第29話「続く受難」
「ーーはい、今日の仕事はここまで!おつかれさま」
「「おつかれさまでしたー」」
お互いに間違われることが三桁に届きそうなとき、やっと仕事が終わった。それからクオンはいつもの量に王子の分を合わせた夕食を作り、食べ終わったあと、王子を城までおくることにした。
そして城への帰り道。暇だったクオンは今日の感想を聞くことにした。
「王子、今日はどうだった?」
タメグチなのは王子が頼んだからである。
「そうだなぁ、冒険者やギルド員にいろいろと聞けたし、なかなか実りのあるものだった。」
「そか。」
確かに冒険者たちは相手が王族であるにも関わらず(まぁクオンと間違えていたものが大半だが)しっかりと彼ら自身の意見を述べていた。
「今度は冒険者だけでなく、一般の民にも聞いてみたいな!」
「またやる気か…」
さらっと再犯の告知をした王子に、クオンはげんなりとした。
そうこうしているうちに城が見えてきた。
「そろそろだな。」
「あぁ…クオン。」
「ん?」
王子がクオンを呼び、顔をじっと見た。そして、
「クオン、今日は本当にーー」
「ーークオン様ぁ!」
「「ん?」」
名前を呼ばれたので揃って呼ばれた方向を見てみれば、朝にクオンを拉致った大臣、ラウルが走ってきていた。
「「げ」」
クオンは朝の件から持った苦手意識、王子は説教を受けそうという危機感から、同じ言葉を漏らした。
ラウルはそんなことは関係ないとばかりに、全力疾走し、突然のことに動けない、
「クオン様ぁ!」
「ぐはぁ!?」
クオンに飛び込んだ。もちろん王子は無事である。
(こういうのはリナくらいの子供がやるもんだ。いや、リナのはこの前やられて死にかけたけど…)
そんなことを思いながら、クオンは地面に倒れ込んだ。ダイの大人二人分の重さなだけあって、その衝撃はすさまじいものだった。
「げほぉあっ!?」
「もう逃がしませんぞ!」
クオンは肺の中の空気が押し出され、大きく咳をしているが、ラウルはそんなことは関係ないとばかりに、クオンを押さえつけていた。
そこで王子がラウルに声をかけた。
「あ、あの、ラウル?」
「なんですかクオン殿!いま王子を押さえるのに忙しいのです!」
「その王子は私なんだが…」
「だから忙しいと…今なんと?」
「それはクオンだ。」
「…」
ラウルはすぐにクオンを解放し、土下座で謝るということがあったあと、三人は城に入り(クオンは帰ろうとしたがラウルが礼が必要だといって連行した。)、ひとまず王子が着替えるために自身の部屋に入りクオンは広間に取り残された。
手持ちぶさたでいると、
「兄さま!」
という声が聞こえ、声のした方向を見てみると、王様の後ろに控えていた少女が立っていた。
(兄さまということはあの子王女だったのか、にしてもほんとよく間違われる。)
そんなことを思いながらクオンは訂正をしようとしたが、いきなり王女が駆け出した。
「にーーいーーさーーまーー!」
「え、ちょ、まっ!」
クオンが突然のことにどうしたらいいかわからず突っ立っていたところに、
「どこをほっつき歩いてたんですかコノヤロー!」
「ぐぼはぁっ!?」
腹にきれいなボディブローをもらった。
小柄ながらも体重が乗り、そこにさらに十分な助走を加えて繰り出されたものは、クオンを悶絶させるには十分すぎる威力を持っていた。
(ほんと、今日はよく間違われて痛い目に遭う…)
そう思いながら、クオンは膝から崩れ落ちるのだった…




