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第二話 つかの間の安らぎ

納得できるものが書けなくて何度も書き直してました。

できたものも何だか中途半端なものになっていますな。

加筆しちゃうかもしれない。


とりあえず、あまりの遅筆に涙がでる。

 夕食の時間だと起こされてみれば、目の前には黒パンらしきモノとスープのようなモノが注がれた椀がある。どうやらこの質素な料理が今日の夕食らしい。

 試しに黒パンを指で弾いてみる。すると思っていたよりも固く、まるで煎餅を弾いたかのようなコツコツという音がする。

 スープはまだ温かく湯気が立ち上っている。白っぽいスープを木のスプーンでかき混ぜると、なんともいえない豆の匂いがふんわりと鼻を刺激する。おまけにたくさんの豆が入っているようで、満腹にはならないだろうがそれなりには量がある。


 チラリと横目で右隣に目を向ける。そこには、黒パンをスープに浸してはかじりスープから豆を掬っては口に運ぶ、優しげな風貌の男性がいる。黙々と食事を続けているので、この黒パンと豆スープは食べても大丈夫なモノらしい。


「なあ坊主よ。食わねぇなら俺にくれねえか?」


 急にそんな声が牢屋に響く。壁際の方に顔を向ければ、そこに声の主がいた。

 ボサボサの髪と髭の男が壁にもたれるかかるように座っている。その男の手には空になった椀が握られている。どうやら自分の分を早々に食べ終わったために、まだ手が付けられていないこちらの分に目をつけたようだ。

 こちらが黙りこんでいたためか、髭男は困ったように眉をひそめ頭をボリボリとかきむしる。


「あー、聞こえてるか? 言ってることわかるよな?」

「すんません大丈夫です。聞こえてるし言ってることわかります」

「そうか、そいつはよかった。で、どうだい?」

「いえ、無理にでも食べますよ。さすがに食わなきゃやっていけない」

「そうか、・・・・・・そうか。

 あ、いや、悪かったな変なこと言っちまって。俺に気にせず食ってくれ」


 言葉とは裏腹に物欲しそうな視線がスープに注がれている。食べにくいことこの上ない。少しでも体力をつけたいのか、あるいはただ食い意地が張っているだけなのか。どちらなのかは興味がないが正直勘弁してほしいものである。


 視線には気がつかない振りをして、目の前のスープに意識を戻す。

 とりあえず、食おう。正直なところ、量は物足りないが文句は言えまい。

 スプーンで豆を掬い口に運ぶ。豆はしっかりと煮込まれているようで、顎に力をいれなくても噛み潰すことができる。そうすれば、豆の味と香りが口いっぱいに広がっていく。

 次は黒パンに手を着ける。表面は固くなっているため拳で叩き割りちぎりやすくする。かなりの弾力があったが何とか一口サイズにちぎり、口へと放り込む。簡単に噛み切ることができずに何度も咀嚼していると、次第に唾液を吸って柔らかくなってくる。おまけに、噛めば噛むほどに独特な酸味がしみだしてくる。

 今度はちぎったパンをスープにひたして口に含む。初めから水気を含ませたためか、先程よりもずいぶんと食べやすい。何よりも、口の中がカラカラに乾かないのがいい。パンを噛みしめれば、豆の風味とパンの酸味が混ざり合いなんとも言えない味が舌の上を踊っている。


 黙々とパンを噛みしめ豆を掬っては口に運び続ける。

 おおよそパンとスープの半分が腹の中に消えたぐらいで、スプーンを動かしていた手を止める。満腹にはほど遠いが、今すぐに飢えて動けなくなることはないだろう。次の戦いぐらいは誤魔化しが利くはずだ


 そして、そろそろ視線が鬱陶しい。

 顔を上げて髭男の方に顔を向ければ、チラチラとこちらを見ていた髭男と目が合う。


「うん? な、なんだ?」

「なんだも何も、こんなに見られて落ち着いて飯食えるわけないでしょうが」


 溜息とともに答えれば、ビクリと体を震わせ何かに耐えるように顔をしかめた。

 困ったものだ。今の自分には余裕はない。体力的にも精神的にも、だ。

 この世界に来てからここまで、食事は必要最低限しか与えられない。この牢に入るまではまともな寝床も用意されていたかった。体は頑丈な方ではあるが、それでも限度はある。こんな生活が続けば遠くない未来に潰れるだろうことは間違いないだろう。

 精神的にも変わらない。右も左もわからない状況で命を賭けた戦いなど、たまったものじゃない。喧嘩すらクソ親父以外とはしたことのない一般学生だし、その父親との喧嘩にしろ"命に関わるところまではやらない"という暗黙の了解の許に成り立っていたものだ。何よりも、父親に関しては身内だし良心の呵責無しに殴れるので個人的にノーカンだ。

 それはともかくとして、生きるためであるとしても誰かを痛めつけなければならない、ということはひどく心がざらつくのだ。


 椀を手にしたまま立ち上がる。髭男ともう1人の男の視線が突き刺さる。そのまま髭男に近づけば、何かに怯えたように体を竦める。

 1歩ずつ近づく度にビクリと震え、落ち着きなく視線がさ迷う。

 口をモゴモゴと動かし何かを言おうとするが、こちらが髭男の傍に行く方が早い。

 髭男を見下ろせば、こちらを見上げる髭男と目が合う。


「これ食いますか?」

「へ?」


 手にした椀を持ち上げて聞いてみれば、惚けたような言葉と視線が返ってくるだけだった。

 視線が椀を見て、こちらの顔を見て、そして再び椀へと戻る。


「だから、これ食います?」

「お、おう、くれるんならもらう」

「そうですか。はい、どうぞ」


 伸ばしてきた手の上に椀を置いてやれば、また視線が椀とこちらの顔を往復する。


「も、もう返さねえぞ? ほんとにいいんだな?」

「そんなこと言いはしませんよ。だから、さっさと食べちゃってください」

「そ、そうか。ありがてぇ。ほんとうにありがてぇ」


 ありがてぇ、と繰り返しながら豆スープを掻きこむのを見て、先程まで座っていた場所まで戻る。

 スープがなくなるのは痛いが、まあ仕方がないことだ。黒パンを食べる上で水気がなくなるのは辛いが、なくてもなんとか食べることができるのはすでに体験済みだ。なんの問題もない。

 黒パンをちぎり口へ運ぶ、その作業に戻ろうとして、


「スープをあげて良かったのかい?」


 そんな言葉で手を止めた。

 声の主は今まで口を開いていなかったもう1人の男だ。


「んー、まあ、あれは口に合わなかったんでいいんじゃないですかね」

「無理にでも食べる、なんてことを言っていなかったかい?」


 頬をポリポリ掻きながら言えば、笑いをこらえるような声音で言葉が返ってくる。

 こちらへはまるで意識を向けていないように見えたが、実はきちんと聞き耳を立てていたらしい。


「それはほらあれですよ。俺そんな食わないんで――」


 半ば言い訳じみた言葉は最後まで続けることはできなかった。原因は目の前の男、ではない。


「そのわりには見事な腹の虫がなったみたいだけどね」


 腹の虫が、もっと飯をよこせこれでは足りんぞ、と主張するかのように鳴り響いたのだ。

 手で目元を隠すように押さえる。顔が熱い。恥ずかしくて死にそうだ。


「おい坊主、ほんとに良かったのか?」

「いいって言ってるでしょ。それにもう返せないでしょうが」

「おうまあ、そうなんだけどな」


 指の間から見えるのは空の器を持った髭男だ。大した量もないスープを掻き込めばあっという間になくなるのは道理だろう。


「クッハッハハハ」


 可笑しくて堪らないというように男が腹を抱えて笑いだす。

 傍目に見れば面白いのかもしれないが、こっちは恥ずかしくてたまったものじゃない。

 ジットリとした視線を向けてやれば、すまないと頭を下げ謝ってくる。

 謝ってくれるのはいい。それはいいのだが、何かに耐えるように肩を震わせるのはやめてほしい。


「もうこれ照れ隠しで張っ倒しても許されますよね」

「いや、すまない。本当に悪かったよ。

 そうだな。笑ってしまったお詫び、と言ってはなんだが、これで許してくれないだろうか?」


 そう言って差し出されたのはあの豆スープだ。


「いやいや、それはあんたの分じゃないですか」

「あぁそうだ。

 さすがに残り全部は勘弁してほしい。半分ずつぐらいでどうだろか?」

「おう、あんた実はこっちの話聞く気ないだろ」

「ハハハ、多少強引じゃなきゃ君は受け取らない気がするからね」


 まあ、あながち間違っていない。

 腹は空いているから、貰えるものなら貰いたい。しかしそもそも自分が髭男に豆スープを譲ったことが原因なのだ。自分の選択の結果は自分が責任を取るべきだ。

 それに、自分が誰かに譲っておきながら、当の自分が他の人に譲ってもらうなど、何となく格好がつかないだろう。


 一向に受け取る気配を出さないこちらに男はまたクスリと笑みを浮かべる。


「なら、そうだな。君の言葉を借りるなら、

 このスープは口に合わなくてね。どうか手伝ってもらえないだろうか?」

「うぬぅ」


 なんだか心の内を見透かされて逃げ道まで用意されてしまった感じである。ここまでされると、これ以上この厚意を受け取らないのは逆に失礼だ。

 なんだか自分が小さく思えてしまう。

 諦めの溜息とともに口を開く。


「そこまで言わせたら、もうしょうがないです。手伝いますよ」

「そうか。助かるよ」


 なんだかこの男の視線が微笑ましいものを見るような視線だが気にしない。意識すれば恥ずかしくて死にそうになるから、絶対に気にしない。それと、髭男は物欲しそうな視線をいい加減にやめろ。これは譲らない。


 黒パンをスープにひたし口に放り込んで咀嚼する。

 パンの酸味と豆の味が口の中で弾けとぶ。さまざまな豆の辛味苦味渋味甘味その他もろもろが全くの調和をなされずに口の中を暴れまわり、まるでゴムのような弾力のパンの酸味と混じり合い壮絶な不協和音を奏でていく。


「うん、マズイ」

「あ、やっぱり君もそう思うかい? 正直この味はキツイよな」


 どうやら口に合わないというのは建前だけではなかったようだ。

 お互いに不味い不味いと言いながら笑って食べ続ける。

 夕食の内容は酷いものだが、それでも誰かと笑いながら食べることで気持ちが楽になっていく。


 体力的には正直辛いものがある。

 それでも、明日は何とか頑張れる。


 酷い味を噛みしめながら、そんな風に思うのだった。

初の食事シーンである。

貧困な語彙で頑張って料理を描写してみたぜ!

ほら、料理描写が上手な作品は面白いとかよく言うよね。

それがこのあり様だ、南無三。


ともかく、話の進まなさに自分でビビる。

これヒロインの顔見せまで辿り着くのが凄く遠いわ。

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