第32話「ナニカアッタヨウダ」
翌日、俺、エリー、リナの三人はアランさんの馬車に揺られていた。
ちなみに、今回アランさんが扱っている商品は家畜とのこと。荷馬車のなかには馬や豚、そして子牛が乗っていた。案の定、エリーがドナドナと歌っていた。やめんか。リナも真似しだしてんじゃねーか。
…そのまま馬車に揺られていたら、アランさんが話しかけてきた。
「いやぁ、依頼を受けてくださってありがとうございます。前回の一件以来、どこにいくのにも護衛をつけようと思ったので今回も依頼を出したのですが、なかなか受けてくれる人がなぜかいなくてですねぇ。」
「そうだったんですか。俺たちとしては、手軽に温泉地に行けるというのでむしろ喜んで受けたいものですがねぇ。」
「あぁ、温泉ですか。私も仕事が片付いたら行きたいですねぇ。」
今回の目的地であるユケムリ村はその名の通り、温泉地となっている。
普通に歩いていくなら丸一日、馬車の場合料金を払って5時間ほどかかる。それが今回ただで行けるのだ、行かない手はない。今回依頼を受けた理由のひとつがそれに当たる。(大半はエリー+リナによるお願い(物理もあるよ)によるものだが)
「そういえばユケムリ村への送迎をやっているやつが、20、30人規模の送迎をを頼まれたと言って小躍りしてましたねぇ。」
「…へぇ、そうなんですか。」
それ絶対ファンクラブの皆さんですわ。リナの人気もあわせて前回の依頼のときの比じゃない人数だな。今回の依頼も安全に達成できそうだ。
ちなみに、行きすぎたファンとかいるんじゃないのかと思ったが、そういう暴走しだしたやつはほとんど存在しない。いたとしてもすぐに消され…矯正されている。話したことはあるがいい人たちばかりだった。(二人を泣かせたりしたらコロガスとか言われたが…)
おれはそんなことを思い出しながら、馬車に揺られていた…。
*
馬車に揺られて数時間(やはり盗賊や魔物には一体も出くわさなかった。)アランさんが報告をする。
「さて、あとちょっとでユケムリ村に着けますよ。」
「あ、わかりました。」「やっとですか…」「はーい」
返事をしたあとアランさんが少し考えるようにいった。
「それにしても、魔物や盗賊に襲われないだけでなく、スライム一匹見当たりませんでしたねぇ。女神のご加護でもあったのでしょうか。」
あ、それは先輩方が駆除してくれたからでしょうね。魔法の使える人もいたし、スライムの駆除もできるでしょう。
女神のご加護と言う単語を聞き付けエリーが笑顔で言う。
「私のお陰ですね!」
…間違ってないんだよなぁ。
そうこうしているうちに、ユケムリ村らしき影が見えてきた。温泉地というだけあって、人でにぎわっている…は…ず…?
近づいていくにつれて、とある違和感に気付く。
同じく気づいたエリーがつぶやく。
「なんか煙あがってません?ユケムリとかじゃなくて普通に黒いのが…」
「…そだな。」
そう、村には火の手が上がっていたのだった…。どういうことなの…。




