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子供×武器

 私は子供の頃にチャールズ・ブロンソンのスーパーマグナムという映画を見て以来、〝備えよ常に〟がモットーのスーパーディフェンシブ・ボーイになってしまった。


 後に自分では〝ブロンソンの呪い〟と呼ぶ事になるこの刷り込みは、未だに解けていないのではないかと訝しむほど、根深く残っている。


 何せスーパーマグナムの世界では、ギャングが常に女を狙い、主人公をはめようと嗅ぎ回っている。

 主人公に協力する男の恋人はレイプされ、主人公の恋人は殺される。

 そして主人公は知り合いから武器を取り寄せる、44口径マグナム弾をぶちかますオートマチックピストル〝スーパーマグナム〟を。


 この映画を日曜ロードショーで見た私は、この間みた、ダーティーハリーの猟奇殺人犯の話と複合し〝やっぱり〟との結論に至る。


「人は常に備えなければならない、武装せねば食い物にされる、平和ボケの日本にドップリと浸っていると、いずれギャングがやって来て、恋人を殺される羽目になるに違いない」


 ここに至ってブロンソンの呪いは八歳の少年の心に根を張る。


 次の日から早速行動した。家にある武器になりそうな物を漁った私は、碌な獲物が無い事に愕然とする。


 すりこぎを見つけたが、何と無く力の無い小学生には、棒などの獲物は扱いきれないと判断し、刃物が良いとの結論に至る。


 台所の出刃包丁を掴んだ私は、しかし、両親にバレた時に説明がつかないと元に戻した。家の父親は鬼の様に怖いのだ。一緒に悪さした友達ごとぶっ飛ばす位に。


 結局、選んだ刃物はオルファのカッターナイフだった。


 幅の狭い、カチカチと押し出すタイプの白柄のカッターナイフ。


 その日から私は〝カッター少年〟となった。


 常にカッターをポケットに忍ばせる、風呂に入る時などは、最も隙が出来る訳だから、当然持ち込んだ。


 脳内シュミレーションもした。素振りもした、姿見の前で米の字を描くように切り上げ切り下げを日課とした。


 標的は勿論大人、急所の研究にも余念がなかった。


 ブロンソンの呪いはここに結実する。



 小三になると、オータ君いう〝悪友〟と書いて〝ばかとも〟と呼ぶ存在とつるんだ。


 オータ君とは、スカートめくりやパンツめくり、夜中の徘徊、チョロQをパクッて全種類集めるなどの悪逆非道の限りを尽くした。


 その中で、備えよ常にを合言葉に武器作製にも取り組んだ。


 何せお金が無い。一日50円のおこずかいは、キン消し&駄菓子購入費として吹っ飛ぶ。


 金をかけずに武器を手に入れるには作り出すしか無かった。


 必要は発明の母、家にある五寸釘をチョロまかした私達は、線路をアンビルにして、石で叩いてナイフを形作り、焚き火で焼き入れして、ドブ川で急速冷却すると、細い竹の棒をハンドルとして括り付ける。


 クギナイフの完成である。


 炭素不足の釘では全く焼きは入っていなかったが、見よう見まねで作ったナイフに興奮した。


 こうして私はクギナイフ少年へとランクアップした。


 鉄道関係の方すいません、でも、昔の子供は線路で色々作ったのです。石を置くなどの本気の悪行は断じていたしませんでした、あしからず。


 その後、中学にして、ビバホームにて購入した牛骨ハンドルのフォールディングナイフをポケットに忍ばせた私は〝フォールディングナイフ(小)少年へと着実に成長し、高校入学を迎える。


 そろそろ子供×武器のカテゴリーからは外れると思うので、〝さいとうたかをのサバイバル〟を読んで更に加速した高校時代の話「学生カバンには何時でも手斧を」はいずれまた。


 それにしても、よく人を刺したり切ったりしなかったものである。(その代わり自分はよく切ったが)


 私の子供時代は、街中にカツアゲが蔓延し、不審なおっちゃんが急襲してくる鉄パイプおじさん等の話もよく聞いた。

 実際カツアゲにも何度か会った。

 不良に囲まれ暴力を振るわれる事もあった。


 なぜ、私は過剰防衛しないですんだか?


 答えはたまたまである。カツアゲの時は通行人のオバちゃんにすがって助けて貰い、不良に囲まれた時は恐ろしくて何も出来なかった。


 そして、親父に言われていた「お前が人様を傷つけたら、お前を殺して俺も死ぬ」と言った親父の言葉が何時も心の何処かにあった気がする。何せ親父は恐ろしかったのである、それを聞いた時は『この人本気だ』と本能で察知する位に。

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