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夢を語るシープ

今回は、戦闘シーン無しです。色々説明です

「今回の召喚の理由を説明してもらえますか?」

 アメノムラクモ発射テストの立会い役もやった、オクサとテンダの士官学校の同期、未騎士団の副団長、ファイ=ビーロスが対面直後に冷たい怒りを感じる笑顔で問質す。

「詳しい事は、ここでは、何ですから、相談役の部屋で」

 オクサが笑顔で、自分で案内する。

「あのご案内でしたら、私がやりますが?」

 ヒャクリの言葉にオクサが慌てて言う。

「僕も行かないといけないから構わないです。それより、暫く、連絡が取れなくなりますから、その間の対応をお願いします」

 そして、去っていく二人を見て、オリが不機嫌そうに言う。

「何で他所の副団長を、特別扱いするんだよ」

 するとスリーナがけらけら笑う。

「オリさん、妬いてる!」

 その言葉に周囲の団員が反応する。

「違う!」

 必死に反論するが、後は、泥沼になるだけであるが、普段だったら率先的に参加するヒャクリが、真面目な顔をして黙って居た。

「どうしたんだよ?」

 オリの言葉に、ヒャクリが答える。

「前回の作戦から、かなり副団長の私にも、機密扱いされる案件が、増えてきています。その状況で、どうして他の騎士団を招き入れたのか? 正直目的が不明です」

「そういえば、テンダも居ないな」

 オリが周囲を見回すとスリーナが手をあげる。

「マンカも居ないよ!」

 ヒャクリが難しい顔をする。

「間違いなく、ヤマタノオロチの機密事項に当る話。でもそれなのに、どうして外部の人間が?」



「俺、帰ったら駄目か?」

 テンダの弱気な言葉に、やってきたファイが驚いた顔をする。

「弱気なテンダなんて、始めてみるわ」

 嫌味が篭った言葉に、テンダが溜息を吐く。

「弱気にもなる。正直、この後の話なんて、聞いたら、絶対後悔する話なんだからよ」

 本気で眉を顰め、ファイが、オクサを見る。

「どういうこと、命知らずで、自信家のテンダがあんな事を言うなんて? 士官学校時代、親が騎士団の団長を務めていた人を相手に、正面から喧嘩をした、テンダが恐れる事って何?」

 オクサが頬をかきながら言う。

「もう直ぐ、最後の参加者が来ますから、その後、説明します」

 その時、空間が歪み、そこからマンカと、黒髪で、人と同じ姿をした青年が、現れる。

 年頃は、下手をすると、オクサ達より下に見えた。

「お待たせ」

 驚愕した顔をしてファイが言う。

「ドラゴンロードを使用していない空間跳躍って、一部の上位竜にしか出来ない筈。それが出来るあの二人は、何者なの?」

「時間に遅れて、すまなかった」

 頭を下げる青年に、オクサが慌てる。

「とんでもございません、陛下! 全ては、陛下の都合が、最優先されます」

 その一言に、テンダとファイが固まる。

 硬直の後、テンダが、オクサに掴みかかる。

「俺は、信じられない言葉を聞いた気がするが、お前は、陛下とは、言っていないよな?」

 ファイも縋るように見るが、マンカがあっさり言う。

「元々、人の姿を真似る魔法ってワンさんに習ったんだよ」

 即座に平伏するテンダとファイ。

『何、無駄な時間を使ってる。貴重な時間を使っているのだ、直ぐに本題に入るぞ』

 後ろで竜の姿のままのエースの言葉に、ワンが苦笑して言う。

「そうせかすな、エース。最初に確認したい。これからの話は、この場に居るもの以外には、例え、直属の上官である未騎士団長にも秘密にして欲しい。約束して貰えるか?」

 ファイは、その言葉が自分に言われた事に気付き、慌てて答える。

「陛下のお言葉のままに」

 しかし、ワンが重ねて問いかけた。

「その言葉に間違いないな? 決して偽りが許されないぞ」

 ファイが唾を飲み、ワンの目を見て答える。

「私の騎士としての忠誠は、常に陛下に誓っております。例え、騎士団長といえ、その誓いを曲げる事は、ありません」

 ワンがすまなそうに言う。

「疑う事を言って、すまなかった」

 慌てて頭を下げるファイ。

「陛下が謝罪される事は、ありません。全ては、信が得られなかった、私の不徳です」

『確かに、あのような条件反射の返答に信は、無いな』

 エースの言葉を、ワンが軽く責める視線を向けて、いさめてからワンが説明する。

「今回、重大な問題が起こり、その対応に、高い兵器の知識を持つ者の協力が、不可欠な為、召喚した」

 その言葉に、ファイが返事をする。

「陛下の期待に答えられるよう、一命をかけてあたらせて頂きます」

 そんな中、マンカが言う。

「結局どうしたの? 前回の件は、大事にならなかったと思うけど?」

 眉を顰めるファイ。

「前回の事? もしかして、あのゴールドクロー王国の件ですか?」

 事情がわからないって顔のファイに、オクサが事情を説明する事になった。

 そして事情を聞き終えたファイが、頭を押さえていた。

「よくそんなとんでもない状況を、辰騎士団だけで解決しようとしたわね」

 強く頷く、テンダ。

「他の騎士団の協力が欲しかったのは、本音だったよ」

『事が事だ、事情を知る人間は、出来るだけ少ない方が良かったのだ。幸い、オクサには、それに対応するだけの能力があったと言うことだ』

 エースの言葉に、オクサが謙遜する。

「僕一人の力では、ありません。それに他の騎士団の力も借りた、結果ですよ」

 ワンが頷く。

「あの事件は、直接的には、十二支騎士団の働きで、解決したと思ってもらっても良い。問題は、その際にヤマタノオロチの存在が、知られた事だ。上位世界からの過剰干渉の疑いがかけられ、査察が入ることになった」

 マンカが首を傾げる。

「どういうこと?」

 エースが溜息を吐いて言う。

『お前が、こっちの世界に持ち込んだ技術が、この世界に大きな影響を与える、世界間の交流規則違反にあたると、公訴されてるんだ』

「神様がそんなのを、監査しているのですか?」

 ファイの言葉にワンが頷く。

「元々は、上位世界からの過剰干渉での、下位世界の隷属化を防ぐ為の、規則らしい」

 マンカが慌てて、手をあげる。

「でもでも、それって直接兵器を持ち込んだ場合の筈だよ、こっちに持ち込んだのってドラゴンハートだけ、それもあれのドラゴンハートは、元々別の世界の物だから違反に当らない筈。一応、最低限の条例違反は、ちゃんとクリアしてるんだからね」

 胸を張るマンカを、エースが睨む。

『本気で最低限だ! それをやったら明確な排除対象になるだけで、技術だけでも、処罰対象になるんだ。こっちに宇宙技術伝える時、向こうの技術者を一時的に連れて来たのも、強い処罰対象になったわ』

 口を膨らませるマンカ。

「あちきは、元々この世界の住人だもん、問題ないよ!」

 その言葉にワンが溜息を吐く。

「そこが、一応抜け道なんだがな。査察の際に出来るだけ、問題ない技術と報告して貰わないと不味いのだ。この頃、新たな移住者を受け入れろと、言われている。そこに今回の件だ。処罰を理由に、移住者の受入を、強制される可能性が高い」

 不満げにマンカが言う。

「移民くらい受ければ良いじゃん。どうせ、人が住んでない星くらい、幾らでもあるんだからさ」

 テンダがマンカのこめかめにウメボシを食らわせながら言う。

「そんないい加減な対応したら、戦争になるに決まってるだろうが!」

「イタイ、イタイ!」

 マンカが悲鳴を上げると、ファイがワンを見るが、ワンが首を横に振る。

「気にしないで良い、自分勝手な事をしたら叱られるのは、当然な事だ」

 こめかみを押さえて泣いているマンカを放置して、オクサが言う。

「しかし、神の査察に、誤魔化しが通用するのですか?」

「逆なの、少しでも何かしたら、脅迫や強制力が発生するから、こちらの申告を査察官が、論理的に判断するしか出来ないの」

 涙目になりながらのマンカの言葉にワンが続ける。

「ルールには、厳しいところがあり、少しでもあちら側からの強制力が感じられた調査結果は、不正となって、認められない事になっているらしい」

 オクサが思案顔になって言う。

「とにかく、口で言いくるめるしか無い、という事ですか」

 頷きワンが言う。

「その為に、技術の専門家の協力が必要不可欠だった。その為に、オクサの推薦で君を呼んだ」

 ファイがここに来て自分の役目の重大さに驚く。

「私の対応一つで、この世界の未来が左右されるという事ですか?」

 左右を見渡すが、反論が無く、テンダにいたっては、同情の視線を送ってきている。

「最終的な、責任は、私が負う。本当にすまないが、最善を尽くして欲しい」

 再び頭を下げるワンに、ファイが慌てて言う。

「先程も誓わせていただいたとおり、私は、陛下の為に粉骨砕身の覚悟で、やらせていただきます」

『ワン、そろそろ誤魔化すのも限界だ、帝都に戻れ。後の事は、こちらでやっておく』

 エースの言葉にワンが辛そうに頷く。

「すまないが、帝都を長時間不在にする訳にも行かないので、これで失礼する」

 空間を転移していくワンに、手を振るマンカ。

「大変な事に、巻き込んでくれたわね」

 恨めしそうにオクサを見るファイに、テンダが笑顔で言う。

「これでお前も、一蓮托生だな」

 こうして、ヤマタノオロチ査察対策が動き始めた。



「それでは、査察官に怪しまれない事故自沈のさせ方ですが、どの様な物がベストでしょうか?」

 ヤマタノオロチチェック後の極秘会合の最初のファイの台詞がそれだった。

「下手に、事前に自沈させるより、その査察官の前で、自沈させた方が説得力あると思うぞ」

 テンダも即座にのって来る。

「待ってよ! どうしていきなり、自沈させる事が前提で、話しが進むの!」

 マンカの反論にファイが睨み返す。

「あれをどう説明したら、こちらの技術だけで製造できるって誤魔化せると思えるのですか? はっきり言って、あれをこちらが作ろうとしたら、後数千年は、必要です!」

 怯むマンカ。

「良い機会だから、壊しちまえよ、そうすれば俺達の苦労が、大分減るぜ」

 テンダも、自沈案を支持していた。

「二人とも、落ち着いてください」

 オクサの言葉にマンカが目を輝かせる。

「今更自沈させた所で、過去の運用まで見逃してもらえません。現物で、無理やりでも納得して貰うしかないのです」

 オクサの言葉に、ファイが不満げな顔をする。

「それは、そうかも知れないわ。でも、あれを納得して貰えるだけの、説明が出来るとも思えない」

「だったら、説明しなければ良いのです。いままでの実戦データを使って、普通とは、異なる所を洗い出し、そこについてだけ、無理やりな解釈をつけてもらえませんか?」

 オクサの案を頭の中で検討して答える。

「確かに、それだったら可能性は、あるわ」

 マンカの方を向いてオクサが言う。

「すいませんが、そういうことなので、過去の実戦データをまとめておいてくれますか?」

 マンカが頷き、いつの間にかに辰騎士団の基地に作られた、マンカ研究所、辰騎士団出張所に戻っていく。

 それを見送るオクサに、ファイが言う。

「余計な事が発覚する危険性を考えたら、自沈させる方がベストだと私は、思うわ」

 テンダも同意する。

「回答のしようもない事が出たら、それこそ一巻の終わりだぞ?」

 オクサが冷静な顔のまま、質問で返す。

「未騎士団の副団長殿に確認したいのですが、あのヤマタノオロチの技術は、今の十二支騎士団に不要ですか?」

 ファイは、長い沈黙の後、首を横に振る。

「必要よ、それこそ喉から手が出るほどに。こちらの技術が、抵抗勢力、多分上位世界からの移住者に渡り、より効率よく運用され始めている今、相手を圧倒できる新技術が、どうしても必要よ」

 それに対してテンダが反論する。

「しかし、その為に余計な敵勢力を生み出す危険性を持つ、ヤマタノオロチをこのまま保持するのは、リスクが高すぎる!」

 オクサが二人を強い眼差しで見て、答える。

「危険な行為だとは、認識しています。しかし、それでも現状は、かなり深刻な状況になっています。その一番の原因は、表向きは、隠蔽されてきた、上位世界からの移住者との軋轢アツレキです。帝国成立の為の技術導入と引き換えに、受け入れた移住者。そのバランスが幾度と無く崩れかけ、それを立て直していたのが陛下のお力です。しかし、拡大続ける帝国の運営と同時に行うのには、限界が来ているのです。それが噴出したのが、前回の事件だと考えています」

 テンダが、舌打ちをして言う。

「詰り、その軋轢への対応をする役目を俺達、十二支騎士団が負うべきだと言っているんだな?」

 オクサが肯定し、続ける。

「その為の力、本来、下位の存在である我々が、上位世界の人間に打ち勝つ為に必要な力、異界の力こそが、ヤマタノオロチです」

 ファイがオクサの言葉をよく吟味し、その上で質問を返す。

「話は、理解できるわ。でも、そのヤマタノオロチの為に、更なる混乱を呼んでしまったら、本末転倒だと思わない?」

 オクサが揺ぎ無い眼差しで答える。

「我々の本分は、陛下の力となり、レイ帝国とこの世界の安定を護る事です。その為には、どんな困難であっても、それに打ち勝つ必要があります」

 テンダが大きく溜息を吐く。

「俺達の戦いに、楽勝は、許されないって事かよ」

 諦めきった表情をするテンダに、苦笑するファイ。

「何だよ、何がそんなに可笑しいんだ?」

 不機嫌そうなテンダの言葉に、笑いを堪えてファイが言う。

「士官学校時代から変わってないと思いまして。あの頃も、普段は、大人しくても、本当に必要な事を始めるのは、オクサで、文句を言っても、それを手伝うのが、テンダでしたよ」

 嫌そうな顔をするテンダと、一緒に笑い出すオクサ。

 そしてファイが言う。

「解ったわ、一緒に苦労してあげる」

 それを聞いてテンダが皮肉る。

「そうやって、いつの間にかに加わるお前も、変わってないぜ」

 笑いあう三人であった。



 数日後、人払いをされた、ヤマタノオロチの格納庫でオクサ達が査察官との対面を行っていた。

「査察官の魔磨ママです」

 自己紹介をする、まだ少女とも思える外見なのに、熟練した大人の雰囲気を持つ女性、魔磨。

「話は、陛下から伺っております。詳しい、説明は、未騎士団のビーロス副団長が行います」

 オクサの答え、ファイが頭を下げると、魔磨が厳しい目で答える。

「ごまかしが通用するとは、思わないで下さい」

 後ろで、テンダが小声で言う。

「思いっきり敵対心があるのは、気のせいか?」

 何故か首輪を付けられて、テンダに紐の先を握られている、マンカが言う。

「聞いた話だと、一番の移住推進派で、キリナガレの本家の方でも、移住を強制されてるって話だよ」

 舌打ちするテンダ。

「面倒だな」

 そして、専門用語が飛び交う、査察が開始された。



 一通りの査察が終った後、魔磨が告げる。

「何かしらの隠蔽が感じられますが、これ以上、突っ込んだ話は、規則から外れますので、出来ませんね」

 安堵の息を吐く、ファイとテンダ。

 しかし、オクサが冷静に質問する。

「それでは、後は、何に答えればいいのですか?」

「査察は、終ったんじゃないの?」

 マンカが首を傾げる中、魔磨が答えた。

「移住者の現状です。彼等の移住は、本来別の世界に行われる筈でした。私の父が、そうその世界の代表と、約定を結んでいました。その移住者の現状には、娘である、私が責任を負う必要があると、思っています」

 オクサは、幾つかの資料を見せる。

「単刀直入に言えば、移住者の立場は、この世界では、かなり弱いものとなっています。陛下の融和政策と同調して頂けないことも多く、また、同調後も、強い反発を覚える者が多いのが、現状です」

 それらの資料に目を通して魔磨が言う。

「詰り、移住者をこれ以上、受け入れる余裕が無い事を、アピールしたいのですか?」

 テンダが小声で言う。

「上手い、これだったら向うも、無理に移住者を、押し込められない」

 しかし、オクサは、テンダの予想と反して、首を横に振る。

「その資料を良くお読み頂ければ、ご理解いただけると思いますが、現状では、まだまだ不十分な、融和政策ですが、少しずつですが確実に成果が上がっています。時間を下さい。きっと、新たな移住者すら、容易に受け入れられる世界に、我々は、してみせます」

 意外な正面からの説得に魔磨は、少し考えた後に返す。

「私と父は、かつて間違いを犯しました。父が管理を任された世界が崩壊を開始し、急ぎ移住の必要性が出た時、無理にでも移住させようとして、神々のルールを破りました。父は、その罪を償う為、崩壊する筈の世界の時を止め続けるという、神すら恐れる、重罰を受けています。それは、移住が完全に終るまで続く、罰です。その時間を出来るだけ短くしたくて、私は、この仕事を行っています」

 二人の目線がぶつかる。

 どちらも引くつもりがないのは、明確だったが、魔磨が小さく溜息を吐いて言う。

「この世界は、有望な世界です。多くの移住者を受け入れる可能性を、秘めていると考えています。その可能性にかけましょう」

 オクサが頭を下げる。

「ありがとうございます」

 オクサが再び頭を上げた時、魔磨の姿が無くなっていた。

「良かったの?」

 ファイが質問に、オクサが頷く。

「陛下は、常々、言われておられる。全ての者の努力が実る世界にしたいと。それには、異世界の者も含まれる筈です」

「そんな事が本当に可能なのか?」

 テンダの言葉にマンカが答える。

「不可能じゃないと思う。遠い昔、それこそ神話の時代には、一つの世界の住人を一斉に移民させて、見事に融和させた、神の代行者が居るって話があるもん」

 ファイが小さく頷き言う。

「信じ、努力しましょう。それが今の私達に出来る事なのだから」



 未騎士団の基地に戻ったファイが団長に報告を行っていた。

「言っている意味が解らないですな、ビーロス副団長」

 ファイと同じ、未騎士団の副団長、隻角の竜人の中年、カイ=ビーロナが問い質す。

 しかし、ファイは、同じ内容を繰り返す。

「陛下との約束の為、今回の詳細は、報告できませんと、申しております」

「それでも、貴様は、未騎士団の副団長か!」

 カイが怒鳴るが、ファイは、平然と答える。

「私は、未騎士団の副団長の前に、陛下に忠誠を誓う、十二支騎士団員の一員です」

 カイは、苛立ちを隠せない様子で続ける。

「何事にも例外があろう、未騎士団の一員として、未騎士団に有益な報告を行わないのは、仲間を裏切る行為とは、思わないのか!」

「陛下との約束に、例外は、存在しません」

 ファイが、きっぱり切り捨てると、二人は、睨み合う。

「いい加減にしろ」

 小さいが、はっきりとした声で言ったのは、未騎士団の団長で、ファイの叔父でもある、オメガ=ビーロスであった。

「しかし、ビーロス副団長の行為は、明らかな未騎士団を裏切る行為です」

 カイが反論するが、オメガは、鋭い目で断言する。

「陛下との約定が全てに優先される」

 カイが歯軋りをする中、ファイが安堵の息を吐くが、それを見たオメガが睨みつける。

「だからといって、何も成果もなく戻ってきた事を許されると思っているのか?」

 ファイは、首を横に振る。

「辰騎士団とは、交渉して、私が解析し、問題ないと判断した技術に関しては、全て未騎士団を始めとする十二支騎士団に公開する、約定を結んできました」

「それで、私が欲求を満たせる物は、あるのだろうな?」

 オメガ、彼は、技術欲の塊で、新しい技術の習得には、異常な程に貪欲であった。

 その性質を知っていた、オクサが、ファイに忠告を入れていた為、欲求を満たす、資料の準備を済ませてあった。

「新型装甲、ドラゴンスケルの資料です。前回のカラーズドラゴンに使用した際、多くのサンプルデータが取れていますので、団長の欲求に答えられる物だと思います」

 受け取った、資料を見て、心の底から嬉しそうにオメガが言う。

「面白い、マンカ殿下は、本当に凄い発想をする。ファイ、優先的に解析作業を進めろ。そして、私に欲求をもっと満たすのだ」

「了解しました」

 頭を下げるファイを尻目に、オメガは立ち上がる。

「カイ、直ぐに研究を始めるぞ! この資料があれば、更に高性能の装甲が出来るぞ」

「了解しました」

 カイを引き連れて、研究室に向かうオメガを見送ってから、ファイが言う。

「マンカちゃんも問題だけど、うちの団長も危険ね。間違ってもアメノムラクモの資料は、渡せないわね」

 肩を竦めるファイであった。

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