第八話「王都」
「ーーなるほど、クオンさんたちもなかなか、苦労してるんですねぇ。」
「そこまで大変ということはないですがね、苦労というなら一人で店をもっているアランさんの方が大変でしょう。」
「いえいえそんなことはーー」
俺は馬車に揺られながら、助けた商人、アランさんと話をしていた。
王都とやらの地理的な内容はエリーもしらなかったからな。
レイドはざっくり言うと三つに分けられている。
王都リディアを中心とした人の国、エルドア。
世界樹の周辺に集まった獣人の国、レイディア。
そして魔界という大陸にある魔人の国、ラフラム。
元々は一つの大陸だったが神の怒りが云々で三つの大陸に別れたとのこと。女神さんこえぇ。あ、今「人違いです。」という声が聞こえたような気がする。気のせいかな?
次にいまいった獣人や魔人についてだが、簡単に言うと人を基本として、獣人は力、魔人は魔法に特化しているようだ。
種族についてだが、蔑むやつもたまにいるが、基本友好的な関係で戦争などなく、いたって平和だそうだ。(戦争とかやってたら最悪だったな)
これが俺が聞けた情報。さすがにこんなこと聞くと怪しまれるから、ちょっと前まで山奥の小屋で親と暮らしていて、親が死んでしまったなら旅に出ることにした…という設定にしておいた。
ちなみにエリーだが、馬車のなかで寝ている。疲れたのだろうが…役に立たないなぁ。
「っと、見えてきましたよ。あれが王都リディアです。」
「ふむ、どれど…れ…」
……なにあれ?
「デッカイ壁しか見えませんが?」
「あはは、始めてみると驚きますよね。あれは王都を守るために作られた『女神の壁』というものです。巨大な魔物の対策に作られたと聞きましたが……」
ナニソレコワイ。
なんですか?魔物が進撃してくるんですかね?
それとも魔物を駆逐してやるんですかね?
とりあえずエリーを起こしとこう…。
「うーん、もう食べられませんよぉ。」
「何テンプレみたいな寝言いってやがる、おきろ」
「ふがっ!?…むぅ、なんですか~女神様~。」
気持ち良さそうに寝てたので鼻をつまんでやった。起きたか?寝ぼけてるっぽいが…まぁいいか。
「止まれ!」
門のところにつき、検問を受けた。
「貴様ら、どこから来た!」
「はい、私は隣町から来た商人のアランといいます。こちらの方々は旅の途中だそうで、縁があり王都までご一緒した次第です。」
「ふむ、身分を証明するものはあるか?」
「はい、こちらです。」
「ふむ…お前たちは?」
アランさんがついでに説明してくれて助かった。んで、身分証か。…持ってるわけないだろう。
「えっと、持っていません。こっちの少女もです。」
「あぁ、旅人といっていたな、ならギルドにでもよって代わりにギルドカードでもつくってもらえばいい。」
「はい、ありがとうございます。」
なるほど、ザル警備か、これもテンプレだな。
「それじゃ、書類を作らなければならないからこっちに来てくれ。」
…でもなかった。時間かかりそうだな。
「それではクオンさん、私はこれで。それではこれを」
そういってアランさんは金貨?を一枚渡してきた。
この世界の金の価値は、銭貨<銅貨<銀貨<大銀貨<金貨<etc.となっている。日本円にすると、一と十の位が銭貨、銅貨が百円、銀貨が千円と、そこから桁が一つずつ増えていく。金貨の上があるが、まぁ縁は無さそうだからそれはいいな。
つまり今回の報酬は10万ということかな?うぉぉ儲けた。
「こんなにもらっていいんですか?」
「ええ、構いません、命を助けていただいたし、退屈な時間を無くせましたから。」
「そうですか、ありがとうございます」
「いえいえ、それではこれで、買い物の際はアラン商店をどうかご贔屓に。」
そういってアランさんは去っていった。いい人だった。金が入ったらいこう。
「それじゃこっちだ、ついてきてくれ。」
「わかりました。」
そして俺は衛兵についていった。
「むにゃむにゃ、あれ?食べきれないほどのお菓子は~?」
いつまで寝ぼけてやがるこいつ…。




