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人物紹介、そして……

僕が何で来たのかとか、そういうのは今は説明しない。

大した理由でもないし。なんとなくなんとなく。


いやまぁちゃんと考えあってのことだし、単に宿題を学校で終わらせたいとか、そういうものじゃないけど、別に説明するほどのことじゃない。

というか、別に知りたくもないだろう?


ということで、今この教室にいる人でも紹介しようと思う。さらっと名前だけでも。

まぁ別にここで全部覚えられるわけもないし、後で「あぁ、そういう名前の人もいたんだっけ」と思い出してもらえるレベルで十分かと。




まずは強制された5人。


祭器(さいき)(みや)

アウトドア大好き系の明るいタイプの女子。

不満とかを友達と共有することもあるけれど、その時も基本楽しそうな笑顔で、毎日が楽しいんだろうなって思わされる。


月輪(つきのわ)鴻志郎(こうしろう)

うちのクラスでは数少ない、運動がすごいできて勉強はからっきしという男子。

僕なんかは少し近寄りがたい体育系の人間だけど、意外と1対1で話すと普通だったりする。同じようなタイプの人で固まっている時のテンションにはついていけないけれど。


福寄(ふくより)日和(ひより)

一言で言い表すなら天真爛漫。

前回話した短距離走のスターで、うちのクラスの女子は福寄を中心に動いていると言っても過言ではない。

ちなみに、前回話したクラスのムードメーカーは福寄。男子の方は月輪だったりする。


街原(まちはら)風華(ふうか)

誰もが認める合法ロリ。

高校2年生にしてなんと身長144cm。その上可愛いのだから、クラスのマスコットみたいになっている。

一部の層に絶大な人気があるらしい。


(こおり)柚葉(ゆずは)

進級できる出席日数ギリギリのラインを攻める女子。

そのくせテストの点数は驚くほど高いから言葉もない。1学期の期末テストの総合順位は3位だった。

そんな変わり者で得たいの知れない存在である郡は、皆から敬遠されているけど、僕は比較的仲良くしている。




次に、どうやら都合が良かったらしい教師役の5人。


朝霧(あさぎり)香登(かがと)

クラスの副委員長で、物腰穏やかな男子。

基本的に面倒みがよく、クラスや学年問わず信用や信頼が厚い。時々、本当に同級生なのかと疑ってしまう。


篠山(ささやま)上総(かずさ)

頭が固めな、真面目な委員長。

正直香登の方がしっかりしてるし頼れるけれど、基本前に立ってリーダーシップを発揮するのは篠山だから、まぁいいコンビなんじゃないかと思う。


穂積(ほづみ)日夏(ひなつ)

前回話した美少女とは穂積さんのこと。

顔が良くて性格も良くて、その上頭も良いんだから隙がない。運動が苦手なのもむしろ魅力のひとつ。

あざとくないところが高ポイント。


刃連(ゆきい)海松(みる)

学校に剣道部があるけれど、それには入らずに自宅の道場で剣道を続ける本格派の少女。

聞くところによると、剣道以外の武道もできるらしい。

月輪とは違って、文武両道を体現した存在。


夢前(ゆめさき)深夜(しんや)

記憶力が抜群にいい。

社会系の科目や英単語では無双している。

ただ、人に何かを教えるというのは苦手。勉強でもそれ以外でも。




最後に、自主的に来ている7人。


青宙(あおぞら)(あおい)

良くも悪くも「普通」で「平凡」。可もなく不可もなく。

周囲に必用以上に気を配り、迷惑をなけないようにしている。

僕がこのクラスで1番仲良くしている友達。


浅葱(あさぎ)(すみれ)

郡以上に敬遠されていて孤立している女子。

その理由は郡とは違って、浅葱がずっと話しかけるなオーラを放ち続けているから。

聞くところによると、去年はここまで酷くはなかったらしい。


木ノ上(このうえ)零司(れいじ)

何というか、掴みどころのないというか、ふわふわしているというか、上手く言い表せない男子。

大体のことはやってのけるし、人間性も好きだから仲良くしているけれど…………多分、僕の同類だと思う。


逆井(さかさい)若桜(わかさ)

今年から転校してきた女子。

あまりこれといった特徴はないけれど、ふとした瞬間に口調が敬語(というか、丁寧な言葉づかい)になっている。本人はそれを意識して隠してるっぽい。


調神(しらがみ)(じん)

アニメ・ゲーム・ライトノベルについて精通しているいわゆるオタク。

好印象なのは、あまりその知識をひけらかさないところと、下手下手に出る態度。

そういう人って、何かと言いたがったり、条件つき(同じ作品が好きな人に対して、とか)で上からの態度になるという勝手なイメージがあったから。


露草(つゆくさ)陽色(ひいろ)

地味っていうわけじゃないんだけど、とても影の薄い男子。

決して無口だとか、主張が弱いとか、オドオドしてるとか、そういうわけじゃないんだけど。

「いつからそこにいたの?」と「いるならいるって言ってよ」を言われた回数はもう数え切れないらしい。


雪谷(ゆきがや)風深(ふうか)

少々引っ込み思案な女子。

読書が好きな図書委員で、昼休みと放課後はよく図書室にいる。

葵に気があるみたいだけど、葵の方は多分気軽に話せる友達くらいにしか思ってない。残念。




プラスアルファで先生のことも。


不破(ふわ)飛鳥(あすか)

大学を出てまだ2年の新米国語教師。

愛称は「フワちゃん」で、生徒にもよく好かれている。

何事にも一生懸命で、生徒を想う気持ちは本物なんだけど、時々こういう無茶をする。


それに僕、烏森(かすもり)時雨(しぐれ)を足した計19人が、今この教室にいるメンバーだ。




さてさて、もうそろそろ今日の補修勉強会も終わり。やっている宿題を切り上げて、この後の予定でも考えるか━━と、そう気を緩めた瞬間。




グワアァァァン!!




そんなけたたましい音と共に、教室の後ろ半分の床に何か光の紋様が現れ、床から天井まで紫の光の帯が作られた。

と、それを見て、何事かを認識した瞬間には、僕のいる教室の前半分の床にも光の紋様が現れた。こっちは黄色の光が床から天井に伸びている。


しっかりと光の色やその軌跡がこの昼間でも見えているけれど、つまりそれだけはっきりとした強い光なんだけど、どうやら目には優しいらしい。

光源の床を見ても目が痛くならないし、反射的に目を閉じたくもならなかった。




この教室からは体育館の壁と、あとはせいぜい中庭くらいしか見えないり

音も、教室内の混乱の大声とこの光関連のものであろう、シュイィィィン……という音とで外の音が聞こえない。

というか、今にして思えば、少し前から廊下から聞こえてきてた吹奏楽部の練習の音も聞こえなくなっていた気がする。


つまり何が言いたいのかっていうと、この教室の異常事態に気づいて外から助けがやって来る可能性はほぼ0だっていうことで、だから僕たちは自主的にこの教室から避難した方がいいんだけど━━



「おい!教室のドア開かねぇぞ!」


「ちょっと、そっち行けないんだけど。…………壁?」



━━とまぁ、こんな具合で。

退路も断たれているらしい。


ちなみに、黄色の光と紫の光の境目は、それこそ壁みたいになっていて、強く押せば押すほど硬い感触が返ってくる。

教室の前と後ろで行き来もできない。


「…………そうだ!窓!月輪、窓は!?」


と、これだけつらつらと淡々とモノローグしているけれど、実のところ僕だって冷静じゃない。本当に本当。

なんか一周回って冷静みたいなところもあるけれど、これはもうパニックとかヒステリーとかになれないっていう僕の性質の裏返しなわけで。


今の「…………そうだ!」のセリフも僕だしね。


━━でも、結果は、空振り。


「お、開い…………うわぁぁぁ!!?」


そう。開いたは開いた。でも、開いただけで、そこから先の進展はない。

この教室は2階にある。最悪、そこから飛び降りることも考えていたんだけど…………。


━━窓の外に広がるのは、闇。黒一色の世界だった。


奥行きも何もない。ただひたすらに、濃密な、闇。


何が怖いかって、窓越しに外を見ると、普通に見慣れた景色があるところだ。

体育館もある。奥に山も見える。太陽だって照っている。

それが、窓を開けて見ると、闇しかない。


月輪はすぐに窓を閉めたけど、僕たちの心には強い恐怖が刻まれた。さすがにあの闇の中には飛び込めない。


「━━ヒッ。…………えっ?…………えっ?」


僕のすぐ後ろで、凄い怯えた声が聞こえた。

タイミング的に月輪の開けた窓じゃないだろうし…………この上、まだ何かあるのだろうか。


「祭器さん、どうかしたの?」


僕に話しかけられたことに気づいた祭器さんは、いつもの明るさが全くなく(当然か)、視線を泳がせて自分の中で言葉を選びながら、話してくれた。


「えっと、なんか…………人少なくない?というか、ひなっちゃんとか、ふうちゃんとか、いない気が、する…………」


見渡すと、確かにいない。他にも、陽色がいなかった。


「ねぇ祭器さん、これって━━え?」


振り向くと、祭器さんがいなかった。いや、僕が目を祭器さんから目を話したのは2秒かそこら。いやでも…………え?

やっぱり、いない。この黄色い側はもちろん、紫の側も探してみたけれど、見つからなかった。


「皆さん!落ち着いて、冷静になって下さい!てを、何か手を考えて下さい!そして━━!」


不破先生が、何とかパニック状態の僕たちをまとめようと声を張り上げて、注意自分に向けたとき。フッと。




フッと。一瞬で。不破先生が消えた。




「キャアァァァ!!!」「うわぁぁぁ!!!」


当然、教室内は再パニック。というか、よりいっそう酷くなった。

当然だ。皆の目の前で急に人が消えたんだ。それに消えて…………いなくなっているのは、センセだけじゃないんだ。


僕だって、相当混乱しているし、参っている。

何が起こっているのかも解らないし、何をすればいいのかも判らない。

いまは何とか平静を装えているけれど、それだっていつ何が原因で崩れるか判らない。


「━━ねぇ、時雨」


こんなときでも。いや、こんなときだからこそ楽しそうな声が僕に向けられた。


葵だ。


「僕もさ、調神くんほど詳しくはないけどさ。でも、これってさ、アレみたいだよね━━」




━━そこで、僕の視界は暗闇に包まれた。




何も視えない。何も聴こえない。身体を動かすことすらできない。強い浮遊感だけがあり、抵抗もできない。


『これってさ、アレみたいだよね━━』


アレ。あぁ確かに、1年の3学期から葵に借りたりして、色々教えてもらった。その中に、こういうクラス全体でっていうのもあった。


でも、アレは、フィクションだろう?現実には起こり得ないし、存在し得ないだろう?




━━異世界召喚、なんてさ…………。




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