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弱者を狙うコンドル

話には、よく出る酉騎士団との共同作戦です

「酉と共同作戦を行うのか?」

 思いっきり嫌そうな顔をするテンダ。

 オクサは、普通に頷く。

「はい。今回は、軍に潜む、ブルースピアの過激派の洗い出しです。知っていると思いますが、ブルースピアは、軍に多くの信者が居る宗教です。過激派の人間の人数は、想定出来ませんから、ここは、安全策をとって、酉騎士団に協力を要請する事になりました」

 嫌な空気が流れる。

「質問、そういう内部監査は、戌騎士団の仕事じゃないんですか?」

 マンカの言葉にヒャクリが複雑な顔をして言う。

「確かに内部監査なら、間違いなく戌の仕事なのですけど、軍と十二支騎士団は、別組織なのです」

 マンカが首を傾げると、テンダが呆れた顔をして答える。

「元々、レイ帝国は、急激な拡大化によって、軍の管轄範囲が曖昧になった。当然、権力を欲しがる奴等は、自分達に利益の為に、軍の組織を歪めやがった。無意味な衝突や、軍の配備のお粗末で、多くの被害が出た地域もあったんだ」

 その説明の後ろで、クシナダが、紙芝居形式に当時の映像を投射する。

「軍を地域別に配置し、命令系統を、目的毎に分けられた別組織が受け持つ事になった、それが十二支騎士団なのです」

 オクサの解説に納得した顔をするマンカ。

「つまり、軍は、駒扱いって事だよね」

 オクサが苦笑いをし、テンダが嫌そうな顔をして言う。

「そう、はっきり言うなよ。とにかく、そういう状況だから、十二支騎士団は、軍に命令権あるが、軍内部に対する直接干渉は、禁じられているんだ」

「ですから今回の任務も、軍に対する調査では、なく、危険指定宗教団体構成員の調査なのです」

 オクサの説明にスリーナがお姉さま顔で言う。

「大人には、複雑な事情あるのよ」

 テンダが苦笑する。

「だったら、どうしてオクサが他の騎士団では、なく、酉に協力を求めるかもわかってるんだろうな、大人のスリーナ団員」

 スリーナが言葉に詰まらせていると、ミリオがフォローする。

「他の騎士団、特に寅や戌騎士団では、軍との連携も強く、情報漏れの危険性があるからです」

 イレブが強く頷く。

「そこら辺は、表面的には、関係ないって事になってるが、寅や戌専門の軍の部隊があり、人員も大きくやり取りしてるって噂が、士官学校にもあったな」

 新米達の言葉に苦笑するしかない先輩騎士の一人、オリがいう。

「酉は、ハゲタカ騎士団の異名をとるほど、横入りが多いから、現地の軍を接収する割合の高い上に、手柄を自分達の物にしているから、軍には、思いっきり印象が悪いんだよ」

 テンダが心底嫌そうな顔でオクサを見る。

「嫌ってるのは、軍だけじゃない。特にうちは、手柄を横取りされたばっかりだからな。団員の中にも反発が強いぜ」

 その場に居た団員が頷くと、オクサが真面目な顔をして言う。

「騎士団は、何の為にあるのでしょうか?」

 団員達が戸惑う中、ヒャクリが答える。

「全ての騎士は、陛下と帝国の為にあります」

 オクサが頷く。

「僕達の感情より、帝国の発展を優先する。それが全てです」

 団長の正論に、誰も反論できない。



『いっその事、単独でやった方が良かったのでは、ないのか?』

 エースの言葉に、オクサが苦笑する。

「人手が絶対的に足りていません。元々騎士団と軍は、友好的な関係では、ありません。事が発覚した後、反抗してきた敵の数次第では、こちらに、甚大な被害が出ます」

 エースが大きく溜息を吐く。

『それにしても、ブルースピアにも困った奴等が多い。あそこの神様は、元々邪神だった経歴を持っていたからしかた無いがな』

 遠い目をするオクサ。

「神様。決して手の届かない存在。しかし、我々の日常に複雑に絡み合ってきますね……」

 エースが頷く。

『魔磨の件ほど、あからさまな干渉は、そうそうないが、特に戦いのことになれば、少しでも許容範囲を越えれば、八百刃様の干渉が始まる。人に知られる事無く、それが行われ、全ては、闇に消えいく。前回のハチバの干渉もその類であろう』

 オクサが神妙な顔をして、ヤマタノオロチが在る方向を見る。

「僕達も気をつけないといけませんね」

 エースが複雑な顔をする。

『念の為に、卵料理屋でも作るか?』

 眉を顰めるオクサ。

「なんのお呪いですか?」

 エースも不真面目な顔をして答える。

『よく知らないが、ワンが厄介になっていた世界では、神様に近付いて欲しくない物がある場合に、近くに卵料理屋を作る事になっているらしいぞ』

 苦笑するオクサとエースあった。



「それでは、今回の共同作戦に乗ると言うのですか?」

 温和そうな顔をした、角だけしか無い、低級竜人の中年男性の言葉に、大きな翼を持った物凄い美形な竜人が頷く。

「あれは、手柄に執着しない。正直、私には、考えも出来ない奴だが、使えるからな。この私、酉騎士団、騎士団長、サーギ=イカロンが陛下にお褒めの言葉を貰う為のな」

 美形の竜人、サーギの言葉に温和そうな竜人、ミミッツが言う。

「しかし、今回の作戦は、辰騎士団が主動。成功しても、あちらの手柄になるのでは?」

 サーギが妖しげな笑みを浮かべて言う。

「そこは、お前に頑張って貰うつもりだ。丁度いい、鴨が居るからな」

 サーギが、スリーナの写真を見せる。

「辰騎士団の団員の一人で、マンカ皇女とも仲が良いらしい。こいつを上手く使えば、相手の失敗を誘えるだろう。頼んだぞ」

 ミミッチが笑顔で頷く。

「お任せください」



「現状の所、作戦は、順調に進んでいます」

 ヤマタノオロチのブリッチで報告するミミッチに、頭を下げるオクサ。

「すいません。酉騎士団の副団長のミミッチ=イカロ殿に御足労おかけしたみたいで」

 ミミッチも慌てて頭を下げる。

「そんな、頭を下げないて下さい。辰騎士団の団長に頭を下げられる程の者では、ないのですから」

「いえいえ、そんな……」

 そんな実の無い会話を聞きながら、オリが肩を竦める。

「ギスギスした雰囲気も嫌だけど、騎士団の幹部同士が、頭を下げてる光景も見たくないな」

 スリーナの所に話をしにきていたマンカが言う。

「噂ほど、険悪な人達じゃない見たいだね」

 テンダが傍に来て、小声で言う。

「油断をするな。酉騎士団のミミッチ副団長は、鷹の隠し爪って呼ばれる、暗躍者だ。そいつが態々、こっちの旗艦に来るということは、裏で何か企んでるぞ」

「とてもそんな悪人には、みえないけどな」

 スリーナが呟いた時、ミミッチが顔を向ける。

「君、すまないけど、ヤマタノオロチの案内をお願いできないかい?」

「あたしは、別に良いけど、良いんですか?」

 オクサが頷く。

「はい、お願いします」

 出て行くミミッチとスリーナを見送ってからテンダが言う。

「良いのか? 絶対何か仕掛けてくるぞ」

 オクサが極々当然な顔をして答える。

「ですから泳がせたのです。ヒャクリに尾行をお願いしています」

 テンダが肩を竦める。

「忘れてた。うちの団長は、笑顔の人形師だった」

「なんか、狐と狸の化かし合いみたい」

 マンカの言葉に、オリが遠い目をして言う。

「そういう世界なのよ」



「次に行くのが、艦載機ドッグです」

 スリーナが通路を歩きながら説明する中、ミミッチが言う。

「君は、いまのままでいいのかい?」

 その言葉に、スリーナが首を傾げる。

「どういう意味ですか?」

 ミミッチは、淡々と続ける。

「新しい団員として、副団長の弟が入ってきたそうですね?」

 スリーナが頷く。

「はい。多分、直ぐに幹部になるんでしょうね」

「間違ってると思いませんが?」

 ミミッチは、微笑みながら問いかけると、スリーナは、あっさり答える。

「思いません。家柄も実力の一つですから」

 少し驚いた顔をして、ミミッチが言う。

「どうして、そんな風に思うのですか?」

 スリーナが少し困った顔をして言う。

「能力が同じなら、家が実力者の方が、色々と便利ですよ。あたしは、家のコネがないですから、出世は、難しいですね」

 普通に答えるスリーナに、内心舌打ちしながらミミッチが言う。

「家の力、生まれだけの力に、どれだけ意味があるのですか? 真に問われるのは、己の能力だと思いませんか?」

「能力があればでしょ? あたし、自分が無能だと思いませんけど、幹部になれるほど有能だとも思いません」

 スリーナがあっさり答えるとミミッチが戸惑う。

「どうして、そう割り切れるのですか?」

 スリーナが笑顔で答える。

「だって、うちの幹部って、皆、物凄い能力持ってますもん。勝てるとは、思えないです」

 呆然とするミミッチあった。



「事前に、相手の話に乗るように言っておいた方が良かったですかね?」

 ヒャクリの言葉に、オクサが首を横に振る。

「スリーナに芝居は、無理ですよ。それより、本来の作戦の方は、どうですか?」

 ヒャクリは、資料を確認しながら言う。

「調査の方は、順調ですが、機密性が落ちてきています。もう直ぐ発覚すると思われます」

 オクサは、少し考えてから言う。

「それでは、餌を投げましょう」



「あたしが、軍に出向するんですか?」

 スリーナが嫌そうな顔で答えると、ヒャクリが冷たい目で告げる。

「懲罰と思ってください」

 そういって、立体映像のクシナダを見る。

「またやったんですか?」

 ミリオが呆れた顔をして言うと、拗ねた顔をしてスリーナが言う。

「だって、マンカと二人でゲームやっても面白くないんだもん。クシナダだったら平等に、ゲームマスターしてくれるんだよ」

 イレブが大きな溜息を吐く。

「それにしたって、旗艦のメイン人工知能を使って遊ぶなんて、しますか?」

「他に影響でないんだから、いいじゃない」

 スリーナのクレームに、ヒャクリが睨む。

「そういう問題では、ありません。クシナダには、辰騎士団の全ての命がかかっています。万が一にもトラブルがあったら困るのです。遊びの為に、不要な危険を負う可能性は、見過ごせません」

 スリーナが横目でマンカを見る。

「マンカだって一緒にやったじゃん」

 マンカは、そっぽを向き、ヒャクリが止めをさす。

「マンカさんは、外部の人間ですので、別個のペナルティーを負って頂きます。これは、決定事項です」

 そしてスリーナが軍に出向する事になった。



 軍でのスリーナの扱いは、それは、複雑なものであった。

 元々、騎士団からの出向とは、表向きは、相互理解を行うための物であるが、この場合、どう考えても監視、下手をすれば監査にあたる行為が行われる筈であるが、スリーナには、基礎トレーニング以外の作業を振らないように、指示が来ている。

 軍の方でも、どんな意味があるのか、理解できないで居た。

 中には、直接スリーナに質問する人間も居たが、スリーナが正直に、旗艦の人工知能を遊びに使ったと答えるたびに、信用度が減り、更なる疑心暗鬼を産む事になる。

 その日も、スリーナが基礎トレーニングを行っていたが、そこにミミッチが面会に来た。

「懲罰を受けているそうで」

 スリーナが小さく溜息を吐く。

「本当に、面倒ですよ」

 ミミッチが意味ありげな顔で言う。

「表向きの話は、結構です。そちらの作戦は、どうなっているのですか?」

 首を傾げるスリーナ。

「作戦って、なんですか?」

 ミミッチが苦笑する。

「おとぼけは、お止めくたさい。作戦行動の一つなのでしょう?」

 スリーナが首を横に振る。

「関係有りませんよ。単なる懲罰です」

 溜息を吐く、ミミッチ。

「そういうことにしておきましょう。出世する気は、ありませんか?」

 スリーナが驚いた顔をする。

「引抜だったら無駄ですよ。あたし、出世できるほど有能じゃないですから」

 ミミッチが一枚の紙を渡す。

「後で燃やしてください。もし、そちらの作戦を教えていただければ、後の事は、私の方で良い様にします」

 紙には、ミミッチの秘密アドレスが書かれていた。

「どうして、こんな事をするんですか?」

 スリーナの当然の疑問に、ミミッチが答える。

「遠縁とは、いえ、同じ家名を持つ者。少しても協力しあうべきだと思うのですよ」

 悩む、スリーナだったが、少ししたところで、手を叩き言う。

「そういえば、こんどの週末に、マンカがこっちに遊びに来るって。その時、護衛も含めてオリさんやテンダさんも来るって言ってましたよ」

「なるほど、よく解りました。感謝します。今後の事は、期待していて下さい」

 そう言って去っていくミミッチを見送りながら、スリーナが呟く。

「この話って、別に黙ってる必要ないって言われてるけど、作戦行動だったのかな?」



「よく聞きだしました。辰騎士団の重要な作戦の筈。その情報を軍に流し、それで動く人間を監視して、実態を掴み、一網打尽にします」

 サーギの言葉にミミッチが頷く。

「奴等の作戦を潰し、こちらの手柄にする。見事な作戦です」

 サーギがふと気付いた顔をして言う。

「ところで、問題の少女は、どうするのだ?」

 ミミッチは、肩を竦めて言う。

「真実を全て、辰騎士団に伝えて、恨みの矛先になってもらいます」

 サーギが苦笑する。

「一方的に利用された事に、何時気付くか、楽しみだ」



 そして、問題の日。

「スリーナ、遊びに来たよ」

 マンカがそう言って、軍の施設に入る。

 緊張が周囲を満たす中、極々普通にスリーナが迎え入れる。

「遊び場所、選択しておいたよ。行こう!」

 そして、スリーナとマンカとその護衛のオリが去った後、テンダが軍の重役の所に行き、リストを見せる。

「このリストに上がっている人間が、ブルースピアの過激派の可能性が高いのて、直ぐに拘束して下さい」

 意外すぎる行動に、驚く軍上層部。

「何の根拠があっての事ですか?」

 テンダがあっさり答える。

「何者かは、知りませんが、今回の訪問を監査だと噂を流した人間が居るみたいで、監査に備えて大きく動いた人間が居たのですよ。その際にメンバーのリストがこっちの手に入りましてね」

 言葉を無くす軍側の、リストに上がった人間が、怒鳴る。

「あの噂自体が、囮だったのか!」

 テンダが笑みを浮かべて言う。

「実際、スリーナに意識行き過ぎで、本当の調査員へのチェックが甘かったのは、助かったよ」

 言葉を無くす、軍の人間にテンダが告げる。

「スリーナが言っていた事は、全部本当だよ。後始末、頼んだぞ」

 去っていくテンダの後ろで、ブルースピアの幹部が拘束される。



「それにしても、よくこんな明白な囮に引っかかりましたね?」

 戦闘準備に忙しい、ブリッチでヒャクリが呟くと、オクサが答える。

「スリーナだからです。他の人間だったら、自分が単なる囮だと言う認識が出て、相手側もそれに気付きます。スリーナは、そんな裏に気にしないで、行動していた為、逆に囮だと解らなくなったのです。その上、酉騎士団が、今回の訪問を妖しいと、内通者に流してくれたので、相手に大きな動きを引き出せたのです」

 ヒャクリが同情する様な目で、傍に来ている酉騎士団の旗艦、レッドフェニックスを見る。

「こちらを陥れようとした行動すら、計算に入れられていたなんて、思いもしなかったでしょうね」

 そこに、サーギから通信が入る。

『アテナス騎士団長殿、これは、どういうことですか?』

 すまなそうに頭を下げるオクサ。

「共同作戦だったのに、連絡が遅れですいませんでした」

 サーギが怒鳴る。

『独断先行が許されると思っているのか!』

 オクサが首を横に振る。

「そんなつもりは、ありません。酉騎士団の協力があってこその成功だと思っています。今回の作戦は、あくまで両騎士団の共同作戦。それで問題ないと思いますが」

 サーギが忌々しげに言う。

『今回は、そういうことにしておいてやろう。しかし、次は、無いぞ』

 通信が切れた時、オリやテンダが帰ってくる。

「もう動き始めてる!」

 ヒャクリが頷く。

「リストによると、二十隻以上の戦艦が、ブルースピアの支配下にあります。軍の方は、命令系統に混乱があり、戦力は、あてにできませんから、こちらと酉騎士団だけで、鎮圧して下さい」

 オリは、そのまま艦載機ドッグに向かう。

「任せておけ、酉の奴等の出番が来る前に全部撃沈してやるから」

「撃沈するな! 一応味方なんだから、航行不能にすれば良いんだからな」

 テンダが怒鳴る。

「撃沈するだけなら、ヤマタノオロチの攻撃能力だったら、ハゲタカの力なんて要らなかったって事、気付いてないのか?」

 テンダの呆れた表情での言葉に、ヒャクリが溜息を吐いて言う。

「出撃前に、釘をさしておきます」

 そして、オクサが言う。

「アレロス副団長は、ランドドラゴンで、後詰めをお願いします」

 テンダが頷く。

「こっちの出番がない事を期待してるぜ。まあ、あのハゲタカが功を焦って、穴作るのは、目に見えてるがな」

「母竜モードに移行し、カラーズドラゴンの出撃、終了後に飛竜モードに移行して下さい」

 オクサの指示にヒャクリが指示を出しながら、小声で質問する。

「援護射撃は、無しですか?」

 オクサが困った顔で言う。

「ヤマタノオロチでは、攻撃力が高すぎます。軍事施設が多いここでは、周りの被害の方がきついです。それと、酉騎士団の活躍の場所が無いといけませんからね」

 ヒャクリが大きく溜息を吐く。

「もう少し、騎士団同士の仲が良くなりませんかね?」

「今度、懇親会でも開きますか?」

 オクサの言葉に、ヒャクリがきっぱり答える。

「私は、絶対に出ませんから」



「ブルードラゴンワンからエイトが、先行し、牽制。次にレッドドラゴンワンからエイトが出る。最後に、グリーンドラゴンワンからエイトが出て、ヤマタノオロチの護衛だ。ブルードラゴンとレッドドラゴンの予備機は、暖機しておけ、もしかしたら、追撃に使うからな」

 オリの指示にそって次々と、カラーズドラゴンが出撃していく。

 元から、距離が離れていない事もあり、オリの駆るレッドドラゴンワンも、直ぐに軍の戦艦との交戦を開始する。

 本来ならば、戦艦相手に、艦載機が正面からやりあう事は、考えられないが、そこは、小竜機関を搭載した、カラーズドラゴンである、うまく立ち回れば、戦艦とやりあうことも可能である。

 軍の艦載機を縦横無尽に蹴散らしている間に、酉騎士団の戦艦が、詰めより、主砲で、戦艦を沈めていく。

「こっちが、艦載機を潰しているのをいい事に、好き勝手やって」

 連携の取れていない攻撃には、当然穴が出来、オリの目前を、軍の戦艦が強引に通り抜ける。

『何をやってる、逃げられるぞ!』

 酉騎士団からの通信に、オリが切れる。

「その台詞、そのまま返す。普通に考えれば、艦載機だけで、戦艦を足止めできるか解るだろう。うちの旗艦が砲撃できないんだから、フォロー入るのが、当然だろう!」

『そっちの常識をおしつけるな、主砲打てないのは、そっちのミスだ、そっちでフォローしろ』

 酉騎士団の対応に、オリが再び怒鳴り返そうとするが、ヒャクリが割ってはいる。

『アポロス戦闘隊長、逃げた艦の対応は、アレロス副団長が行います。敵艦載機の対応をお願いします』

「だけどよ?」

 尚も文句を言おうとするオリに、オクサが言う。

『お願いします。出来るだけ、被害を少なくする為に、必要な事なのです』

 その一言で、オリが納得する。

「了解。アポロス戦闘隊長、敵艦載機の鎮圧に全力を尽くします」

 酉騎士団の戦艦に取り付く、軍の艦載機に向かう、オリであった。



「あいつも、単純だな。さて、予測通り、俺達にも仕事が来た。ここで逃がしたら、今回の作戦は、失敗だ。一隻も逃すなよ」

 ランドドラゴンで、強引にカラーズドラゴンの中を突き抜けてきた軍の戦艦を一隻ずつ、確実に鎮圧していくテンダであった。

 そして、テンダが、最後の戦艦を鎮圧した所で、ブルースピア信者から完全、降伏の通信が入った。



「所で、あんたら、何してたの?」

 基地に戻るヤマタノオロチのブリッチでオリがスリーナに聞くと、スリーナが一言。

「マンカと遊んでましたけど、何か?」

 ブリッチが沈黙に支配される。

「軍って意外と、ゲームの揃いが良かったよ」

 マンカの言葉を聞いてようやくテンダが答える。

「高級階級が多い騎士団より、一般人が多い、軍の方が、ゲームが揃ってるのは、当然だが、あの状況で普通遊ぶか?」

 オクサが当然のように言う。

「そうして貰わないと困ります。直ぐに帰ったら、最初から告発が目的の行動となります。記録上は、マンカさんの護衛という事にしないと、色々と問題がありますから、構いません」

 筋が通っているが、納得できない一同にマンカが言う。

「こういうスリーナだから、今回の作戦成功したんだと思うよ」

 オクサが笑顔で頷く。

「その通りです」



 その後もスリーナがクシナダを遊びに使って、たびたび罰当番をやらされる羽目になるのであった。

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