男子校転生
「うう……ここはどこだ……俺はいったい」
「……ぼくたち、修学旅行で……」
「バスごと崖から滑り落ちたような……?」
「クラスみんないるのか。でもバスがないぞ。なにがどうなったんだ」
「……思い出せねえな。なんじゃぃココ、あたり一面まっしろだ。おーい、誰かいないかー!」
――聞け。ひとの子らよ。
「ワッ!? な、なんだあいつ、でっっけえ!」
――我は神である。ひとの子らよ。落ち着いてきくがよい。にわかには信じがたいであろうが――
「神キター!」
「神? まじ神? リアルゴッド!」
「さすが神、でけえ! ひげもじゃ! 髪ながい! 天パ! わかりやすく神!」
「でも裸だ!」
「ちんぽ丸出しだー!!」
――……お、落ち着いてききなさい。汝らは先ほど、命を落とした。しかし我は汝らの魂を哀れみ、こうして神の世界へ拾い上げてきた。汝らはこれから、異世界へと転生をして――
「はいチーズ」
「イエ――――イ」
――おい、きいてるか? 自撮りなんかしても無駄だぞ。
異世界にはツイッターもフェイスブックもないんだから。
「ミクシーある?」
――あるわけあるか! インターネットがない、電話もないんだぞ。ちょっと常識で考えろよ。男子ってこれだからもう……。
「神、ケモミミ加工しちゃお」
「いいね。あ、それ可愛い。金髪だからキツネ耳も似合うんじゃね」
「せやな」
――やめんかい!
「ていうか神、ちんこ小せぇ」
「ほんとだ小さい。ていうか包茎」
――え。
「うわほんとだすごい包茎。めちゃくちゃ余ってる」
「皮ドリルだ。朝顔のつぼみだ」
「本体が小さい故に余る、真理だなぁ」
「神のくせに短小包茎。神のくせに粗ちん!」
「客観的に臭そうだ」
――な、何を言う、ヒトの子よ。神は……神は全知全能にして完全なるもの。子孫繁栄は弱者のすることだ。神はそういったその、生殖とかそういったことはする必要ないししたいとも思わないから――
「えっ神って童貞?」
「まじ童貞?」
「全知全能なのに性の喜びは知らないのかー」
――……! だ、だって……神は……
「あっそうか、二十歳まで童貞だと魔法使いになるって言うじゃん、アレ、三十、四十と守り続けてたらどんどんランクアップしていくんだ! やがて神になるんだ!」
「なるほどぉ。神なのに童貞、じゃなく、ずっと童貞だったから神にまでなれたんだな。なるほどぉー」
「てことはオレもいずれは……なあ神ィ、何年間童貞だったら神になれるのー? なあ神ィ。神ィー」
「……どうした神。なんか言えよ」
「! 泣いてる!」
「神、泣いてる!」
「泣くなや神、悪かったよちょっと言い過ぎた。ごめんちょっと調子こいてた」
「ごめんて。いやほら、俺も別に大きくないし仮性だし」
「日本人の六割は包茎なんだぞ、ふつうだよ」
「オレも童貞だぞー! この先も卒業できるような気がしないぞー!」
「涙ふけよ神。笑った方が可愛いぜ神」
「お前ソレ言いたかっただけだろ」
「元気だせって神、女子大生紹介してやるからよー」
――……ほんと?
「復活したぞ神!」
「現金だな神、やっぱり性の喜び知りたかったんじゃねえか神!」
「可愛いぞ神!」
「ちょっとだけ大きくなってるぞ神! まだまだ余ってるけど神!」
――う、うぬら、神をたばかりおったな!!
「たばかってねーってホント紹介するから。おれの姉ちゃんだけど、最近なんかスケートのアニメ見ながら『マジ神とうとい』ってずっと言ってるからきっと神のこと好きだよ」
――で、でも……我、ああいうシュッとしたタイプじゃないし、運痴だし、お尻にオデキとかあって汚いし……
「神もあのアニメ観てるのかよ」
「ケツはちゃんと洗えよ。あと腸内環境ととのえろよ」
「自信持ってください神さま、僕はあなたのこと可愛いと思いますから!」
――う……ありがとう。みんなありがとう……
「こっちこそごめんな! ドリル包茎粗チンとかいってごめんな!」
――うん。我、がんばる。アカヒゲ薬局とか亀頭ブラシとか睾丸交互浴とか試してみる……
「そうだよ神、一つ上の男をめざせ!」
――うん。ありがとう。それじゃあ、みんなまた……元気でね。
「おう」
「また今度な!」
「じゃあ!」
「よし、俺たちも帰るかー」
「どこに」
「どうやって?」
「……」
「………………」
「おい神やっぱおまえ粗ちん言われたの許してないだろおい、ほったらかすんじゃねーよ!!」
「帰ってこいコラ! 転生させるなり復活させるなり成仏させるなり、なんとかしてくれよ、おーいっ!」
――うっさいバーカ! 男子校まるごと転生なんか、もう二度とやんねーかんなっ!!
※下ネタ短編企画への寄稿は12月24日まで募集しております!興味のある方は当方(企画主)の活動報告をご確認ください。