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神に向かってI want you !  作者: 真田 蒼生
第3章「時には波乱を」
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第28話「二人のクオンの受難?」

「ーーさて、着きましたよ。」

「ありがとうございました。」


クオンは馬車から降り、ギルドの前へ降り立った。馬車はそのまま帰っていく。


「さてっと、もうこんな時間か。やべぇやべぇ。」


時刻を確認すると、もうすぐ昼時、一番忙しくなるときである。クレアからお叱りをもらうことは確定だが、まずは一刻も早く仕事に入らねば。そう思いつつクオンはギルドに入っていった。


「すいません!ただいま帰りまし…は?」


しかし、ギルドに入ると目を疑うような光景が広がっていた。


「あ、いらっしゃいま…せ?」


クオンがもう一人いたのだ。そしてそのクオン?に応対されたクオンはなにが何だかわからず固まってしまう。クオン?も同様だ。


「あれ?クオンさんどうしたんですか?お客さんなら席に案内…を…。」


そのようすに気づいたリナが寄ってきた。そして、向かい合っているクオンたちをみて、


「く、クオンさんが二人いる!?」


そう叫ぶのだった。


「…なにがどうなってんのこれ?」


クオンはおそらく働いているのは王子であると察したが、それ以外、つまりなぜ王子がここにいるのか、なぜ働いているのかということに対して、疑問をぶつけるのだった。


「ーーなるほどつまりこういうことか。」


まとめるとこうだ。クオンが間違われて城に連れていかれる→エリーが王子を発見→ギルドへ連行→リナが別人と判断→しかし予期せず大量の来客→クレアの一喝「とりあえず働け」→いまに至る。

小さなこと?は気にしないクレアにクオンはすごいと思いつつ、王子と向き合っていた。(ちなみに昼のラッシュだが、これもクレアの一喝でそのままクオンが加わり捌くことになった。)


「とりあえず、ご迷惑をお掛けしました。」

「いえ、よい経験になりました。それにこちらも城の者が迷惑をかけたようで…」

「いえいえ、気にしないでください。謝礼ももらっていますし。」


…二人は真面目に謝罪をしているが、顔も声も一緒なので、まるで一人でやっているように見えてしまい、周囲の笑いを誘ってしまっていた。(現にエリーは耐えきれず笑っている。)

謝罪の後、クオンは王子に事情を聞くことにした。


「それで、なぜ城を出たんですか?」

「…私は」


王子は話し出した。


「私は、町を見てみたかった。いずれ王位は私に譲られるだろう。その時、町のことをなにも知らないではダメなのだ。しかし、外に出ようとすると必ず護衛の騎士がついてくる、それではなにも聞けない。だから抜け出したんだ。」

「なるほど…しかし王様は心配していましたよ?」

「…わかっている」

「ふむ、それではこれからどうするつもりで?」

「…できれば今日一日このままここで働かせてほしい。ここはよく人が集まる、だからいろいろな話が聞けるんだ。」

「…わかりました。では、仕事が終わり次第城までお送りします。」

「すまない」


基本進んでこういうことはやらないクオンだが、今回はやらなければならないと感じている。なぜなら、


(100万もらっちまった手前、放り出すとかできねぇ…)


金の力は偉大である。

そうして王子はそのまま仕事に戻ることになった。しかし…


「クオンさん!そこのテーブルにこれ持って行ってください!」

「わかった」

「あぁ…王子のほうです…」

「あ、クオンくん!ちょっといい?」

「なんですか?」

「あぁ…ごめん、王子じゃないほう」


名前が一緒なだけあって、呼ばれるたびに混乱が起こる。仕方ないので王子とクオンと呼びを分けたのだが。


「あ、王子!ちょっといいですか?」

「…俺はクオンだ。」


混乱が収まることはなかった…。

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