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シスコンリーマン、魔王の娘になる  作者: 石田ゆうき
第2章 お城の外へ。常識を知る
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政治の中枢へ

 朝、目覚めると、フィアに変わってユルテが添い寝していた。

 オレが寝ている間に、また侍女が入れ替わったらしい。

 ……入れ替わった後に、また添い寝をする意味はわからないが。


 でもおかしいな。

 いつもなら、布団まわりでガタガタされたら、絶対に目が覚めてる。

 寝覚めが悪くなったのも、この体のせいか?


「姫様、おはようございます」

「おはようなのじゃ」


 二日目なので寝起きに見つめられていても、もう驚かない。

 これから洗顔、着替えと、朝食が終わるまではやることがない。

 ひたすらユルテのお人形さんとして、大人しくしているだけだ。


 そういえば、ディニッサからの通信がなかったな。

 昨日の夢には出てこなかった。陽菜の生活とか、会社のこととか不安なんだが。

 もう連絡はこないんだろうか……。



 * * * * *



「今日は城の外に出てみようと思う。街に領地運営の実務をやっているところがあるんじゃろ? そこに案内してほしいのじゃ」


「城の外に、ですか……」


 ユルテは城の外に出るのに反対らしい。


「なにか問題があるのかの?」


「お召し物が汚れてしまいますよ。それにどんな危険があるかわかりません」

「服なんて汚すためにあるようなものじゃろ。必要なら着替えてもよい」


 それに突然殺しにくるユルテほど危険なものは、そうそうないだろうし。

 そう思ったが、もちろん口には出さない。


「主を守るのも臣下のつとめじゃろ。外出中の警護はユルテに任せるのじゃ」

「姫様を守る……。それは、新鮮で楽しいかもしれませんね……」


 役目を与えることで、うまく説得できた。

 けれどそれから、城外ではお姫様抱っこ禁止、という指示を了解させるまでにかなりの時間を費やすことになるのだった。



* * * * *



「ディ、ディニッサ様!?」


 城門に近づくと、そこを守っていた兵士が突然土下座した。

 ……なんだこれ。ああ、そういえばオレは「皆殺し姫」なんだったな。


「立ち上がって良いぞ。いつも勤めご苦労じゃな」

「ハハッ。ありがたきお言葉!」


 できるだけ優しく話しかけたつもりだったが、兵士は土下座したままだった。

 ディニッサがどう思われているか、だいたいわかった。まあナメられているよりは、ましだと考えておこう。


 よく見ると兵士は震えていた。

 城門を出てしばらくしてから振り返っても、土下座したままだった。

 どんだけだよ……。



 * * * * *



 政務用の施設は、城から近い高級住宅街にあった。

 門番などはいなかったので、そのまま中に入る。普通は先触れを出すんだろうが、時間がもったいないし、今回は許してもらおう。

 

「これは、どなたでしょうか……?」


 中に入ると、耳が尖った美形が声をかけてきた。

 たぶん男だと思うんだが、女性と言われても納得できる容貌だった。


「わらわは──」

「ま、まさかディニッサ様!?」


 オレが言い終わる前に、答えに到達したらしい。

 彼も門番と同じく土下座した。


 ……ホント、どんな噂が流れているんだろうな。

 目を合わすと殺される、とか言われているのかもしれない。


「うむ。たしかにわらわはディニッサじゃ。だが、そうかしこまるな──」

「ディニッサ様!?」「我らの神が!?」「まさか!」


 またしても、言い終えることができなかった。部屋に次々とエルフが入ってきたのだ。そしてなにやら喚きながら、全員が下座げざっていく。


 なにこれ……。オレとユルテはエントランスホールで、土下座したエルフ達に囲まれることになった。


 あぜんとしているうちに、奥からまた誰かが駆け足で飛び込んできた。


 額の中央から生えている、白く長い角が特徴的な男だ。

 顔立ちがすこし幼い。十代後半というところか。また、他の者よりちょっといい服を着ている。責任者か?


「ディニッサ様! 罪はすべてこの僕、ケネフェト・ロニドゥにあります。他の者はどうかお許しください!」


「いえ、ケネフェト様だけに罪をきせるわけにはいきません。我々も同罪です!」


 ん? 意味不明な展開になっている。

 なんだこいつら、収賄でもしてんのか……?


 どういう事かと、ユルテ見ると、彼女は退屈そうにしていた。役に立たねえ。


「みな落ち着け! まず、ケネフェト、そなたがどんな罪を犯したか詳しく話せ」

「見ての通り、政務にルオフィキシラル教会の者を使ってしまいました」


「……?」


 ルオフィキシラル教会?

 なんのことだか、さっぱり分からない。


「しばし待て」


 オレはユルテを連れて、いったん外に出た。

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