第十話「ざまぁ」
「ーー御馳走様でしたっと。おいしかったですよ。」
「ありがとうね、お代は銀貨二枚だよ。」
「すいません、今これしかないので…」
「ありゃ、金貨かい。まぁしかたないね、ちょっと待ってなおつり持ってくるから。」
お代を金貨で払い、クレアさんからおつりをもらった後(親切にも袋に入れてくれた。)、おれたちはギルドの方の受付へ向かった。そこには18くらいの女性がいた。まぁ受付だろう。
「すいません、ギルド登録をお願いしたいのですg」
「どけや兄ちゃん。」
受付の女性に話しかけようとしたとき、突如大柄な男に割り込まれた。なんだこいつ…。
「ちょっとあなた」
「あぁん?」
「まぁおちつけエリー、すまんな、先どうぞ。」
「…ふん。」
案の定エリーが注意をしようとしたので止めた。確かに腹は立ったが、こういう輩はスルーするに限る。あとが面倒だ。
「魔石の換金を頼む。」
「わかりました。」
受付の人は無表情で応対する。魔石ってあれか、魔物を倒したら出てくるやつだっけ。しまったな、倒したスライムから回収すればよかった。ちなみに死体だが、大体しばらくしたら粒子っぽいのになって消えるらしい。
「それとコレット、今度おれと一緒に遊びにいかねぇか?」
男は換金してもらっている間、受付嬢、コレットさんを口説きだした。自由だなぁ。
「申し訳ありません、私はこの仕事が忙しいものでなかなか暇がもらえないのです。」
「そんなこと言わずによぉ、いいだろぉ?」
対する彼女の返答は素っ気ないものだった。まぁこんな荒っぽいやつとは一緒にいたくないわな。
それでも男は食い下がる。換金が終わってもしつこく言い寄っている。早く退けや。
「いい加減にしてください、これ以上続けるならこちらにもやりようがありますよ?」
「…ちっ、わぁったよ。またなコレット。」
彼女に脅されてようやく退いた。不機嫌だったようで、ちょうど後ろで待っていたおれに対し、わざと肩を当ててきた。これには普段温厚といわれるおれもキレる。
「”広がれ””氷床”」
「うおっ!?ぐぁっ!」
まぁさすがに正面からやりあうのは憚られるので足元の床を凍らせてやった。すると見事に転んでくれた。
後頭部を強打したらしく抑えて転げまわっている。ざまぁ(笑)
周りの人たちは笑いをこらえながらその様子を見ていた。
「うぐぐ…はっ!?」
ようやく自分が見られてることに気付いたのか、顔を真っ赤にして立ち上がり、そのまま早足でギルドから去って行った。もう一度言わせてもらおう。ざまぁ!
「なかなかひどいことをしますね…まぁ私としてはすっきりしましたが。」
「すっきりしたならいいじゃん。」
さて、そんじゃ改めてギルド登録でも…ん?
なんかコレットさんがじーっとおれのほうを見ているような…ばれたかな?
うぅむ、まぁばれて困るようなことじゃねーし、まぁいいか。
「この油断が後に大きな失敗につながることをこのときクオンさんは知る由もなかー」
「おい人の心読んで不吉なこと言うのやめぇや。」
つーかこいつ心読めるのか?と思ったら顔に出てたらしい。
分かりやすいんかね?




