2-ひねりきれてないひねり。
2話。できちゃいました。
変わらずいいよっ☆彡っていう心の広い方はお読みください。
また、同じ夢を見ていた。
左手には地球、右手にはよくわからない惑星。
相も変わらず私はその中間で浮かんでいる。
前回と変わったことがあるかといえば・・・うん、
目の前になんか白い爺さんがいることぐらいかな。
私知ってる。これ「あなたは死にました」とかいわれるやつだ。
最近のラノベにありがちな展開ではなかったかな・・・
でも待て、私死ぬようなことした覚えないんですが。普通に寝たよね?部屋の鍵も閉めてたよね?
いや、まだ死んだとは限らない。この爺さんがただの爺さんであるという確率も―――――
「初めまして、かの。儂は左側、おぬしから見れば右側の世界を担当している神じゃ」
――――そんな確率なかった。
爺さん、改め神様は左手で右の惑星を指しながらそう言った。
「それでは私は死んでしまったのですか?」
「いや、他の者と違って死んではおらん。呼び寄せただけじゃ」
どうやら死んではいないようで。だけど、うん?他の者とは。
「話が2つ3つ飛んでしまっているから最初から説明してよいかの?」
はい、という意味を込めて頷く。
「今回おぬし含め数人をこちらの世界に送るのは、世界を守ってほしいからじゃ」
勇者召喚、というやつか、ベタだな、と思う。
「それで、こちら側の勇者とすべき人間の魂をそちらの世界で死んだ人間からこちらに引っ張ってきたのじゃ」
だから最近はよく人の死を見たのか、そこに縁があったから。
しかし、私はほかの人と違って死んではいないはずだ。
「じゃが、いざ引っ張ってこよう、と思ったら世界の狭間で一つの魂がうろついてての。
これはちょうどいい。労力も少なくて済む、と引っ張ってきたのじゃ」
・・・まさか。
「それが私、ですか?」
是、という答えを返すように首を縦に振る神様。
驚愕の事実が発覚した。ここ世界の狭間だったのか。
そして私は寝てる間にそこをうろちょろしてたのか。危なくない?
「もちろん危ない。下手をすれば元の世界に戻れなくなるところじゃ。
まぁ、それで儂がここに引き寄せたんじゃがな」
自分が知らないうちに死にそうになっていた事実に身震いする。
神様には感謝。圧倒的感謝。
それで結局のところ。
「助けるといっても具体的にどうすればいいのです?」
そう神様に問うた。
「簡単に言うとじゃな、これから半年後、ああ、こちらもあちらも時間の流れは同じじゃ。
それでの、地球からこちらに向かって5千人ほど人間が流れ込んでくる予定じゃ」
5千人・・・5千人?たしか新作VRゲームの第一期プレイヤーも5千人だった気が。
偶然・・・じゃないよなぁ・・・
「そして人間に限らず生物は世界を超えるときに一定量の能力が魂の余剰分に付与される。
5千人の強化された人間たちにこちら側で好き勝手されると世界のパワーバランスが崩れてしまう。
それを避けるためにおぬしらには彼奴らを止めてほしい。方法は問わない」
要するに殺してでも止めろ、と。
しかし私は一つ疑念を抱く。そううまくいくだろうか?
「そうすればパワーバランス的には問題ないかもしれませんが
こちらから送った人々は知り合いがいるかもしれない、同郷の人々を殺せるでしょうか」
もし家族なんて来ようものなら懐柔すらされる恐れがある。
「そのためのおぬしじゃ。もし送った者ども『勇者』がこちらの世界に仇なす存在となったときは。
おぬしにその〈処理〉をお願いしたい」
・・・特大の爆弾を放り込んできたなこの神様。
要するに、だ。
「私に人を殺せ、と」
「自力で世界を抜け出せるほどの魂じゃ、可能じゃろうと判断した。頼む」
そういうと神様は私に頭を下げた。そう、私という1創造物に対して頭を下げたのだ。・・・けれど、
「神様がそう頭を下げてはいけないのでは?送っているのは日本人でしょう。舐められますよ」
「儂も誰彼構わず頭を下げているわけじゃないわい。人は選んでおる」
こんな人が会社の上司だったら働く人も幸せだろうになぁ。
というかよくよく考えれば。
「それ私が人を殺せる前提で話が進んでいますが」
「ん?殺せんのか?少し覗いたが普通に殺せそうじゃがの」
覗くって・・・・ああ、記憶か。そりゃ神様ですもんね。記憶を盗み見るくらい訳ないか。
どうしようか、と考える。がしかし、考えれば考えるほど「NO」という選択肢が出ない。
もし仮に地球の人らがVR機器を使って世界を渡るとする。
実際にわたるのは最新ゲームをしていると思っている一般人だ。つまり、
―――――確実に渡った人たち、ゲーム感覚で行動するよね。
それは現地民の虐殺であったり、搾取であったりを意味する。
日本人とか無意味にレベル上げしようとして殺しまくるだろう。
逆に勇者側が裏切らない保証はどこにもない。
よほど召喚した国・・・かな?がうまく手回ししなければ、
おそらくいくらかは裏切る。まぁ何よりも。
「その話請けます。ヴァーサ号に乗った気持ちでいるといいです」
この爺さんが個人的に気に入った。理由としてはそれくらいで十分でしょう。
「その船すぐ沈んだ奴じゃろ。まぁ、こちらは軽装だから沈まんかもしれんがな」
さすが神様、博識。まぁ、軽装というか、一人ですしね。
「褒めても何にも出んぞ。あいにく渡せる余裕がこちらにはないのでの。
おぬしらを送るだけでもギリギリなんじゃ」
それは残念。それにしても、仕事をいつかは決めなきゃなぁとは思っていたけど、
まさか神様の下で働くことになるとは。
そう思って気づく。あれ、そういえば、
「私元の世界に戻れるんですか?」
神様はその口に笑みを浮かべて頷く。
「ああ。すべて片付いたその後、おぬしが望むのなら地球に帰そう」
たぶん私が帰りたいと言ったら返してくれるんだろうけど・・・
・・・言外に「元の世界の方がいいのならな」という意味が受け取れる・・・
まあ、こんなことされれば仲が悪くもなるよね。
「しかし一体あちらの神は何を考えておるのやら」
それに私は笑って答える。
「それこそ神のみぞ知る、ということでは?」
「ほほっ、違いないのう。さて、そろそろおぬしを送ろうと思う。
おぬしに限らず魂だけで肉体は送れんから、こちらで依り代となる肉体は用意してある。
一つの国につき一人、計七つの国がある。それのどこかにおぬしは召喚されるであろう。
もし何か判断に困ることがあったら教会に行くといい。できるだけ答えよう」
神様がすっ、と真剣な顔になって言う。
「わかりました。やれるだけやりますよ」
覚悟を決める。といってもそこまで重く考えていない。
―――いつも通りに。好きなことを、好きなようにやるだけだ。
「仕事以外は自由にしてもらって構わんからの。では、幸運を祈る」
誰にですか、というツッコミをしようとしたところで、急に体が引っ張られる感覚。
前回と違い、今回は異世界の方へだ。引き寄せられるにつれ、意識がだんだんと落ちていく。
ああ、私はあの神様の願いをかなえる流れ星になるんだなぁーなんてくだらないことを考えながら。
霞ゆく視界では神様が笑って手を振っているのが見えた。
やっと言ってくれたか。仕事はしっかり果たしてくれると助かるんじゃがのう。
依り代はあの国の適当な教会の人間にしておこう。ああ、大変だ、大変だ。
世界を維持するのは、本当に大変だ。
2話も読んでくださりありがとうございました。
おじいさんのしゃべり方ってわかる・・・?わからなくない・・・?
爺さんのしゃべり方が不自然でも気にしないでください。そういうしゃべり方なんです(投げやり