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休み無く耳を立てるヒア

戦闘なしの短い、兎騎士団のお話

 ドラゴンホーン完全制圧作戦前後、レイ帝国の内部でも大幅な戦力が投入され、戦力不足な状況の中、普段の何倍も仕事を行う騎士達が居た。



 帝都の衛星の一つにある兎騎士団の基地。

「二時間仮眠とるから時間になったら無理でも起こしてくれ」

 仮眠室に倒れこむ騎士。

 仮眠室には、そんな騎士が山の様に居た。

 司令室では、団長のナーミ=テペロスが無数とも思えるデータの中に居た。

「騎士達の疲労度は、どの程度だ」

 副団長の一人が答える。

「かなり高いです。戦力不足の対応による、通常の三倍の早期発見監視網を構築指揮の為にかなり無理をしています」

 ナーミが小さく溜息を吐く。

「この状態をどれだけ維持できる?」

 副団長は、辛そうに答える。

「残念ですが、このままの状態では、作戦終了後の戦力の再配置まで維持するのは、不可能だと思われます」

 ナーミが手を組み、額につける。

「ここが踏ん張り所だ。我等がここで踏ん張れないようなら、兎騎士団の存在価値が無い」

「しかし、現実問題として、この態勢を維持するのは、困難です。代えがきく軍人とは、違います」

 副団長が反論した時、扉が開き、ナーミより年配の騎士が入ってきた。

「テペロス団長、今回の騎士達の酷使は、明らかに勇み足としか思えない。通常の監視網でも十分の筈だ」

 ナーミは、秘匿回線で副団長に通信を行う。

『この部屋から通信が行われていないか?』

 副団長が慌てて、チェックをするとナーミが言う様に、基地全体に音声情報が流れていた。

『どういうことですか?』

 副団長が秘匿回線で返すとナーミが短文で返す。

『次の団長の地位を狙ったパフォーマンスだ』

 ナーミが立ち上がると年配の騎士の前に出る。

「その批判は、お前、独りの考えか?」

 年配の騎士は堂々と答える。

「騎士全体の意思と思って構わない」

 するとナーミが即答する。

「ならば、兎騎士団全騎士に減俸一割を三ヶ月だ。私と副団長は、減俸三割だ。記録してくれ」

 副団長は、頷き処理を始めようとするのを見て年配の騎士が慌てる。

「どうして、そうなるのだ」

 ナーミは即答する。

「当然だ、今は、十二支騎士団の存亡に関わる一大事、そんな状況で、騎士団長である私の意見に騎士達が反意を持つ事は、あっては、ならない事だ。反意を持つ騎士も当然だが、反意を持たせた我々上層部の罪も重い。減俸は、当然の事だ」

 年配の騎士が怒鳴る。

「お前の判断ミスだとは、思わないのか!」

 副団長が冷たく言い放つ。

「下らない事を言うのは、止めて下さい。今は、戦争状態と言って良い場面です。その状況で上官、特に騎士団長の意見に反意を示すのは明らかに団則に反するものです。その様な物を認めていたら、騎士団が成り立たなくなります」

 完全な正論である。

 しかし、年配の騎士は、まだ自分の敗北を悟っていない。

「冗談じゃない、それでは、お前が死ねと言ったら我々は、犬死しないといけないのか!」

 必殺の一言のつもりで放った一言をナーミは、切り捨てる。

「当然だ。逆に質問するが、お前は、団長にある私に、命を預けていないのか?」

 固まる年配の騎士。

 彼もここに来てようやく自分が自爆した事に気付き始めた。

 それでも必死に取り繕おうとする。

「我々の命は、皇帝陛下の為にある」

 ナーミも副団長も頷く。

 そして副団長が告げる。

「命の使い方は、団長が判断する。それが騎士団です」

 必死に反論を探す年配の騎士にナーミが言い放つ。

「はっきり言おう、お前は、兎騎士団が単なる監視官だと勘違いしていた。我等は、誇り高き、皇帝陛下に仕える、十二支騎士団だ。この命は、常に陛下と帝国の為にあり、その為ならどんな困難にも応え、決して命を惜しんでは、いけない」

 反論を許さない物言いに怯む年配の騎士。

 ナーミは、遠くを見るようにして語る。

「私も兎騎士団に入った時は、戦闘もしない無駄な騎士団だと思っていた。私は、そんな兎騎士団を嫌い、配置換えを懇願しに、この団長室に来た。その時の団長の話を一生忘れない」



 まだ十代のナーミが団長室に来て、真面目な顔をして言う。

「私は、最前線で戦いたいのです。ですから、他の騎士団への配置換えをお願いします」

 新人騎士の言葉に当時の団長が苦笑する。

「兎は、弱々しい、草食動物のイメージか?」

 ナーミが即答する。

「はい。私には、攻撃的な寅や戌があっています」

 そんなナーミの言葉に団長が言う。

「これは、陛下から聞いた話しなのだが、陛下が昔くらしていた場所の逸話でな、旅人に森の動物たちが自分の技能を使って食料を提供していた。その中で兎だけは、食料を提供する事が出来なかったらしい」

 ナーミが頷く。

「そうでしょう、兎みたいな小動物が人間に何が出来ると言うのですか?」

 団長が淡々と答えた。

「だから、その兎は、自ら旅人の焚き火の中に入り、その肉体で旅人の食料になろうとしたらしい。我等兎騎士団もその兎の様に、自分の身を、自ら受ける筈の感謝の言葉をも犠牲にして尽くす為にあると考えている。だから、敵を見つけて当然、発見できなければ失敗と、成功すらない、この監視任務を従事している。私は、その事に最大の誇りを持っている」



「私は、その言葉に感動し、決して褒められないこの兎騎士団に全てをかける事にした。今回の任務もそうだ。どれだけ頑張ろうと大きな評価には、ならない。しかし、万が一にも敵の発見が遅れれば帝国に大きな被害を及ぼす。それを防げるこの仕事を己のプライドにかけてもやり通す」

 語り終えたナーミに完全に圧倒され、団長室から逃げていく年配の騎士。

 そして副団長が質問する。

「もうあの男が行っていた、盗聴は、無効になりました。何処までが本当だったのですか?」

 ナーミが苦笑しながら言う。

「流石にだまされてくれないな」

 副団長が言う。

「当然です、騎士団の選択は、自己意思が優先されます。自分が望まない騎士団に行くなど普通は、ありえません。給料が少ない名誉優先の職務なのですから」

 ナーミが席に着きながら答える。

「あの逸話は、新型監視装置の設置に来ていたマンカ様から聞いた本当の話しだ。その時には、亀を侮って負ける話や、鮫に毛をむしられる話など兎の悪い話も聞いた。新人騎士が団長室に単独で入る事が可能かどうかで真偽が明白だ。それと、後で今回の任務が無事終了したら特別ボーナスが出ると噂を広げておいてくれ」

 副団長が頭を下げる。

「了解しました」



 兎騎士団は、ナーミの演説とボーナスで士気向上し、監視網を維持した。

 そして、この一連の戦いの中、決して奇襲を許す事は、無かったのであった。

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