第二十話「少しかわいそう?」
「ここであったが百年目だぁ!覚悟しやがれ!」
「…ええっと?…俺何かしましたっけ?」
今にも襲いかかろうとしている盗賊たち、うん、まじで覚えねーぞ。
「あのー、誰かと勘違いしてないか?」
「とぼけてんじゃねぇ!間違いなくお前だ!」
人違いではないらしい、ふむ?なんだ?
「てめぇらが商人を逃がしたせいで、ギルドに俺らの制圧依頼が出ちまって、大変だったんぞごらぁ!」
「…えー」
「それって私たちあまり関係ないんじゃ…。」
ひどい逆恨みを見た。
「だからおとなしく、俺らにぶっ殺されろぉ!」
「いや、嫌に決まってんだろ。」
「そうですね、完全に逆恨みですし。」
どこの世界に殺されろと言われておとなしく殺されるやつがいるのか。エリーも呆れている。
さて、どうするか、また氷のドームにでも引きこもるかね。
「おっと、今回は前回とは違うぜぇ?こっちにも魔法師がいる。」
見ると、盗賊のボスの隣に、ローブに身を包んだやつがいる。ふむ、氷壁で魔法をうけたことはないからなぁ。どうするか。
「へっへっへ、これで万事休すってか?」
いいながらいつぞやのように囲んで距離を詰めてきた。うーむ、物は試しでやってみるかねぇ。
「″囲め″″氷ーー」
「見つけたぞこらぁ!」
とりあえず魔法を使おうとしたところで、怒鳴り声のようなものが響いた。声のした方を見ると、
「さんざん逃げ回りやがって、このギル様の手を煩わせるんじゃねーよ!」
大剣を担いだ大男がそこにいた。なんか見覚えがあるよーな…
「あ、クオンさん、あの人初日に割り込みしてきた人ですよ。」
「え?…あぁ。」
言われてみればそうだ、登録の時に割り込みしてきてカチンときたので転ばせてやったやつだ。思い出すとまだちょっと笑えてくる。
まぁそれはいい。あいつ何しに来たんだ?
「お前はっ!」
「へっへっへ、大人しく俺の名声のために捕まってくれや、まぁ死んでくれてもいいんだがよ。」
「じょ、冗談じゃねぇ!野郎共!こいつをやっちまうぞ!」
「「おう!」」
「たとえCランクの冒険者だとしても、この数にゃぁかてねぇだろう!」
「おうさ、戦いは数だよお頭ぁ!」
なるほど、盗賊がいってた依頼受けてたのか。にしても両方ともヤル気満々なことで。俺らを放置して、戦闘が始まりそうだった。てかあいつCランクだったんだな。見かけによらんと言うか、大口叩くほどはあると言うか。こういうのって雑魚なのがテンプレだろうに。
…まぁそんなことはどうでもいい。
「今のうちにいくぞ。」
「え、いいんですかね?」
「じゃあお前残る?」
「嫌です。」
とりあえず退散することにした。でも実際あいつ勝てんのかな?
「へっ、何人だろうがかかってきやがれ!」
「いい度胸だ!ぶっころしてーー」
「そのいきやよし、加勢しよう。」
「は?」
「…ふ、ふん!今さら一人増えようがーー」
「俺も加勢しよう」「俺も」「私も」「我も」
「……」
「「「「さぁ、覚悟はいいか?」」」」
「……逃げてもいいでーー」
「「「「我らが天使を襲おうとした罪、その身で味わえ!」」」」
「う、うわぁぁぁぁ!?」
……大丈夫そうだな。てかちょっと盗賊がかわいそうだわ。
さて、採集の続きと続き。




