ろまんちすと
以前書いた短編の彼氏視点のお話です。
甘いお話にしたつもり・・・・。
僕の彼女は現実主義者だ。
『花束?枯れたら捨てなきゃいけないでしょ?』
『婚約指輪って、結婚するとする機会がなくなるじゃない?もったいないよねぇ』
でも、僕は知っている………。
花屋の横を通るとき、視線が花の上を滑るのを。
指輪の特集があると、立ち読みしてあとで一人で買いに行ってることを。
だから、僕は今日だけ浪漫主義者になる。
100本の赤いチューリップを持って。
気づくかな?10で“とお”0で“輪”で、永久に。花言葉は、調べてもらおう。今やネットは手の中にある。
僕の心臓は、このチューリップの花束のようの真っ赤に燃えている。緊張と不安で。
指輪は用意してない。
こればかりは好みがあるから。婚約指輪と結婚指輪が重ね付けできるものを出しているブランドだけリサーチした。
彼女はどんな顔をするだろう?
現実主義とは正反対の僕の行動に、幻滅するだろうか?
でも、僕は逃げない。
今日だけは、浪漫主義者でいたいから…………。
おまけ
「どうして100本?重いじゃん!」
「うん、だから半分は僕が持つよ」
「なんでチューリップ?普通は赤いバラでしょ」
「バラのトゲで、君の手が傷つかないように、ね」
「…………なにそれ……」
「伝えたい言葉は、同じだから」
100にあなたを愛します。
彼女の顔は、チューリップみたいだった。
「指輪がないのもあれだけど、プロポーズが自宅って、ムード無さすぎじゃない?」
「だって、君は人混み嫌いでしょ?レストランも考えたけど………」
「???」
そっと彼女のほほに触れる。
「かわいい君を、他の人に見せたくないし」
「!!!」
ピンクの頬の君に、負けないくらい僕のほほも赤くて。
「料理より、君を食べたいし………」
声が震えた僕は、ちょっとカッコ悪かったかもしれない。
二人で眠った昨日。今日は、僕の腕の中に彼女がいる。
プロポーズの返事は、昨日腕のなかで何度も聞いた(言わせた)。
ふと、彼女の睫毛が揺れる。
「おはよう」
「ん、おはよう」
寝起きの彼女はとてもかわいくて、僕はその頬に口づけを落とす。
「あっ」
口づけの合間に彼女が声をあげる。それに構わず、僕は口づけを落とし、彼女を抱き締める。
「私、結婚しても仕事辞めないから。稼ぎが多いに越したことはないでしょ?」
とりあえず、どこまでも現実主義者の彼女の、口を塞いでしまおうと、僕は思った。
すみません。
作者的には甘いですが、どうでしたでしょうか?
バラの赤も、チューリップの赤も、愛するという花言葉だったので、ちょっと変わった花にしようかと思い、チューリップに。
バラより確実に重いですよね(汗)