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質疑応答

異世界ハードモード過ぎない?

いくつか回答ミスったら不審人物として捕まる、運が悪ければそのまま命が危ないルートな気がするんだけども。


「嘘をついているかどうかが分かる」?そんなことがありえるのか?ハッタリ?

いや、多分魔法もあるこの世界だ。このいかにも魔法が使えそうな格好のお兄さんなら、あるいは。


「改めて質問するね。君の名前を教えてくれる?」


「あ、はい。烏森(かすもり)時雨(しぐれ)です」


「シグレ君ね。何かあだ名とかあった?そっちの方が呼ばれやすいならそっちにするけど」


「いや、特にはないです」


とにかく。僕はとりあえずこのお兄さんの言うことを全て信じなければならない。僕は嘘を見抜くような技術は持ってないから。


僕が禁止されたのは黙秘することだけで、嘘を吐くことは禁止されてない。

いざとなれば嘘でもハッタリでも活用しよう。このお兄さんが嘘を吐いている可能性も十分にあるんだし。




「君はどこから来たの?」


「地球という世界の、日本という国です」


「職業は?」


「学生、高校生です。あ、ちょっといいですか?」


この、明らかに僕が下でお兄さんが上という構図がなんとなく嫌だ。

いやまぁ客観的に見ても僕の方が不法侵入している不審者で、立場が弱いのは解ってるんだけど、それでも形だけでも。


「いいよ。どうしたの?」


「お兄さんが僕に1つ質問するごとに、僕もお兄さんに1つ質問させてください。

僕が今質問できるような立場にないんだろうなっていうのはなんとなく感じてるんですけど、できればお願いします」


……………………どうだ?


この要求を呑んでくれないと、僕は本当に情報0になって困るんだけども。

でも正直、不審人物である僕が図々しいお願いをしているのは解ってる。…………厳しいかもなぁ。

まぁ、駄目でもともとだ。


「…………いいよ。君が今のこの状況とかが分からない、理解してないっていうのは本当なんだよね?」


「はい!」


「だとしたら、ちょっと不平等すぎる気もするしね。僕が優位に立ちすぎているのかもしれない」


「ありがとうございます!」


勝率の低い賭けに勝った!ツイてる!

多分、嘘を見抜くことができるから、僕が本当に何も知らないのが判ったんだと思う。

だとすると、本当にやっかだな。僕にとって天敵のような技術じゃないか。


「じゃあ、さっき質問3つされたんで、僕も3つ質問してもいいですか?」


よし。もうちょっと図々しくいこう。




「お兄さんの名前は何ですか?」


「フィブル・カーナ。あだ名はないよ」


「ここはどこですか?」


「人間界のエフケリア王国り王都イニーツェにある王城の、普段使われてない部屋だよ」


「フィブルさん。━━あ、フィブルさんとカーナさん、どっちで呼べばいいですか?」


「ん〜、フィブルでいいよ」


「ありがとうございます。━━フィブルさんの職業は何ですか?」


「王城勤めの魔法使い。色々な人に魔法を教えたり、アドバイスしたりしてるよ。こう言っちゃなんだけど閑職だね」


「━━ありがとうございます、こんなわがままを聞いてくれて」


「いやいや大丈夫だよ」




基本的な情報すら何もない今の状況では、お兄さん━━フィブルさんのしてきた質問をそのまま返すのが一番だと思う。そのまま返せない質問は、系統はそのままで少し方向をずらして。


あくまで直感だけど、名前と場所はともかく、職業については多少の嘘があると思う。

フィブルさんは大学生くらいの年だけど、その年でそんな自由度の高そうな、そして重要そうな職になんて就けないと思う。

もし言ってることが全て本当なら…………この人はこの若さで相当実績があって、偉い人だということになる、はず。


僕が嘘を見抜けるのかを確かめるために嘘を吐いたのか。

有名人だからそんなところでは嘘を吐かないのか。

嘘だとしても本当だとしても、フィブルさんへの警戒度は高めなきゃいけないな。




「さて、本題の質問に移るよ。君はどうやってあの部屋、及びこの王城内に侵入したの?」


さっきの部屋でも訊かれた、本題の質問。


そうだ。僕の方からも質問をして、「形の上だけでも対等に」みたいにしても、僕が不審人物であることに変わりはない。

むしろここが王城だと判った分、より緊張感が高まった。なんて言ったって王城への不法侵入だからなぁ。


「学校の、教室にいたんです。クラスメートと、勉強をしに。で、昼前に、急に大きな地震みたいな音がして、教室の前半分と後ろ半分に、それぞれ光が現れたんです。黄色と紫の。で、パニックになってたら…………真っ暗になって、何も視えなく、聴こえなくなって。体も動かせなくなって。それで、気づいたらあの部屋にいたんです」


でも、フィブルさんに伝えられることはあの部屋で答えたのと変わらない。

頑張って少し細かく伝えるくらい。


「…………今言ったことに、嘘はないんだね?」


「はい。あの、信じられないと思うんですけど、本当のことなんです。僕自身もまだ信じられないんですけど」


「いや、そんなに必死にならなくてもいいよ。分かってるから」


僕の方こそ、「嘘をついているかどうかが分かる」ということに半信半疑なんだ。

僕が全て本当のことを話しても、フィブルさんの判断で簡単に嘘と認定される。そしてそれを正す機会は、多分僕にはない。




「シグレ君の方からも質問1つどうぞ」


「え?あぁいえ、大丈夫です。今回はパスで。また今度気になることがあったらその時に」


「そう?じゃあそうしとこうか」


正直次の質問なんて考えてなかった。

そのまま同じ質問を返すこともできないし、質問する権利を温存しとけるならそれが一番ありがたい。




「これも不平等だと思うから開示するね。

僕が君の話を聞いて想定したパターンは2つ。1つは君の言っていることが全て真実である。もう1つは、君の記憶が操作されていて、自覚のないままに嘘を言っている」


まぁ、だろうなとは思う。

ある程度予想も覚悟もしてたから、質問はしない。それでも、ここまで真剣に答えて信じてもらえないのは辛いな。

まぁ、普段の行いか。


「…………?意外と驚かないんだね。もっと、『何で信じてくれないんですか!?』ってくると思ってたよ」


「いえ、まぁ、不審人物の言葉を全て信じるようなバカなことはしないだろうと思って」


それよりも、「私は君の言葉を全面的には信じていないです」と僕に明かしたのが不思議だ。むしろ怖い。

僕がここでパニックになって、何をしでかすか分からないだろうに。「何で信じてくれないんですか!?」って詰問するのは可愛いもんだろう、最悪の事態を考えれば。

明かすことには何のメリットもないはず。


「君の言葉に嘘が一切感じられなかったのは事実だ。だから、君に悪意がないだろうと判断した。少し、冷静すぎるところが気にはなるけどね」


「……………………」


━━怪しい。絶対に怪しい。


普通、ここまで僕に明かすか?僕の緊張をほぐそうと、油断させようとしているようにしか思えない。いや、それにしたってリスクを負いすぎてる。

「私はあなたの全面的な味方ですよ。だから私のことを信じて全てを隠さずに話しなさい」。そう言っているように思えるけど、それ以外に何か裏があるようにも思える。


僕のことを信じてない、いや、ある意味重要な何かを知っていると信じているからこそのアプローチか。




「…………どうかした?何か、思い出したことでもある?」


「いや、そうじゃないんですが」


互いに互いを信用しない。なら、それでもいい。


「1つ、気になったことというか、質問があるんですが」


どこに、何に対しての意地かは知らないけど、それでも表面上は相手のことを信用して。


「うん。どうぞ」


立場が弱いからといって、こっちからアプローチしに行っちゃダメなわけではない。

まぁ、アプローチの方向が違ったら違ったで、その時はその時。


「異世界から人を召喚するような魔法とか、フィブルさん、心当たりありませんか?」


「━━君、やっぱり…………いや、うん。あるよ」


ビンゴ!!

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