断した。
1校時のチャイムが鳴る。1校時は英語の授業、教えるのは三島祐子。どうやら、この先生は安岡を嫌っているらしく、安岡に当てては嫌みをねちねち言っている。
「では、安岡くん35ページの英文を読んでください。」
(この教師、安岡が読めないことを知っていてあててやがるな。ざんねんだな、悪魔はどんな人間とも話ができる。英語だっでアメリカ人よりできるぜ。)
「I have got a nice presennt for you. ・・・・・・.」
とても流ちょうな英語が響き渡る。
「・・・・・・」
三島先生は口をあんぐり開け、クラスメイトは驚き授業中にもかかわらずざわついた。
「おい、マジで祐子先生より美味い英語じゃん!」
「先生って、英語読むのへたなんじゃない !!」
クラスが収集つかなくなったとき、
「先生、読み終わったけどまだ読むの?」
ナルヴィは安岡の口調で答えた。
「え、ああ、ありがとう。」
明らかに動揺して落ち着かない授業になっている。
三島先生は、いつもなら安岡にぶつけている怒りをざわついている生徒に向けた。
「うるさい、授業中ですよ。静かにしなさい!!」
重苦しい空気の中、授業は進んでいった。
1校時の授業が終わった後、さくらが話しかけてきた。
「ナルヴィくん、英語はとても上手なのね。感心したわ!」
「おれは、あらゆる世界のすべての言葉を話せる。当然なことだよ。ただ、文法だのわからないところが幾つかあった。教えてほしいね!」
「それはダメよ、私と勉強したがっている人がどのくらいと思っているの?自分で頑張ってね。」
「俺以外の男では、絶対にお前の恋人にはならないだろうな?そんなんじゃあ、ずっと恋人なしだったな!」
「私もそう思うわ、恋人になる可能性がある人はあなただけでしょうね!でも、そのあなたもどうかしらね?」
「悪魔は自分の欲望は絶対にあきらめない!俺の虜にしてやるから、まってっいろ!!」「ナルヴィくん、自分の顔知っているでしょ!その顔でそんなこと言っても、キモいだけだよ!」
「・・・・・・」
赤い顔で汗を垂らす安岡こと、ナルヴィだった。
2校時は体育だった。
体力テストの時間だった。普段のナルヴィだったら人間離れした結果を残せる。しかし、安岡の体を借りている状態では人並みの結果を出すのがやっとだった。
「全くなんて体なんだ、脂肪ばかりで筋肉が少なすぎる。これでは、どうにもならない。」
しかし、クラスの反応は少し違った。いつも、何もできない安岡が他の人と同じような結果を出している。それ自体が、意外なことだった。
「安岡はどうしたんだ、あいつあんなに運動できたっけ」
クラスのみんなが以外に思い始めていた。しかし、普段から暗い安岡に話しかけるような人は誰もいなかった。いや、でも一人の女子が少し興味を持ち始めていた。
彼女は地味な文学少女、広瀬真理。やはり誰ともしゃべらなくて、いつも図書館で本を読んでいる。顔は整っているのだが、華やかさが全くないので誰の目にも全くとまらないでいる。少し不思議な感じのする少女だ。
広瀬がナルヴィに近づいてきた。
「安岡くん、私今まではあなたのこと大嫌いだった。いつも人を恨むような目でしか見ていなくって、自分で何かすることはしなくて、とても不快なオーラを出していた。でも、今日のあなたは野望に満ちたような目をしている。どうしたの?」
「え!ああ、気が変わったんだよ。俺は変わらないといけなくなった。それだけだ。」
「ふ~ん!そうなんだ。わたし、また安岡くんと話をしたくなったは。また、お話ししてくださいね。」
「なんなんだ。あの女。でも、おもしろそうなやつだな~!」
「何考えているの?」突然、さくらが声を掛けてきてナルヴィは少し驚いた。
「こいつまた、俺の隙を突きやがった。いくら、安岡の体を借りているとはいえこんなやつ魔族にもいないぞ。」
「おまえ、本当に気配を消すのがうまいな」
「当たり前よ、剣道で気配を悟られるようなら日本一なんて無理よ」
「おれは、世界一のやつにだって負けることはないんだぞ。おまえは、特別だ。」
「ところで、広瀬さんと何話していたの?」
「ああ、彼女は俺に少し興味をもたっよだね。これだけ目立ったことしているのに話しかけてきたのは彼女だけだよ。この男は本当にみんなから好かれていないんだな。」
「広瀬さんは変わっている人だからね。人に流されないで、自分に思った通りに行動する。そのくせ、観察力がすごいから細かいところに気がつくのよ。」
「私を彼女にしたい男は腐るほどいるわ。あなたも私にもてたいならあなたを惚れる女の子が同じくらいいないとね。頑張って、男を磨いてね。」
このとき、ナルヴィはかすかに魔族の気配を感じた。魔界とこの世界のゲートは塞いだが完璧ではない。強い魔族なら、魔界から一匹ぐらい来てもおかしくないかもしれない。気を付けなければならないと思った。
なんとか、一日の授業を終え放課後になった。