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シスコンリーマン、魔王の娘になる  作者: 石田ゆうき
第1章 異世界へ。現状を知る
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上級魔法

 ユルテによる魔法教育は、大詰めに差し掛かっていた。

 下級、中級と習って、あとは上級魔法の説明で終わりらしい。


「上級魔法には、魔力固定と召喚の二種類があります。ただし、私には扱えないので実演はできません」


「……残念じゃ。召喚魔法が一番気になるのじゃが」


 オレを異世界に引きずり込んだのだから、召喚魔法を使っているはずだ。

 それに召喚魔法をきちんとマスターできたら、とりあえず日本に帰ることはできるかもしれない。


 このまま元の世界に帰っても、自分の体を取り戻すという仕事は残ってしまう。

 けれど、日本に行ければ陽菜の安否を確認できる。そこまでできなかったとしても、召喚魔法で声を届けることくらいはできるかもしれないのに。


「召喚はどこか他の場所から、なにかを持ってくる魔法です。物より生き物のほうが難しい、らしいです」


「あいまいじゃな?」

「上級魔法なんて、使える人がめったにいませんから」


 ユルテが苦笑した。

 一つ残念なお知らせが増えてしまった。そこまでレアな能力なら、他の人の魔法で帰還させてもらうのも難しそうだ。


「最後の魔力固定、これは他の魔法を永続化させる魔法です。また、物に魔法を込めることもできます」


 つまり、元素魔法で作った水や金属なんかを本物にできるってわけか?

 使いこなせれば、すごいことができそうだ。


 もう一つの使用法は、マジックアイテム作成ってとこか?

 天井で光っている宝石は、そうやって作りだされた魔法の道具なんだろう。


「さて、長々と聞いていただきましたが、ご理解いただけましたか」


「だいたいわかった、つもりじゃ。召喚と魔力固定と精神操作の3つを使いこなせるようになれば、元の世界に戻れそうじゃな」


 たぶん帰還には、魔力固定魔法が必須になる。

 仮に召喚魔法で異世界に移動できたとしても、魔法の持続時間が切れたら、元の場所に戻ってしまうはずだからだ。


「3種の魔法に加えて、魔力を増強するアイテムが必要でしょうね。ルオフィキシラルの家宝クラスの」


「ああ、あのでかい石ころみたいな道具か。……あの石ころはもう使えぬのか?」


「200年ほど待てば、石の魔力は回復しますけど」

「そんな待てるか。同じような魔道具を買うといくらくらいするんじゃ?」


「さあ、どうでしょう。魔王クラスの有力者しか持っていないでしょうし、売り主の気分しだいじゃないでしょうか」


「そうか……」


 なかなかに、やる気を失わせる情報だった。

 とはいえ、必ずしも道具が必要とは限らないだろう。


 魔法は自然に使える力だと言っていた。つまりこの世界の住人は、魔法の訓練などはしていないということだ。ならば、修練を積めばすごい魔法が使えるようになってもおかしくない。


 「内観の法」が有効だったことから考えて、瞑想や精神集中系の鍛錬が効果ありそうだ。……う~ん、こんなことなら、先輩に誘われたとき一緒にヨガ教室いっとくべきだったぜ。


「姫様、聞きたいことはいろいろあるでしょうが、そろそろ晩餐のお時間です。続きは食事が終わってからにいたしませんか?」


「わかったのじゃ。ただ、わらわはマナーとかよくわからんのじゃが」


 異世界の風習とか、わかるはずないし。

 この世界は、なんとなく中世ヨーロッパっぽい雰囲気だけど、まったく同じじゃないだろう。


 というか、同じだったら嫌だ。だってあっちは、かなり後の時代まで手づかみで食べていたはずだ。そういう文化を否定はしないが、現代日本に生きる人間としてはちょっとキツイ。


「ふふ。心配しなくても大丈夫ですよ」


 ユルテがオレを抱え上げながら、意味ありげに微笑んだ。

 その悪戯っぽい笑みに、不安がこみ上げてくる。


 姫様と呼ばれているくらいだ。

 きっと、特別なマナーの教育を施されているに違いない。

 正体を隠すという都合上、かなり問題になりそうだ。


「ユルテ、簡単に食事の作法を教えてほしいのじゃ」

「ダメです」


「な、なんでじゃ?」

「お腹がすいたので」


「……え?」


「お腹がすいたので、よけいな時間をかけたくありません。ぜんぜん大丈夫ですから、天馬の馬車に乗ったつもりで、気楽にしていてください」


 ……食事に誘ったのも、オレのことを考えてくれたからじゃなくて、単に自分の腹が減っただけだったのか。薄々察しはついていたが、ユルテは相当ダメな人だ。


 ──あげくに、使われた慣用句も不安を誘う。

 天馬の馬車ってのは「大船に乗ったつもりで」みたいな意味なんだろう。


 けどたしか、ペガサスから落ちて死んだ英雄とかいたよな……。

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