第34話「しかしまわりこまれてしまった」
魔物が来た。
その知らせは先程まで苦しめられてきた人たちにとっては、パニックに陥るには十分なものだった。
「ひぃっ!」「いやだぁ!」「もうだめだ、おしまいだ…」
様々な悲鳴をあげながら、村人たちは逃げ惑う。なかには武器をとって戦おうと言うものたちもいたが、先輩方が止めていた。
「全員聞いてくれ!」
先輩冒険者の一人が、
「我々が魔物の足止めをするから避難をしてくれ!何人か護衛をつける。そこに立っている女性のところにあつまってくれ!」
と、避難誘導を始める。村人はゆっくりとだが、避難を始めた。
村人が避難を始めるなか、
「ほら!はやくいくわよ!」
「いやだ!おれは兄ちゃんと約束したんだ!」
と、言い争っている親子がいた。
「まだいってるの?あの人は来ないわよ!」
「嘘だ!俺たちを助けるって、約束したんだ!」
ふむ、訳がわからんが子供が行きたくないといっているらしい。
「もう!はやくいく!」
「わっ!」
結局最後は大人の力にものを言わせてだっこしてつれていかれた。
「なにしてる、エリーちゃんたちと一緒にお前も避難だ。というかお前の魔法は防御に向いてそうだしな。」
「あ、わかりました。」
言われた通り、おれも避難誘導をしているところにいくことにした。
*
「ーーあの人たちは大丈夫でしょうか。」
「…すくなくとも、経験がない俺たちよりは大丈夫じゃねぇかな?」
村から少し離れた街道を歩きながら、俺とエリーは話していた。
エリーは何度も村に残った人たちの心配をしている。
「ま、気にしててもしゃあないし、俺らは俺らで村人の護衛を頑張ろうぜ。」
「…そうですね。わかりました!私、がんばりまーー」
「クオンさん!エリーさん!大変です!」
そんなときに、リナが慌てたように走ってきた。なんだ?
「どうした?」
「ま、魔物がこっちにも…っ!」
「どこだ?」
「あっちです!」
リナが指差した方向に走っていく。
「なっ!?」
そこで、こちらに向かってくる魔物の群れを見た。数十、いや、数百くらいだろうか、それくらいの数が近づいてきていた。
「ひぃっ!」「なんで!」「村にいったんじゃないのか!?」
村人たちも騒然とする。
そんなとき、しびれを切らしたのか、魔物の群れから数匹ほど、こちらへ走ってきた。狼の魔物のようで、動きはなかなか早い。
「″阻め″″氷壁″」
「ギャン!?」
俺は速攻で魔物の進行方向に壁を作った。魔物はうまい具合に壁にぶつかり動きが止まる。そして、
「「グルァアア!」」
最初の魔物を皮切りに、魔物の軍勢が、押し寄せてきた…。




