ファンタジー×武器③
ファンタジーの戦士が剣を使うとか、ナンセンスという事を聞くと、まあそうだよなぁ、と納得する部分もある。
やはり現実の武器は、対人を想定しており、人間の質量を軽く超えるモンスター達には、通用しないという論理は、もっともであると思う。
だけどもやはり、読む側は人間なのだ、だから携行する武器も、せいぜい長剣ぐらいのほうが、想像上しっくりくる。
あと迷宮に潜る、長距離を移動するなどのシチュエーションを考えると、杖よりも長い得物を持ち歩くのは、想像するだけでも面倒であり、欲望赴くままを描く、最近のファンタジー小説には合わないとも思う。
その結果、コンパクトなのに威力を発揮する魔法の武器に、人気が集中するのも当たり前かも知れない。
私も異世界転移するなら、魔法の短剣の一本くらいセットで欲しいところだ。もちろん持つだけで強くなれる能力付きで、あと美人有能従者と、えこひいきしてくれる権力者、そしてちょっとエロい宿屋の女将さんなんかに囲まれるならば、行ってやっても良いかな? と一考してやらん事もない……ハッ! 心の声が文字となってしまった。軌道修正↓
じゃあどんな武器がリアルになるのか? 先ず筆頭にあがるのは、槍、そして弓矢ではなかろうか?
人間同士の戦争でも、銃が台頭してくるまで、この二つが花形だったと思う。全くなんの根拠もないが、そう思う。
だが相手は異世界のモンスター、空を飛ぶ大型獣もいれば、火を噴くドラゴンもいる。そんなやつに槍が届くか? 私が兵士ならば、絶対に嫌だ。だって槍もって熊と対峙するだけでも、檻ごしじゃないと嫌だもの。
もしくは罠に掛かった獣のトドメとか、それも大概は銃まかせだろう。
そうなるとやはり魔法の出番か。遠距離攻撃に魔法と弓矢。そういえばこの二つの棲み分けも、ファンタジー内では中々難しい問題を孕んでいると思う。
弓矢は結局軽い矢しか放てないし、そこに魔法でもかかっていなければ、一発で獣を倒せるかどうか? くらいの威力が関の山だろう。
それに対して、MPという縛りはあるものの、範囲攻撃も出来る魔法は、ファンタジーの花形。
じゃあ弓矢使いにどんな利点を持たせるか? モブ扱いになる事も多いと思う。
だがファンタジーの定番キャラ〝エルフ娘〟には、断然弓矢が映える。
この一点をもって、弓矢という存在は、ファンタジー界において、燦然と輝きを放つのではあるまいか?
つまり、効用よりも見栄え、やれる事よりも、やりたい事。所詮は魔法という訳のわからないものに、矛盾点の全てを放り込む、ファンタジーというごった煮鍋に〝この状況が好き!〟という熱以上の武器は無いのかも知れない。
だが、厨二病を数十年拗らせ続けると、リアリティーの下敷きの無い、軽薄な設定は、読んでいても脳内を滑っていく。
こうしてリアルと見栄えの狭間にさいなまれながら、各々好みのシチュエーションを作り上げていく。その中で、剣というのは、やはりシンボライズされたファンタジー武器の王道なのかも知れない。
ところで最近はゲームの影響か、ハンマー系の武器が優遇されている気がする。
一昔前ならば、ハンマーを持つ戦士といえば、デブ、大振り、鈍感、大食い、骸骨被りがち……などなど、主人公の引き立て役的な立ち位置だった、と思う。少なくともカッコよく活躍するハンマー戦士は記憶にない。
だが、最近はダメージの大きさからか、ハンマー戦士を画像などでも偶に見かけるようになってきた。
だけど自分がそうなりたいか? となると、中々難しいと思う。熊と対峙するのに、大型ハンマーを渡されたら……俺なら殺してくれっ! と思うだろう。
せめてその柄に魔力が仕込まれていて、敵を眠りに誘う効果が有るとか、重力が操れて、振り上げ→超軽、振り下ろし→超重、みたいな仕掛けが有るとか。
ちょっとでも触れたモンスターを操れて、それが人間にも作用して、有能な女戦士や巨乳神官、宿屋の女将さんや、エルフ娘を連れて、ウハウハの異世界ライフを確約してくれる機能が無いと、とてもじゃないけど戦える気がしないなぁ。
それでも異世界に行きたくないけどね。