第30話「どういうことだってばよ」
「ーー申し訳ありませんでした!」
「…ええっと、とりあえず立ってください。」
クオンが床に沈み、変わらず王女が説教(絶叫?)を続け、その騒ぎを聞き付け、王子が帰ってきて誤解に気づいた王女がしたことは、土下座だった。クオンとしては年端もいかない女の子、しかも王女に土下座をさせるのは絵面にも体面的にもまずいと思い、王女を立たせた。
「ええと、間違いは誰にでもあるものですから、気にしないでください」
「しかし…」
「もう痛みもありませんし、大丈夫ですから…」
これがエリーならば、いじめる、もとい弄れるだけ弄るのだが、さすがにクオンも王女くらいの女の子をいじめる趣味はない。
「ほら、クオンも怒ってないといっている。だから立ってーー」
「うるさいです!もとはといえば兄様が悪いんですよ!」
「わ、私か!?」
「そうです!」
「す、すまん。」
王子も見かねて声をかけたところ、王女はなぜかおこり、兄である王子を叱る。それに対し王子は特に反論をせず(できず?)謝罪させられていた。この兄妹の力関係がわかる光景である。(先ほどの腹パンの件で分かり切っていたことだが。)
これで、持ち直したのか、王女はクオンに向き直り、もう一度謝罪をしてから王子に王のもとへ連れて行くことを伝えた。
「ええと、それでは俺はこれでーー」
「だめです、クオン様もついてきてもらいます。」
クオンはもう用はないと思い、帰る旨を伝えようとしたが、即座に王女に切って捨てられ、ついていくこととなった。
*
「ーーなるほど、クオン殿、重ね重ね、迷惑をかけたな。」
「いえ、こちらが勝手にやったことですから、気にしないでください。」
クオンは再び、王の前にいた。王子の警護をしたこともあり、謝礼をまた渡すというのを、必死で断っている。今度は金貨の一段階上である王金貨1枚を渡すというのだ。(ちなみに王金貨は一枚で金貨100枚分、つまり1000万の価値がある。この上にさらに白金貨という1億相当のものがあるのだが、さすがにそれには縁がないだろう。)
そんな大金を大したこともしてないのにポンポンと渡されても困る、というかクオンの精神的につらい。
なのでクオンは何としてもこれ以上謝礼をもらうことを断ろうとするのだった。
「ふむぅ…そこまでいうなら…」
(ふぅ、やっと引き下がってくれたか。)
やっとのことで王が折れ、王金貨を下げさせる。一段落かと思った矢先、王がこんなことを言い出す。
「では、昼には良いものを見せてもらったし…わが国の国宝を見てみるのはどうだ?一見の価値があるものがやまほどあるぞ?」
「国宝…ですか?」
(まぁそれくらいなら…美術品とか興味ないけど…)
心労も何もないのでそれを受け入れることにしたクオンは、王とともに、城の宝物庫(一つではない)を回ることにした。
「ここには大昔に魔王が現れた時に勇者がつかっていたという聖剣がおさめられておってな…」
(な、ながい…)
有名な画家が描いたもの、彫刻家が作ったものなどをまわり、ようやく最後であろう聖剣のある宝物庫まで来たときには、2時間ほどかかっていた。
そしてそこから王が勇者に対する雑学が始まり、15分程度、クオンは学生気分を味わい(校長の話と同じような意味で)やっと聖剣を見ることとなった…。
「では…」
王が意気揚々と宝物庫を開ける…そこには…
「な…っ!?」
某三つの三角形がイメージされるゲームのような剣をおさめる台座があった。
しかしクオンはとある疑問を持ち、王に問いかける。
「ええっと、これはどういう…」
クオンが王に疑問をぶつけたとき、王が叫ぶ。
「聖剣が…ない!?」
そう、おそらく聖剣が刺さっていたであろう台座の中心にはまるで周りの台座ごと聖剣を引き抜いたようなくぼみができていた。つまり、聖剣が存在していなかったのである…




