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融通の利かないバッファーロー

士官学校の話です

「ミート=ミノタス、丑騎士団、戦闘隊長入室します」

 そう言って、竜の尾と強靭な肉体を持った、まだ十八の竜人が、丑騎士団長室に入る。

 書類を片付けていたミートと同じタイプの竜人、丑騎士団の団長、クード=ミノタスがミートを見る。

 団長室に単独で呼ばれた状況に困惑し、直立姿勢のミートにクードが告げた。

「マンカ様の事は、知っているな?」

 その質問にミートが即答する。

「はい。陛下の血をひく御方だと聞いております」

 クードが頷き言う。

「丑騎士団の団長は、代々、キリナガレ家には、護衛をつけるべきだと進言していたが、陛下の許可が得られなかった。その結果、マンカ様のご両親は、事故死した。当時の団長は、その責任を強く感じていた。そして、マンカ様は、皇后様の実家に預けられていたらしい。ここまでは、丑騎士団の中では、有名な話だ」

「はい。私も入団して直ぐに、教えていただきました」

 ミートの同意にクードが続ける。

「そのマンカ様が辰騎士団に保護されている」

 意外な言葉にミートが反射的に声を上げる。

「どういう事ですか! 我々が承認されなかった警護を、辰騎士団が行うなんて考えられません!」

 クードが睨むと慌ててミートが口を閉じる。

「私も同意見だ。陛下に確認した所、辰騎士団の新旗艦、ヤマタノオロチを作成したのが、マンカ様で、機能調査の為に辰騎士団と行動に共にしているだけとのお答えを頂いた」

 ミートが不服そうな顔をしているとクードが言う。

「マンカ様にもしもの事があったら、我等、丑騎士団の面子が無い。次の観艦式の後の騎士団長の集まりで進言するつもりだ。問題は、それまでの間だ。極秘に入手した情報によると、マンカ様は、観艦式の前後、士官学校の見学を行われる。お前には、その間の警護の任務を与える」

 ミートが敬礼をする。

「了解しました。この命に代えても、マンカ様を、護り通します!」



「でも、どうしてこの時期に士官学校の見学なんてやるの?」

 士官学校までの移動船の運転をするスリーナの質問にマンカが答える。

「観艦式の間は、ヤマタノオロチが戦闘すること無いし、観艦式に出るからテスト運用も出来ない。だから前々から興味があった士官学校の見学する事にしたの」

「見学するのは、良いがどうしてあたしが、付き合わなければいけないの」

 不機嫌そうな顔をして、同行しているオリの言葉にスリーナが答える。

「旗艦の秘密を知る人間の護衛の為だってヒャクリさんも言ってたよ」

 舌打ちするオリ。

「それは、解るけど、他の人間でも良いのに!」

 不満をぶちまけるオリであった。



『マンカを観艦式に連れて行かないのは、正しい判断だと思うが、どうしてオリをつけたのだ? 戦闘隊長として観艦式には、居たほうが良かったのではないか?』

 観艦式参加の為に珍しくヤマタノオロチの特別室に乗っているエースの質問にオクサが答える。

「実は、丑騎士団が動いています。下手な人間だと、ごり押しされる可能性がありました。オリさんでしたら、観艦式に出ない団員相手なら十分に相手が出来ます」

 エースが呆れた顔をする。

『あいつ等もキリナガレを理解していないな』

 オクサも苦笑する。

「今回の観艦式終了後に本格的に護衛をつける話しがあがると思いますが、無駄でしょうね」

 強く頷くエースであった。



 マンカ達の目的地、観艦式も行われる帝都ゼロから少し離れた所にあるエト士官学校では、当然の様に授業が行われていた。

「攻撃を防ぐエネルギーシールドが高性能化した現代の戦艦同士の戦いでは、相手にエネルギーシールドを張られる前の奇襲、連続攻撃または、戦闘機に因る至近距離からの連続攻撃によるエネルギーシールドの過負荷ダウンさせてからの攻撃が用いられる」

 講師の説明に欠伸をする、翼を持った竜人の少年、イレブ=アレロス。

「教科書に書かれた事を読んでて楽しいのかね?」

「仕事だから仕方ないだろう。そしてノートを書くのが俺達の仕事だぞ」

 隣で真面目にノートをとる角を持った竜人、ミリオ=ナーガスの言葉に肩を竦めるイレブ。

「真面目だね、卒業前の単位合わせの座学でよくノートをとる気になるな」

 ミリオは、苦笑する。

「三流竜人は、こうやって少しでも点数稼ぎが必要なんだよ」

 眉を顰めるイレブ。

「お前だったら十二支騎士団に入るのも不可能じゃない。何で一般軍入りを希望したんだ?」

 ミリオが、ノートをとりながら答える。

「それでどうなる? 十二支騎士団の大半が名門の竜人。残りは、優秀な人間だ。三流竜人に居場所は、無い。元々騎士団は、給料も安いんだ、家の事を考えたら一般軍に入って少しでも面倒な仕事でもやって金を稼がないとな」

 イレブが苛立ち、頭を掻きながら言う。

「お前とだったらもっと上を目指せると思ったんだがな」

「ロスが家名に付く血筋の人間には、解らない事だ」

 ミリオの言葉に舌打ちするイレブ。

「所でアレロスくん、今が授業中だと言う事を覚えているかね?」

 知らない間に近付いてきた講師の言葉に引き攣るイレブ。

「何で俺だけなんですか? ミリオだって無駄話をしていた筈ですよ?」

 講師は、アポロスの頭を叩く。

「ノートをちゃんととって居る人間と欠伸してる人間とを同じわけ無いだろうが、教科書の写しを明日までにやっておけ」

 教室に爆笑が起こる。



「なあ手伝ってくれよ」

 寮で手書きノートに教科書を写すイレブの言葉に、筋肉トレーニングをしていたミリオが苦笑する。

「この学校の講師くらいだな、名門アポロス家の息子を叱れるのは」

 首を傾げるイレブ。

「普通だろう? 兄貴もよく罰当番やらされていたって言ってたぞ」

 ミリオが首を横に振る。

「普通じゃないさ。ロス士官学校では、ロスの名を持つ生徒には、一般講師では、逆らえないって話だ」

 舌打ちするイレブ。

「家系だけで判断するのは、古い時代の悪癖だな。しかし、この学校みたいな所もある、お前もそれにかけてみないか?」

 ミリオが首を横に振る。

 溜息を吐くと続きを始めるイレブ。

 トレーニングルームのドアが開き、尻尾持った竜人の少女、ツェン=ヘファロスが駆け寄ってくる。

「ミリオ、イレブ聞いて!」

「今忙しいから後にしろ!」

 イレブが顔すら向けず言うが、ツェンは、気にしない。

「あのヤマタノオロチの設計者が来るんだって!」

 驚いた顔をして、イレブが顔を向ける。

「本当か? でも確か観艦式があるんだったらヤマタノオロチも参加してる筈だぞ」

 頷くツェン。

「だからみたいよ。それよりイレブお願いがあるんだけど」

 猫をかぶって近付くツェンにイレブが作業に戻りながら答える。

「兄貴のコネで問題の人物と会わせろって言うのは、無理だぞ」

「そこをなんとかしてよ! クラスメイトじゃない」

 必死のツェンだったが、イレブは、相手にしないので、助けを求めるようにミリオをみる。

「旗艦の設計者だとしたら、間違いなく重要人物だから、護衛も居るから無理だろ」

 あっさり否定されて落ち込むツェン。

 その時、トレーニングルームのドアが再び開く。

 (イレブは、一人でノート写しをやるのが嫌だから、トレーニングしているミリオの傍に来ていた)

 そして、三人の少女が入ってくる。

 その先頭に立つ少女を見て学生達がざわめく。

「戦闘機模擬戦記録保持者のオリ=アポロス先輩じゃないか?」

「嘘、今は、辰騎士団の戦闘隊長をやっているから観艦式に出てるはずじゃないの?」

 そんなざわめきのなか、オリが隣のマンカに説明を開始する。

「ここがトレーニングルームよ。他の士官学校からのお下がりを、安く買った奴だから、ボロだけどね」

 マンカが見回して一部の高そうな機器を指差す。

「あれもお下がり?」

 オリは、頭を掻きながら言う。

「あれは、アレロス家からの寄贈品よ。テンダの奴が副団長になった時に、息子がお世話になったお礼として寄贈したやつ」

 もう一人の少女スリーナが手をあげる。

「アポロス家は、寄贈してないんですか?」

 オリは、肩を竦めて言う。

「あたし達は、親と喧嘩してここに入ったから、あまり好印象ないのよ。今だって騎士団辞めて婿をとれって騒いでるよ」

 問題の機器を使っていたミリオが苦笑する。

「お前の実家からの寄贈品だったのか。使用料として手伝おうか?」

 イレブが思いっきり不機嫌そうな顔をして言う。

「良い。それより、オリ=アポロス先輩と一緒に居る二人は、誰だ?」

 視線が集まっているのに気付いたオリがマンカ達を紹介する。

「紹介するから注目! 人間っぽいのが、ヤマタノオロチの作ったマンカ=キリナガレで、もう一人は、辰騎士団での部下、スリーナ=イカロだ。見学目的で来たから邪魔にならない程度に相手してくれ」

 信じられない顔をする一同の中からツェンが飛び出して言う。

「本当にヤマタノオロチの設計者なんですか?」

 頷くマンカが言う。

「基本設計から全てあちきがやったよ」

 言葉が無いツェン。

 その時、三度、扉が開き、新たな訪問者が来る。

「あれって、格闘戦連勝記録保持者のミート=ミノタス先輩だぜ」

「本当。でも確か、オリ=アポロス先輩とは、仲が悪かった気が……」

 その言葉を証明するようにオリとミートの視線が火花を散らす。

「戦闘隊長がこんなところに来るなんて丑騎士団も暇なのね」

 呆れた様子で告げるオリにミートは、尊大に答える。

「俺達と同期の奴に副団長をやらせなければいけない辰騎士団と違って、人材が豊富でね」

 その場に居た全員が、二人の背中から炎が噴出す幻覚を見た。

「本気で何の用! マンカを引き抜こうというなら無理だからね!」

 マンカを庇うように立ちオリが言うとミートが片膝をつき言う。

「マンカ様、丑騎士団団長から護衛任を授かりました、ミート=ミノタスと申します。以後よろしくお願いします」

 首を傾げるマンカ。

「どうしてあちきの護衛を丑騎士団の人がするの?」

「そうよ、旗艦の製造者を守るのは、辰騎士団の役目よ!」

 オリの言葉にミートが反射的に何かを言おうとしたが、周囲の目を気にして、仕切りなおしてから言い直す。

「正式な許可は、観艦式が終り次第頂戴する予定です。それまでの間は、私が命にかえましても御守りする所存です」

「説明になってない!」

 オリがクレームを入れるがミートは、答えなかった。



「それでは、ヤマタノオロチに使われているドラゴンハートは、マンカの私物だったの?」

 現役の案内人として無理やり徴収されたイレブと、それに付き添うミリオに紛れたツェンの質問に、マンカが少し困った顔をして言う。

「正確に言うと、キリナガレの本家の蔵にあった物を貰ったの」

「あたしも一度、そこに行ってみたいなー」

 ツェンが何気なく行った言葉にマンカが慌てて手を振る。

「凄く遠いところだから駄目だよ」

 ツェンが不思議そうな顔をする。

「でもドラゴンロードを使えばどんな遠い所だってすぐじゃない?」

「そこには、ドラゴンロードじゃいけないの」

 マンカの言葉に首を傾げるツェン。

「そんな場所からどうやって来たの?」

 言葉に詰まるマンカに視線が集まった時、ミートがツェンを睨む。

「余計な事に首を突っ込むと後悔する事になるぞ」

「後輩を脅してどうするのよ」

 オリが睨み返すが、ミートは、淡々と答える。

「真実だ」

 緊張が周囲を覆う中、スリーナが言う。

「観艦式が始まるよ」

 その一言にマンカも乗る。

「ヤマタノオロチの晴れ姿を皆で見ようよ」

「そうですね」

 ミリオも急いで乗ると少し嫌そうにイレブが言う。

「澄ました顔をした兄貴を見るなんて、お断りだ」

 しかし、ミリオに机の下で足を思いっきり踏まれて、イレブが言う。

「それでも観艦式くらい見るのは、士官学校の生徒の務めだろうな」

 そして、マンカたちは、帝国が勢力下全土に放映している観艦式を見ようと広間に移動を開始した。



 観艦式の目前、レイ帝国の皇帝、シャイニングドラゴンの玉座の前に十二支騎士団の団長が集まっていた。

 定例の挨拶の中、丑騎士団団長クードが進言する。

「陛下や帝都を守るのは、我等、丑騎士団の仕事だと考えています。その上でお答えを下さい。何故、マンカ様の警護を辰騎士団に命じられているのですか?」

 シャイニングドラゴンは、その偉大なる竜の姿でクードを見下ろし告げる。

『マンカは、我が血を引くが、我より先に死ぬ。後継者にならぬ者、汝らが警護する必要は、無い。あれが、辰騎士団の保護を受けているのは、ヤマタノオロチの製造者だという理由でしかない』

 竜と竜人との違いを明確に表した言葉であるが、クードも引き下がらない。

「しかし、陛下の血が流れる御方に万が一の事があっては、丑騎士団の面目が立ちません! どうか、警護の許可を!」

 シャイニングドラゴンがクードを睨む。

『ならば問おう、汝らにマンカが手に負えないほどの敵を倒せる力があると言うのか?』

 クードが即答する。

「丑騎士団は、要人警護に長けています。武装した数千の兵相手でもマンカ様には、傷一つつけさせません」

 その答えに高笑いをするシャイニングドラゴンであった。



 襲撃は、突然であった。

 観艦式を大画面で見ようと、講堂に集まった生徒達にテロリストの襲撃の報告があり、警備隊との交戦がすぐさま始まった。

 多くの生徒が震える中、ミリオとイレブは、オリやミートの指揮の下、テロリストとの戦闘に加わっていた。

「何で、生徒の俺達まで戦わないといけないんだよ!」

 イレブが不平をあげると、ミリオは、機械式の銃を撃ちながら答える。

「観艦式で、多くの人員がそちらに回された隙を突かれて人手が足らないんだから仕方ないだろう」

 イレブが舌打ちししながら、銃を撃つ。

「魔法封じの結界があったから助かったが、そうでなかったらもう終っていたぞ」

 オリが頷く。

「あっちも多くの竜人が居るから、下手すると強力な魔法攻撃が出来る奴が居る可能性が高いからね。それでも人数の差が多すぎる」

 そう言っている間も、警備隊の人間がまた一人倒れる。

 オリが振り返りミートに言う。

「あんたも後方で楽してないで、前線でなさいよ!」

 その言葉にミートが拳を血が出るほど握り締めながらも答える。

「五月蝿い! 俺には、大切な仕事があるんだ」

 そう言ってマンカを見る。

 しかし、そんな緊迫した状況の中、マンカは、普通に観艦式の放送を見ていた。

「随分のんきですね」

 震えるツェンにマンカが頷く。

「あんくらいだったら、あちき一人で倒せるもん」

 その一言にスリーナが驚く。

「マンカってもしかして強いの?」

 大きく頷くマンカにツェンが言う。

「そんなに強いんだったら、とっとと倒してよ!」

 言った本人も無理だと確信した言葉にマンカは、あっさり立って答える。

「銃の音が邪魔だしね」

 銃弾が飛び交う中、マンカは、平然と敵の集団に向かって歩き出す。

 ミートが慌てて止めに入るが、銃弾が来て、慌てて身を隠してしまう。

「お戻り下さい!」

 オリも舌打ちして叫ぶ。

「危ないから後ろに居なさい!」

 ミリオやイレブがその声に釣られるようにマンカを見た時、マンカの姿が変化した。

 人と同じ様に見えたその瞳が竜眼になり、角や翼・尾が生える。

 そして口を大きく開く。

『シャインブレス』

 マンカの口から放たれた光のドラゴンブレスは、敵集団に一撃で壊滅的なダメージを負わした。

 続き様に胸もとのアクセサリーを掴む。

『血の盟約の元、万華が求める、戦いの牙をここに表せ、竜牙刀リュウガトウ

 小さな牙の形をしたアクセサリーが刀に変化し、それを掴んだマンカが相手に突入する。

 必死に銃を撃つテロリスト達だったが、竜特有の自己意思優先空間、ドラゴンワールドと言われる物を展開したマンカの前では、銀玉鉄砲程の威力も無かった。

 敵を薙倒してリーダーらしき男を峰打ちして気絶させると、首筋に竜牙刀を当てて言う。

「まだやる?」

 テロリスト達があっさり降伏したのは、言うまでも無い事であった。



 観艦式が終わり、帰還しようとするオクサの所にクードが来た。

「ミートから連絡があった、マンカ様が見学をなさっていた士官学校に襲撃があったが、マンカ様の活躍ですぐに片付いたという事だ」

 テンダが驚いた顔をして言う。

「本当に強かったんだな、あいつ」

 オクサが頷く。

「キリナガレの本家で一通りの戦闘術は、教わったそうです。我等が無敵だと思っている陛下もキリナガレの本家に行くと戦闘能力が低い未熟者と言われるそうですよ」

 信じられないと言う顔をしてクードが言う。

「陛下の言うとおり、マンカ様に危害を加えようと言うならば、戦艦でも持ってこない限り無駄だろう」

 少し悔しげにそう告げると自分の船に戻っていくクードを見ながらテンダ。

「論理のすり替えだ。本当に護衛の必要が無いんだったら、今回も護衛が必要なかった筈だぜ」

 首を横に振るオクサ。

「辰騎士団がマンカ様を保護しているのは、異界技術の流出を防ぐ目的だよ。元々護衛なんて不要な世界に居るのだよ」

 テンダが、溜息を着く。

「あれがもう少し節操があれば、俺達の苦労も減るんだろうがな」

 オクサは、何も答えずヤマタノオロチに乗り込む。



「マンカって本気で強かったんだ」

 見学の最終日に校門の前で最後の挨拶をしているオリを待つ間に、スリーナが言うとマンカが首を横に振る。

「あちきって戦闘センス無いから、戦艦作成の道に入ったんだよ」

「冗談は、止めてくれ。殆ど単独でテロリスト集団を鎮圧しておいて、戦闘が得意じゃないなんて、嘘だろ?」

 オリに世話を押し付けられていたイレブが引き攣りながら言うと、マンカが肩を竦めて言う。

「あんな連中キリナガレの本家の人だったら、十分以内に鎮圧出来るよ」

 引き攣りまくるイレブに変わってツェンが言う。

「そのキリナガレの本家って化物の巣窟みたいだね」

 あっさりマンカが頷いた時、オリが戻ってくる。

「帰るよ」

 マンカが手を振り挨拶をする。

「それじゃまた、何処かで!」

 遠ざかっていくマンカを見て、黙っていたミリオが言う。

「絶対、辰騎士団に入り、すぐに傍に行きます!」

 その愛の告白とも思える言葉にイレブが呟く。

「恋がやる気に火をつけたのか?」

「そうしたら、戦闘技術を教えてください!」

 ミリオの言葉にこけるイレブとツェン。

 マンカが苦笑しながらも頷くのをみてからミリオが振り返り言う。

「イレブ、お前も一緒に辰騎士団に入るよな」

 イレブが手を、思いっきり横に振る。

「どうして兄貴が居る場所に入らないといけないんだよ!」

 ミリオが不敵な笑みを浮かべて言う。

「高みを目指そうといったのは、お前だぞ。正直、この学校で頂点が見えていたつもりだった。しかし、そんな事は、無いんだ。上には、上が居るんだよな。二人で駆け上がろうぜ!」

 イレブが溜息を吐く隣でツェンが言う。

「あたしも辰騎士団に入る!」

 彼等が、辰騎士団に入り、自分の判断が間違いだったのでは、ないかと思うトラブルに巻き込まれるのは、そう遠くない未来の話であった。

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