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Target:2  ♯02

勢いで書いたので読みづらく、誤字脱字や、わけの分からないところ等々あると思います。

「やっと見えてきたぜ」

 ターゲットの車がようやく目視できるまでの距離に近づいた頃には、ピースの愛車はところどころに凹みや傷がついていた。


「あの車何とかして止められねえか? そろそろガソリンがやばい」

「無理よ、タイヤがあるわけじゃあるまいし。車体を狙ってターゲットに万が一の事があってはまずいの。近づいて乗り移りましょう」

「これだからタイヤの無い車は嫌いなんだ」


 こちらはアクセル全開、ターゲットの車両は法廷速度を守っている、追いつくことは容易かった。

 しかし車二台ほどの距離に迫ったときだった。

 ターゲットの車のサンルーフが開き、中から一人の男がでてくる。


「おいおいボディーガード付きかよ」

 黒いスーツにサングラスをかけた男。

 その男は手に銃を持っており、こちらに銃口を向けている。


「まずいわよ!」

 そして男は数発ピースの愛車に向かって射撃を繰り返す。


「なんてことしやがるんだ!」

 ピースは照準を絞らせまいと車を左右に揺らす。


「エスティー!」

「言われなくても」

 エスティーは白いワンピースの裾を上げると、太ももに巻きつけてあったホルスターから銃を抜き取る。

 そして窓を開け身を乗り出し、応戦。

 しかしエスティーの撃った弾は的外れな方へ飛んで行く。


「ちょっと揺らさないでよ!」

「仕方ないだろ? タイヤを撃たれたらこれ以上追いかけられないんだ」

 エスティーは軽く舌打ちをした。


「これだからタイヤのある車は嫌なのよ」

 再び身を乗り出し、風に髪をなびかせながら応戦するも、やはり当たらない。


「おいエスティー運転変われ」

「ちょっと、何を言って――」

「頼んだぜ」

 そう言うとピースはエスティーの返事も聞かずに、ハンドルから手を話す。

 そして腰から銃を抜き取ると、窓から身を乗り出した。


「さて、いっちょやりますか」

 ピースは迫り来る銃弾から身を守ろうとも、怯むことさえせずに照準を合わす。

 自分が傷つく事にさえ無頓着なのか、よほど肝が据わっているのか。


「っ!!」

 そんなピースの腕を、男が放った弾丸が掠める。


「ピース!!」

「大丈夫だ」

 ピースは痛みに少し顔を歪めたが、エスティーに心配をかけまいとしたのかぎこちない笑顔を見せる。

 いや、そうじゃない。

 ピースはこの状況を楽しんでいるのだ、その目を爛々と輝かせて。


「さあ、おねんねの時間だ!」

 そして引き金を引き、弾丸を放つ。

 ピースが放った弾丸は見事に男の肩に命中。

 男はその衝撃からか、車から転落し転がってゆく。


「どうだ俺の腕は」

 ハンドルを握りなおしながらピースが言う。


「何言ってるの、私のハンドル捌きがよかったんでしょう?」

「かもな。後は頼んだぜエスティー」

 ピースはアクセルをめいいっぱい踏み込み、ターゲットの車に接近する。


「任せて」

 エスティーは窓から出て車のボンネットに立つと、勢いよく前の車に飛び移った。

 その衝撃でピースの車は大きく揺れ、ボンネットが少し凹んだ。

「やってくれるねえ」

 ピースはどうしようもないというように、眉を上に上げた。



 エスティーは前の車の上に立つと、サンルーフを肘で割り中に進入する。

 彼女が中に入ってしばらくすると、車は急ブレーキをかけ停車した。


 その車から降りてきたのは男に銃を突きつけたエスティーと、胸の前で軽く両手を挙げた老人、ホーン・ブリッジ。

 それを見て、ピースも傷だらけになってしまった愛車から降りる。


「ったく手間かけさせやがって」

「……君たちは何者かね」

 低くしゃがれた声で老人が話し始める。

 その声はこんな状況下におかれながらも非常に冷静なものだった。


「警察か? 雇われの暗殺者か? それとも賞金稼ぎか?」

「俺達が警察や暗殺者に見えるか?」

 ピースはおどけた声でそう言ってみせる。


「いいや見えんな」

 ピースはそうだろと呟きながら、ポケットからタバコとライターを取り出した。

 そしてライターのフタを金属の子気味良い音と共に開けると、タバコに火をつけた。


「ふーっ悪いがお前さんには今晩の晩飯代になって貰う」

「ずいぶんと高価な晩飯だな」

 自分に懸けられた100万Gという賞金額を知っていたのだろう。


「しかしそれなら話が早い、ワシを逃がせ。賞金稼ぎならターゲットを逃がしてしまったとて誰にも咎められんじゃろう」

「バカ言え」

 ピースはホーンを捕まえようと彼に向かって足を進める。

 そんなピースの顔をじっと睨むように凝視するホーン。

 そしてハッとした顔で口を開いた。


「君は…………どこかで会ったかな?」

 その言葉にピースは足を止める。


「さぁな、俺はお前さんの顔なら昔っからテレビでよく見て来たが?」

「ふむ、スラムの治安改善を求めたデモ行進が行われたとき、最前線で大声を張り上げていたスラムの少年に面影が似ている」

「……人違いじゃねえか? 仮にそれが俺だったとしても、そんな昔の事おぼえちゃいねえな」

「そうか。まあそんな事はどうでもよい。もう一度言う、ワシを逃がせ」

 老人は真剣なまなざしでそう訴えかけてくる。


「そんな事をして俺達に何の得がある」

 ピースも少し真剣な面持ちでそう答えた。


「スラムの治安改善につながるやもしれん」

「……だから何だっていうんだ」

 ピースは鼻で笑う。

 治安が改善されれば事件が減る、つまりピースたち賞金稼ぎの仕事も減るのだ、ピースにとっては損でしかない。


「おかしいとは思わないかね」

「なにがだ?」


 ホーンは目を閉じゆっくりと話し始めた。

「技術者たちは生活をより良いものにしようと日々努力を続けている、そのおかげでこの国は素晴らしい発展をとげてきた。

 しかしその結果で得られるはずの恵みが与えられるのは、金持ちや都市部の人間ばかり。

 地方にはそれが行き渡らない、いや行き渡らせようとしない。

 そのせいで広がり続ける貧富の差」


 ホーンは目を開け、ピースに語りかけるように続ける。

「実はワシはスラムの出でな、あそこの事ならよく知っとる。

 強盗、暴力、強姦、殺人、違法な売買と、日常的に行われる犯罪。

 親の顔も分からない子供たち、スラムではよくあることじゃ、ワシとて父親の顔を知らん。

 しかしどうじゃ? これらのことが当たり前だということ事態が既におかしい」


「ああそうさ、あそこの子供たちは穢れることのないまま罪を重ねるんだ、生きるためにな」

 ピースは少し苛立ったように声を上げた。


「ワシはそれが許せなくてな、辛い思いをする人間をこれ以上作りたくなかった。

 だから政治家になったのだ。

 経歴も何もかもを隠して、内側からこの国を変えてやろうと。

 しかし現実はそう甘くは無かったよ」

 ホーンは少しうつむいた。

 空には真っ黒な雲がかかり、あたりは薄暗くなり始めていた。


「私の起こした行動や、政策はことごとく否定され却下された。

 それどころか何とかしようと無理やりもがいているうちに、気付けば周りに多くの敵を作っていた」

 ホーンは自分をあざ笑うかのように軽く首を振り、笑みをこぼす。

 そんな彼の言葉を、ピースはタバコの灰が服にかかるのも気にせず無言で聞いていた。


「そのとき思い知らされたよ。上のものは下のもののことなど、本当にどうでもいいものとしか見ていないのだと。

 国民の代表である政治家でさえ、いやもしかしたら彼らが一番そうなのかもしれない。

 彼らは自分の周りがよければそれでいいのだ。

 用途不明な施設の建設や、機能のほとんど変わらない最新の機械を導入するために、何百万何千万と金を湯水のように使う……」

 ホーンはいつの間にか涙を流していた。


「その半分の金でもスラムに回せば、助かった命などいくらでもあっただろうに!」

 彼は年甲斐もなく泣き叫ぶ。


「この国は根本から腐っている!

 ワシは……ワシはどうしても今のこの国が許せない、どうしてもスラムの治安をよくしたい……

 しかし内側からではもうどうしようもない。

 だから国外へ行き他の方法でどうにか出来ないかを模索しようと思う、この残り少ない命が尽きるまで」

 黒雲は案の定雨を降らせ、ピースたちの肩を濡らし始める。

 ピースがくわえたタバコも、いつしか火が消えてしまっていた。


「最後にもう一度だけ聞こう……ワシを、逃がしてはくれまいか?」

「……」

「ピース?」

 立ち尽くすピースにエスティーが不安そうに声をかける。


 ピースは消えてしまったタバコをホーンの方へ指ではじいた。

 タバコは宙を舞い、地面を2、3回跳ねホーンの足元に転がる。


 彼は泣いているのか、ただ雨で濡れてしまっただけなのか、とにかく無気力な目でホーンを見ていた。


 そしてフッと笑みを漏らすと腰から銃を抜き、ためらうことなくホーンに向かって引き金を引いた。


 雨の音を銃声が切り裂く。

 その弾はホーンの顔ギリギリのところを通り過ぎ、後方へと姿を消した。


「……!?」

 ホーンは口を開き、その場にへたり込んだ。


「ちょっとピース?」

 ピースはホーンのことも見ず、エスティーの言葉も聞かず、踵を返し車へと向かう。


「ピースどこ行くのよ!?」

「決まってるだろ家に帰るんだ」

 そう言って車に乗り込んでしまうピース。

 エスティーはわけが分からないというような顔で彼の後を追い、助手席のドアを開ける。


「ピース! しっかりして、どうしちゃ――」

「エスティー」

 彼女の言葉を遮るピース。


「今回の依頼条件は何だった?」

「生け捕りよ」

「そうだ生け捕りだ。でもアイツは今俺が撃った弾で死んだ、連れて行ったところで賞金は払われない」

「どういうつもり……?」

 答えに窮したのかピースはごまかすように胸ポケットッからタバコを取り出しくわえる。

 しかしそのタバコは雨のせいで濡れてしまい、火がつかなかった。


「ちっ……あーあれだ、ようするに……」

「待って言わなくてもわかるわ」

 エスティーは車に乗ると勢いよくドアを閉めた。


「ようするに、高級なご飯よりも、私の愛のこもった安いご飯が食べたくなったってことでしょう?」

 エスティーはそっぽを向いてそう言った。


「……ああそうだ、よくわかってるじゃねえか」

「当たり前よあなたのパートナーだもの」

 ピースはつかないタバコをくわえたまま、いつもの調子で敵わねえなと肩をすくめ、車のエンジンをかけた。



 ◆◇◆



「いってえな、ケガ人に何てことしやがる」

 上半身裸でソファーに寝転がるピースに向かって、エスティーが何かを投げたのは翌日のことだった。

 銃を受けた傷のせいだろう、彼の腕には包帯が巻かれたいる。


「何だこれ?」

 ピースは投げつけられたそれを拾い上げる。


「愛のこもった食べ物よ」

 袋を開けると、どうやら中身はチョコレートのようだ。


「チョコがか?」

「ほら、バレンタインデーよ」

 ピースはずいぶん遅いバレンタインデーだと心の中で呟きながら一口チョコをかじった。

「こりゃよく走れそうだ」

「そうでしょ? さあ、仕事に行きましょう」

「はいよ」

 やる気のない男ピースと、白い少女エスティー。

 賞金稼ぎのコンビ”DOGS”は今日も町を駆け抜ける!


 BANG!!

ここから更新されるかは分かりません。

ひとまず完結にしようかなと思います。

読んでくださった方ありがとうございました。

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