第27話「気まずい」
「…人違い…だと?」
「…はい。」
「…ではおまえは誰だと言うのだ…」
王の問いにクオンは答える。
「はい、確かに私の名前はクオンですが、最近王都にきて、暮らしだしたものです。いまは同郷の者とギルドで働いております。」
「…ふむ、それを証明するものはあるか?」
「私の着ていた服の中に入れている財布にギルドカードがあるのでそれを見れば…」
「おい」
「はっ、すぐに持ってまいりまーー」
「ーーこちらにございます。」
王に命じられ、さっそく取りに行こうとしたとき、先程のメイドが服を持ってきた。
すぐに財布を取りだし、中身を確認し、すぐにギルドカードが取り出された。
ギルドカードにはしっかりとクオンの名前と写真が乗っていた。(もっとも、名前も顔も似ているようなのでギルドカードしか価値はないだろうが…)
「ふむ、確かに…だが…」
王は悩んでいるようだ。そこでクオンはダメ押しをすることにした。
「では王様、私の魔法を見ていただけませんか?もちろん危険などはありません、ただ、私の使える魔法は珍しく、私以外に使用者がいないといえるものなので…」
正直、王の前で魔法を使うのはどうかと思ったが、これほど人違いであることを証明するものもない、なのでクオンは提案をしたのだが…
「…許そう、やって見せよ。」
「はい。では…”氷柱”」
「ほぅ…」
クオンは目の前に自分の身長ほどの氷の柱を作り出した。さらに、クオンは柱に手を当て、
「”変われ”」
「おぉっ!」
とあるものをイメージしながら、そう唱えた。
すると、氷はぐにゃぁっと歪み、形を変えていく。そうしてできたのは目の前にいる王とそっくりな像であった。
これは、クオンがリナに仕事を取られ、暇な時間ができたのでいろいろ魔法でやっていた時に出来るようになったものである。(これで商売できるのではとも考えている。)
像を作り、すこしして、拍手が巻き起こる。拍手をしているのは王だ。
「すばらしい、そこらにある銅像よりも精巧なものではないか。」
「ありがとうございます。それで、これで証明になったでしょうか?」
「おぉ、そうであった。確かに息子にはこのような魔法は使えぬ、クオン殿のいう通り、人違いであったようだな。謝罪しよう。すまなかった。」
「いえ、こちらとしても王と謁見できるなどそうそうあることではありません。良い体験になりました。」
「そういってくれると幸いだ。」
しばらく談笑した後、王が、
「申し訳なかったな、働いているといったが、今日も仕事があっただろうに…」
「いえいえ、気にしないでください。」
「そういうわけにもいかん、これを受け取ってほしい。」
そういうと、メイドがクオンの着ていた服と一緒に、袋を持ってきた。
中には金貨が10枚ほど、つまり100万入っていた。
「こんなにいただけません」
クオンは丁重に断ろうとしたが、
「よい、素晴らしいものも見せてもらった。これは礼だ。」
などと押し切られてしまった。
「では、帰りは馬車で送ろう。」
「何から何まで…申し訳ありません。」
「気にするな…あぁ、ではひとついいか?」
「なんでしょう?」
「私の息子はどこにいったのだ?」
「「「……」」」
その問いに答えられるものはいなかった…




