表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/24

手負いでも止まらないワイルドボア

今回は、テンダが主役ですかね

「マンカは、何処いったんだ!」

 テンダが怒鳴る。

「何、ぴりぴりしてるの? マンカだったら、未騎士団に呼ばれてる」

 オリが呆れた顔をして、言うと、頭を掻きながらテンダが言う。

「ファイの仕事の手伝いか、まあ、居なければ余計な仕事が増えなくて良いがな」

 そのまま、その場を離れるテンダを見て、スリーナが言う。

「テンダ副団長どうして機嫌が悪いの?」

 困った顔をしてヒャクリが言う。

「お父さんの事で色々あるの、少し我慢してあげて」

 首を傾げてオリが言う。

「どうしてヒャクリが、あいつの家庭事情を知ってるんだ?」

 ヒャクリが大きく溜息を吐く。

「もう少し、人間関係に詳しくなりなさい」

 クシナダが頷き、一つの記事を表示する。

 スリーナがその記事を読む。

「『レイ帝国に反攻する、過激派宗教団体、パープルロックチェーンの帝都破壊計画を未然に防ぐ、亥騎士団の大活躍、しかし、甚大な被害が出て、特に旗艦、ワイルドボアにいたっては、自走不可能なレベルまで破壊された』って一週間前の亥騎士団の話しだよね。マンカも、ワイルドボアの改修のお手伝いにお呼ばれしてるんでしょ? 何の関係があるの?」

 顔を押さえるヒャクリ。

「なんでうちの騎士団は、疎いのかしらね」

 そこにミリオがやってきて言う。

「亥騎士団の団長といえば、テンダ副団長の父親ですよ、スリーナ先輩」

 一緒に入ってきたテンダの弟、イレブがぼやく。

「一応、表向きは、成功の方を称えてるけど、出した損害が大き過ぎたんだよ。今回の旗艦の改修費用も、うちの財産から捻出してるんだよ」

「どうしてだ、損害は、ともかく、散々被害を出していたパープルロックチェーンの計画を打ち砕いたんだ、かなりの報奨金が入った筈だぞ」

 オリの言葉に、ヒャクリが首を横に振る。

「その大半が、死傷者の保障で消えたわ。成功も大きいけど、損害も甚大なの。同じ旗艦を損失したうちとは、人的被害が全然違うの」

「それを考えてみると、うちの団長ってとんでもないよね、あれだけ被害を出して殆ど、死者を出さないなんて」

 スリーナが呟くと、ミリオが頷く。

「問題の事件の報告書を見せてもらいました。あれだけの作戦で死傷者が一桁なんて、到底信じられない数値ですよ」

「でも、死人が出たんですよ」

 そう答えたのは、オクサであった。

「どうなさったのですか? 確か、執務室で書類整理をなさっていた筈では?」

 ヒャクリの質問に、オクサが指を鳴らすと、クシナダが一つの指令書を表示する。

『パープルロックチェーン残党の亥騎士団に報復計画がある事が、子騎士団の調査で判明。戦力が低下した亥騎士団の補助を、辰騎士団に命ずる』

「ふざけるな!」

 その声に、入り口に視線が集中する。

 その声の主、テンダがオクサに詰め寄り言う。

「こんな指令を受ける必要は、無い! 自分のケツは、自分で拭けばいいんだ!」

 オリも手をあげる。

「あたしも同意。報復に恐れて、他の騎士団の助力を必要とする騎士団なんて要らないよ」

 ヒャクリも小さく頷く。

「未騎士団も関っていますし、最低限に防衛は、出来る筈です。何より、うちもそれ程余力がありません。正直、私達は、ヤマタノオロチの高度な性能に頼りきっています。各員の熟練訓練の必要性があります」

 ブーイングが上がる中、オクサが答える。

「熟練訓練の必要性は、否定しません。今度の作戦の中で、熟練訓練を行う予定です」

「俺は、絶対反対だ!」

 テンダが強く反発すると、オクサが頷く。

「解りました。今回は、アレロス副団長には、基地に残り、残った人間の練熟訓練に行ってもらいます」

 テンダが、苛立った表情でオクサの肩を掴む。

「そういう意味じゃない! あいつの失敗は、あいつ自身がけりをつけるべきなんだ!」

「これは、帝都の決定です。辰騎士団は、この様な事態を想定した、予備戦力としての意味合いもあります。そして僕達は、自分達に出来る最大限の事をする。他の騎士団の意味を判断できるほど偉くなったつもりは、ありません」

 オクサの言葉に誰も反論できない。

「準備を開始します」

 ヒャクリが作業を開始する中、クシナダも立体映像で、トランクに荷物を詰め込み始める。

「お前は、何の準備してるんだ」

 オリが言うと、クシナダが答える。

『あたしの本体は、ヤマタノオロチの中にあるの。訓練メニューと個人情報とかは、こっちから持ち出さないと行けないの』

「この間、個人の趣味のデータまでヤマタノオロチにコピーしましたね。万が一にも攻勢ウイルスが有ったら大変ですから、止めてください」

 ヒャクリの言葉にスリーナが嫌そうな顔をする。

「今やってるゲームも持って行ったら駄目なんですか?」

「そういうのは、ノンネットのローカルマシーンで持ってきなさい」

 ヒャクリが叱る。

「クシナダって、ゲームマスターもやってくれるから便利なのに」

 スリーナの言葉に、大きく溜息を吐くイレブ。

「最高レベルの戦艦制御人工知能を、遊びに使うなんて、良い度胸してますね、先輩」

「そんな褒めないでよ」

 照れるスリーナに全員がはもる。

「「誰も褒めてない!」」



「どういうことですか?」

 寅騎士団の副団長、カルテ=ネプーチュが、ファイに詰め寄る。

「何度も言いますように、亥騎士団の旗艦の改修が最優先されています。工期の遅れの発生は、仕方ない事なのです」

「関係有りません。未騎士団には、相応の金額を支払っています。ファイアータイガーの新型主砲の納品を優先すべきです」

 カルテが睨むと、横に居たマンカが言う。

「新主砲って、未の団長さんが、クサナギの循環型、エネルギー増幅システム組み込むんだって工期、無視したって愚痴ってなかっけ」

 ファイがマンカを睨む。

「それは、本当ですか?」

 ファイが引き攣った顔で答える。

「ご安心してください、基本システムを大幅に変える予定は、ありませんから」

「本体の方にも改造いれたら、予算が抑えられないって、ファイさんが必死に説得してたよねー」

 内情を暴露するマンカの口に、飴を突っ込むファイ。

「それは、クサナギを越せるのですか?」

 カルテの質問に、ファイが最大限の営業スマイルで答える。

「さすがに、後付のシステムで、基礎から組み込まれたクサナギを、出力で上回るのは、無理です。しかしながら、現行より数段上回る物になるかと、思われます」

 カルテが机を叩く。

「最強で無いと意味が無いのです」

 マンカが飴を舐めながら、自分の作業に戻り、答える。

「未騎士団長さんの本体改造込みの設計見せてもらったけど、あれだったらクサナギの五割り増しの出力は、出ると思うよ。クサナギの実働データもあったし、元々、主砲開発は、専門家だから、あちきの設計より、数段高効率のシステムになってるよ」

 カルテの目が鋭くなる。

「その見積もりと工期の算出をお願いします。機能スペックと併せて判断します」

 ファイが渋々頷くと、カルテが去っていく。

「未騎士団も大変だねー。ついさっき、戌騎士団に小竜機関搭載型実験機、ダックスフンドの正式採用版の開発と、量産手順の作成依頼があったばかりなのに」

 マンカが気楽に言うとファイが小さく溜息を吐いて言う。

「ヤマタノオロチショックって言っているわ。元々サイコストーン反応炉の存在が、レイ帝国正規軍及び十二支騎士団とその他組織との技術差を埋めてしまった。十二支騎士団は、必死にその差を開こうと努力した結果が、各騎士団の特化に至るの。そこに現れた異界の技術塊、ヤマタノオロチに各騎士団は、必死なの。私が関与して、技術の供給ラインが成立したから良かったけど、もう少し放置したら、強引でも技術を強奪しようとしたかも」

 マンカは、亥騎士団旗艦用の新装備の最終チェックをしながら言う。

「でも各騎士団とも、欲しがる技術が大きく違うね?」

 頷くファイ。

「戌や寅が、それぞれの得意分野の強化に力を入れている様に、午は、アメノムラクモを自艦に搭載出来ないか問い合わせて来ている、酉も変形機構に使われている艦体制御装置に目をつけている」

 首を傾げるマンカ。

「あちきの技術って、クナ研究所で教わったの。教授には、優秀って言われてたけど、あちきより優秀な人間なんて幾らも居たけどな」

 大きな溜息を吐いてファイが言う。

「それが上位世界って事ね。こっちに直接干渉を持てば、下位世界は、隷属するしかない。神様が規制するのも無理ないわね」

 マンカが首を傾げる。

「でも、これ本当に良いの? このボッギーレザーって小竜機関とドラゴンスケルを流用した、物凄い技術だけど、どうみても旗艦につける装備じゃないよ。使うんだったら、消耗覚悟の特攻艦じゃない?」

 頷くファイ。

「団長も、次期特攻艦用に提案していたのだけど、亥騎士団の団長が、旗艦にも搭載する様に、指示してきたの。他の騎士団の方針には、口を出せないのよ」

 そんな無駄話をしながらも、仕事を片付ける、二人であった。



『余計なお世話だ。直ぐに帰れ』

 テンダと同じ翼を持った竜人、亥騎士団、騎士団長ゴーノ=アレロスからの通信に、ヤマタノオロチのブリッジの空気が凍る。

「こっちだって好きで来てるわけじゃない!」

 テンダが怒鳴ると同時に、ヒャクリが数人の部下と一緒に指示を出して、外に連れ出させる。

「すいません。我が騎士団の者が無礼な行動をしました」

 頭を下げるオクサ。

『半分は、私の教育が原因だからきにしなくても良い。それより、他の騎士団に警護を求めるほど、亥騎士団は落ちぶれては、居ない』

 一部の揺るぎの無い態度でゴーノが宣言するが、オクサは、微笑を絶やさず告げる。

「皇帝陛下からの任務です。皇帝陛下の判断に間違いがあるとお考えなのですか?」

 さすがにゴーノも、皇帝の名に怯む。

「旗艦が復帰すれば、皇帝陛下の判断も変わりましょう。それまでのほんの僅かな時間だけの保険と思ってください」

 オクサの説得にゴーノが渋々頷くしかなかった。

『あくまで保険だ。我々は、自分達の身の安全は、自分達で護る。最後まで手を出さないで貰おう』

 そのまま通信が切れる。

「これでよかったのですか?」

 ヒャクリの言葉にオクサが頷く。

「はい。陛下も万が一の事を考えての事でしょうから、熟練訓練をメインにスケジュールを作成して下さい」

 ヒャクリが頷き、直ぐに作業を開始するのであった。



 数日前、例の話が起こる直前のエースの部屋。

『今回は、単なる保険では、無い。パープルロックチェーンは、帝都破壊作戦に使用する予定だった龍神機関戦艦を、復讐の為に利用するつもりだ。子や卯が必死に探索を行っているが、亥の活躍で、作戦を断念した、残党の行方は掴めていない。その上、巳の裏情報によれば、亥騎士団の現状を調査している者達が居るのも確かだ』

 エースの通達にオクサが真剣な顔をして言う。

「解りました。問題は、亥騎士団と我々の関係ですね」

 エースも頷く。

『テンダの存在が、今回の事を複雑にしている。最悪、今回の作戦から外した方が良いのでは、ないか?』

 オクサは、首を横に振る。

「いえ、参加させます。いつまでも、親に対するわだかまり残したままでは、困ります」

 エースは、難しいそうな顔をして問う。

『しかし、どうやって参加させる。一筋縄では、行かないだろう』

 オクサは、平然と答える。

「大丈夫です、参加するなと言えば、反発して自分から作戦に加わります」

 エースが呆れた顔をする。

『お前は、本当に良い性格しているな』

 オクサが苦笑する。

「だから騎士団長をやっています」



「ただいま」

 まるで自宅に帰ってきたみたいに、マンカがブリッジに入ってくる。

「お帰り、もう仕事は、終ったの?」

 スリーナの言葉にマンカが頷く。

「うん。元々、設計書段階のチェックが主な仕事だからね」

「ファイさんが協力してくださって、本当に助かっています」

 ほのぼのとお茶を啜るオクサ。

 ゲスト席(といっても、既にマンカの指定席化していて、本当のゲストには、別のゲスト席がある)に座るマンカにジュースを出しながらヒャクリが言う。

「それで、仕事は、順調だったの?」

 マンカが頬を掻きながら答える。

「概ね順調。幾つかの、問題点があったけど、大きな影響が無かった。どうしても納得できない仕様があったけど、相手側の要求じゃ仕方ないね」

 オクサが何かを察知したのか、問いかける。

「もしかして、亥の旗艦の仕様では、ありませんか?」

 マンカが不思議そうな顔をして答える。

「そうだけど、どうして解ったの?」

 テンダが不機嫌そうに答える。

「今の状況で、お前が気に入らない仕様をごり押ししそうなのは、そこしかないからだよ」

「何が気に入らなかったのですか?」

 ヒャクリの質問にマンカが答える。

「ボッギーレザーって新装備があるの。これって、小竜機関とドラゴンスケルを併せた、強力な、可変型装甲なんだけど、何故か旗艦にまで装備させているんだよ」

 首を傾げるオリ。

「強力な装甲だったら変じゃないんじゃないか? このヤマタノオロチだってドラゴンスケルを装備してるだろ」

 テンダが立ち上がる。

「ヤマタノオロチのそれは、単なる保険だ。旗艦がエネルギーシールドを突破される状況なんてあったら駄目なんだよ。そんな状況を想定するのは、戦闘機か、亥で使っている特攻艦だけだ」

 マンカが頷く。

「そう、元々、特攻艦用に開発した装備なんだけど、亥に提出した時に、旗艦にも装備する様に言ってきたんだって」

 テンダが、ブリッジの出口に向かう。

「どこに行くのですか?」

 オクサの質問に、テンダが怒鳴り返す。

「あのクソ野郎は、全然懲りてねえ! そんな装備をつけさせるって事は、旗艦での特攻作戦をこれからも行うって事だ! 殴ってでも止めさせる!」

 慌てて、ヒャクリが指示を出して、テンダを押さえ込む。

「他の騎士団の方針に口を出すのは、明らかな越権行為です」

 テンダは、力技で、拘束を解く。

「陛下の大切な騎士達を無駄死にさせる行為が許されると思うのか! 俺は、絶対に認めねえ!」

 オクサが小さく溜息を吐いてマンカを見る。

「お願いします」

 マンカは、頷いて、音も無く接近すると、手刀一発でテンダを気絶させる。

「これで良いの?」

 オクサが頭を下げる。

「お手数をおかけします」

 マンカが倒れこむテンダを抱えながら言う。

「でもあちき、テンダさんも特攻的作戦が多いと思うよ。作戦を全うする為なら、多少の被害は、容認するみたいな気がする」

 イレブが肩を竦める。

「なんだかんだ言って、兄貴は、親父にそっくりなんだよ」

「いわゆる同属嫌悪って奴ですね」

 ミリオの言葉に頷くブリッジメンバー達。

「しかし、何時までもそれを許して置けるほど状況は、甘くありません。ここは、冷静な話し合いをさせましょう」

 オクサの言葉に、一大計画が発動する。



「一つ聞いていいか?」

 儀礼用の軍服を身に纏ったテンダが、通信機の向こうに居るオクサを睨む。

『なんでしょうか?』

「亥騎士団長との会談を何で俺がしないといけないんだ?」

 明らかな不満を顔に出しての質問だが、オクサが平然と答える。

『作戦中に僕がヤマタノオロチを離れるわけには、いかないからです』

「ヒャクリでも良かっただろうが!」

 テンダが怒鳴ると、ヒャクリが割って入ってくる。

『それでしたら、練熟訓練の指揮を変わっていただけますか?』

 その一言に、言葉を詰まるテンダ。

『そういう事でお願いします』

 オクサは、返事が返ってくる前に通信を切る。

 苛々しながらテンダが怒鳴る。

「何で俺が、親父と話し合いなんてしないといけないんだよ!」

「でも、元々、話に行くつもりだったんですよね?」

 同乗するマンカの言葉に、テンダがそっぽを向いて言う。

「俺が個人的に行くのと、辰騎士団の代表としていくんじゃ、全然違うんだよ」

 そんな中、マンカが小声で連絡船を操縦するスリーナに言う。

「ところで、どうして、練熟訓練の指揮をやるって答えなかったの?」

 スリーナがあっけらかんと答える。

「ヒャクリさんが作ったスケジュールって綿密で、本人と団長以外にそれを指示出来る人が居ないんですよ」

「オクサも血筋だけで、副団長は、選ばない。正直、戦闘指揮は、勝っているが、常時の指揮や、訓練の指揮だったら俺より数段上手いんだよ」

 テンダが溜息交じりに答える。

 そうしている間にも、連絡船は、未の旗艦で、巨大移動ドック、スリーピングシープに到着する。



「辰騎士団、副団長テンダ=アレロス、技術協力者、マンカ=キリナガレと乗艦します」

 そう宣言すると、迎えのファイが返す。

「未騎士団、副団長ファイ=ビーロスが承認します」

 溜息を吐くテンダにファイが苦笑して言う。

「お父さんと話し合いらしいわね。頑張って」

 テンダが不機嫌そうに舌打ちする。

「お前の所で、あんな非常識な装備を認めなければ、こんな事をする必要が無かったんだよ」

 ファイが肩を竦めて言う。

「仕方ないでしょ、こちらは、技術専門。あちらが実戦をたてに言ってきたら、反論出来ないわ。正直、私達もあの装備の運用には、納得いかないものがあるから、応援しているわ」

 幾つかの資料を渡すファイ。

 テンダはそれを受け取って、会談場所に移動する。

 会談の場所には、意外にもゴーノ一人しか居なかった。

「そちらの副団長は、参加しないのですか?」

 ファイの質問にゴーノが頷く。

「試作の新型特攻艦のテスト中だ。下らない会談に出てる時間は、無い」

「下らないだって!」

 いきりたつテンダをマンカが容赦なく、肘撃ちを決める。

「感情的になったら叩けって言われてる」

 テンダが、殺意すら篭った視線でマンカを睨むが、マンカは、気にしない。

「さっそく会談を開始しよう。辰騎士団からの正式な申し入れだから受けたが、私もこんな無駄な時間を一刻も早く終わらせたいのでな」

 初端から喧嘩腰の二人に、ファイとマンカが溜息を吐く中、会談が始まった。

 そして直ぐに煮詰まった。

「だから、旗艦がそんな近距離戦を想定した装備をつけてどうするんだ!」

 激情のままに不合理性を怒鳴るテンダ。

「常に前線を意識しろというのが、亥騎士団の心構えだ。それを踏まえた上で、最適な装備だと考えている」

 淡々と精神論を語るゴーノ。

 完全な平行線であった。

 大きく息を吐いてからファイが口に含む。

「もし新装備があったとしても、今回の結果は、避けられなかったと思われます」

「それでも、死傷者は、減った筈だ。私達に必要なのは、少しでも死傷者を減らす装備だ」

 ゴーノの信念の篭った一言にファイが黙るが、テンダは反論を続ける。

「装備の前にやる事があるだろう。辰騎士団は、旧装備でも死傷者を少ない作戦を続けていた。やり方次第で幾らでも死傷者は、減らせる」

「それで、帝都を危険にさらすのか?」

 ゴーノが鋭く突いてくる。

「団員を救う為に、酉の協力を受け、その結果、調査が不十分になり、帝都襲撃の計画が発動目前になっていた。我々ならば、確実に敵の懐に入り、帝都への危険を全て打ち砕く。例えどんな被害が出ようともな」

 テンダが拳を握り締めているとマンカが言う。

「なるほど、だからこそ、帝都襲撃を諦めるしかなかったパープルロックチェーンが、亥への復讐を考えていたのか」

 ゴーノが強く頷く。

「帝都を危険に晒すくらいならば、喜んで囮にもなる。亥騎士団の全ての者が同じ思いを持って戦っている」

 揺るぎの無い意思に、テンダが反論の言葉を紡げなくなった時、通信が入る。

『大変です、パープルロックチェーンの残党がこちらに向かっています。狙いは、改修中の亥騎士団旗艦、ワイルドボアだと思われます』

 ゴーノが立ち上がる。

「会談もここまでだな。辰騎士団長に伝えておけ、そちらは、あくまで保険だ。最後まで手を出すなと」

 そのまま進んでいくゴーノ。

「俺達も戻るぞ」

 テンダの言葉に頷くマンカ。



「状況は、どうなってる!」

 ヤマタノオロチのブリッジに入ると同時に怒鳴るテンダに、オペレーターの一人が答える。

「状況は、亥騎士団に不利です。新型特攻艦の働きで、確実に敵戦艦を潰していますが、多勢に無勢です。そろそろ救援に入らないと致命的な損害が出ます」

 テンダが怒鳴る。

「団長! 急いで出撃だ!」

 しかし、オクサは、お茶をすすりながら答える。

「まだ救援要請が来ていません」

 テンダがオクサににじり寄る。

「あのクソ野郎がそんな物を出すか! 急がないと、亥だけでなく、未まで被害が出るぞ!」

「そうなったら、未から救援要請が入るはずですから、その時に動けば十分です」

 オクサの落ち着いた態度に、苛立つテンダ。

 マンカが周囲を見回して言う。

「ヒャクリさんとオリさんって何処にいったの?」

 オクサが笑顔で答える。

「二人とも、練熟訓練の為に、外に出ています。ここから離れたところで、戻ってくるとタイムロスなので、現状の位置で待機してもらっています」

 その時、スリーピングシープから通信が入る。

『未騎士団、副団長ファイ=ビーロスです。相手がこちらの防衛ラインに入りました。協力をお願いします』

 その言葉に、テンダが机を叩く。

「遅い、ここからじゃ、救援に到着する時には、亥は、殆ど全滅してるぞ」

「ドラゴンエッグ展開」

 オクサの言葉と同時に、戦場マップの亥騎士団を示すマークの傍の大きな丸が割れて、辰騎士団を示すマークが大量に現れる。

「クサナギの有効射程範囲まで全力前進して下さい」

 そして、前の作戦で使用した、ドラゴンスケルを装備した、カラーズドラゴンが、亥騎士団を護りに入る。

『クサナギの射程距離に入りました。使用許可をお願いします』

 クシナダの言葉に慌ててテンダが叫ぶ。

「しまった、ここでは、許可が無いと撃てない。急いで許可を……」

 マンカが、テンダが貰った資料の一つを抜き出すと、読み込み機に入れる。

『未騎士団の副団長の承認をとりました。クサナギ、発射準備に入ります』

 循環型の増幅器にエネルギーが入っていく。

 その中、ヒャクリからの通信が入る。

『敵、主力は、後方部にある、龍神機関搭載艦です。詳細の情報を送ります』

 そして、正確な情報を元に、照準が調整される。

「クサナギ発射」

 ヤマタノオロチの放ったクサナギの一撃は、敵主力を一撃で粉砕した。

 そこからは、一方的な展開になった。

 防御をカラーズドラゴンに任せた亥騎士団は、死を恐れぬ特攻を繰り返し、敵戦艦を撃沈し続け、その間にヤマタノオロチが接近し、逃げるまもなく、全ての船が投降するはめになった。



「作戦成功だね」

 戻ってきたオリがブイサインを出すと、テンダが恨めしそうに一同を見る。

「最初から、練熟訓練を建前に、防御可能戦力を亥の傍に置いておき、未からの救援要請と同時に、一気に攻め込む予定だったんだな!」

 ヒャクリが入ってきて言う。

「テンダさんが、事情を知らない状態で、向うに居たおかげで、亥に作戦を感づかれずに済みました。もしばれていたら、ドラゴンエッグも後退させられていた筈ですから」

 今にも火を噴出しそうなテンダだったが、そこに外部からの通信が入る。

『亥騎士団長から通信が入っていますが、どうしますか?』

 クシナダの言葉に、オクサが笑顔で答える。

「繋いでください」

 ブリッジにゴーノの不機嫌そうな顔が映し出される。

『お前等の協力が無くても、奴等を殲滅出来た』

 テンダも不機嫌そうに言う。

「嫌だね、素直に礼の一つも言えないなんてね」

 睨み合う二人を尻目にオクサが言う。

「すいません。未騎士団から救援要請が入った以上、動かないといけないので」

 忌々しげにゴーノが言う。

『戦力が低い未騎士団からの救助要請は、仕方ない事だ。正直、勝つ事が出来ても、未騎士団の防衛までは、難しかった。そこには、感謝をしている』

「何言ってやがる、あのまま戦っていたら、下手したら亥は、全滅してたぞ」

 テンダの言葉にゴーノが断言する。

『それでも、敵を全滅させる。それが亥騎士団だ』

 再び睨みある二人だったが、今度は、ゴーノが直ぐに視線を外す。

『この借りは、いつか必ず返す』

 そのまま通信が切れる。

「いらねえよ!」

 怒鳴るテンダを見てマンカが、オクサに言う。

「戦闘の方は、上手く言ったけど、こっちの親子仲直り作戦は、失敗みたいだよ」

 オクサが微笑み、答える。

「人の心は、直ぐに変わるものでは、ありません。時間をかけてゆっくり話あっていけばいいのです。今回は、いいきっかけになったと思いますよ」

 荒れまくるテンダを温かい目で見るオクサであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ