9、秘密の部屋
「わ、わかったよ東雲くん」
何度も頭を下げてくるその少年に、私はおどおどしてばかりいた。
「でも、お前を撃った...」
「で、でもほら! 私もう元気だよ? 傷だって塞がってるし」
「濡れ衣を着せた...」
「人違いくらい誰にだってあるよ! 大丈夫だって」
ど、どうしよ。これ以上なんて言えば...
あ! ていうか、
「そもそも、どこで銃を手に入れたの? Japanって銃は持っちゃダメって聞いたわよ」
「は? ああ、銃?」
はっと顔をあげると、東雲くんは困ったように髪をかきあげた。
「いやぁ...まあ、あれは...」
あれ、これ、聞いちゃダメだったのかな...?
「ご、ごめん! やっぱりいいよ」
「いや、いいよ。この音楽室も教えたし...って、まだなんも教えてねーな。よし」
パタンとピアノの蓋を閉じると、「一旦外に出よう」と東雲くんは言った。
「え? どうして?」
「この部屋の仕組みを説明するためだ。いいから出るぞ」
え、う、うん...
「忘れ物とかねーな」
廊下に出ると、当たり前だけど外はもう真っ暗だった。
「うん、大丈夫」
「よし、じゃあよくみてろ」
東雲くんは、音楽室のーーーーーー本来はあるはずのないーーーーーードアに、そっと触れた。
「」
!
スルスル、スル...
ドアが紐のように変形して、東雲くんの袖の中に収まっていく。
ひ、ひぇ...
「じゃ、Japanって常にこんなことがあるのね...」
「いやねぇから」
口から漏れた呟きを突っ込まれちゃった...
「この部屋は、俺だけが知ってる。いや...もうお前も知ったけどさ」
へ、へぇ...
「ここは、俺の隠し部屋みたいなもんだ。お前以外は誰も知らない。秘密を守ることは出来るか」
東雲くんの鋭い目が、私を見定めるかのように、じっと見ている。
「う、うん...」
「よし、ならいい。それじゃ」
☆☆☆
この学校には、あってはならないモノがある。
いや、あってはならないモノをもつものがいる。
音楽は、あってはならない。
音楽は、この世にはあってはならない。
それを持つものが、ここにいる。
それに関わるものも、ここにいる。
排除せねば。