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道を護るゴリラ

申騎士団のドラゴンロード防衛戦です

 亥騎士団が特攻をかけていた頃、ドラゴンホーン基地に近い、ドラゴンロードでも、戦いが行われていた。

 これは、その時の話である。



 申騎士団の旗艦、クレイジーモンキーのブリッジ。

「損な仕事だよな。戦闘力を保持する騎士団の殆どが参加するドラゴンホーン完全制圧作戦に参加出来ないなんてよ」

 一人の新人騎士の呟きを聞き、副団長エイテ=アテロスが頬を叩く。

「今度、同じ事を言った場合、貴方をクビにします」

 新人騎士がにらみ返す。

「どうしてですか! 作戦に参加出来ないのは、団長が人間だからでしょう!」

 エイテが睨み返すと、新人騎士が息を呑むが止まらなかった。

「どうしたって竜人が優先される。それが現実なんですよ!」

 新人騎士の発言に他の騎士達が頭を抱える。

 エイテは、冷たく言い放つ。

「誰か、この騎士を一刻も早くブリッジから退去させなさい」

 呆然とする新人騎士だったが、直ぐに気を取り直し、相手が女性と言う事もあり、詰め寄る。

「何で本当の事を言ってクビにならないといけないのですか!」

 詰め寄ってきた新人騎士の腕を掴むとエイテは、軽く捻って地面に叩きつけるとそのまま腕を逆間接に曲げていく。

「お止めください。この者は、まだ新人。これから私達が厳しく指導していきますので、今回だけは、お許しください」

 中堅騎士が慌てて止めに入り、エイテは、小さく溜息を吐いて言う。

「今回だけです。次は、ありません」

 エイテの言葉に中堅騎士が頭を下げて新人騎士を連れてブリッジを出る。

 ブリッジを出た後、新人騎士が舌打ちをする。

「女のクセに偉そうなんだよ」

 中堅騎士が新人騎士の胸倉を掴み壁に押し付ける。

「いい加減に口のききかたに気をつけろ。女だから、竜人だからなんて騎士には、関係ないのだ。確かに、後ろ盾が無い者が上にいけないが、それ以上に重要視されるのは、実力だ。これだけは、どの騎士団も同じだ」

 中堅騎士が力を抜くと床に尻餅をつきながら新人騎士が言う。

「だったら、どうして今回の作戦に参加出来ないのですか?」

 中堅騎士が呆れた顔をして言う。

「お前は、馬鹿か?」

 新人騎士が首をかしげていると中堅騎士が答える。

「我々と同じ様に丑騎士団も戦力を持つが今回の作戦に参加していない。理由は、解るか?」

 新人騎士が少し考えてから答える。

「帝都ゼロから動かせる戦力が無いからですか?」

 中堅騎士が首を横に振る。

「帝都ゼロと皇帝陛下を護る役目があるからだ。同じ様に我等申騎士団にもドラゴンロード警護の任務がある。特に今回の作戦をバックアップする必要上、このドラゴンロードに問題があったら作戦そのものが成立しなくなる。このドラゴンロード警護も作戦の重要ポイントなのだ」

 新人騎士がそれでもつまらなそうに言う。

「でも敵を倒せない以上、手柄は、無いでしょ?」

 中堅騎士が難しい顔をする。

「もし本当にお前が言うように敵が来なかったとしたら、我等申騎士団の今までの働きの成果として誇れる事だ。しかし、そうは、ならないだろうな」

 新人騎士が困惑する中、警報が鳴り響く。



 新人騎士が連れ出された後のブリッジ。

「少しは、落ち着け、アテロス副団長」

 申騎士団長、シック=ヘラクスの言葉にエイテが頭を下げる。

「申し訳ございません」

 シックが小さく溜息を吐いて言う。

「実際問題、あの若造が言うとおり、出番が無いのが最善だが、無理だろうな」

 エイテも複雑な顔をして頷く。

 そして、管制官から報告が入る。

「亥騎士団の特攻が始まりました」

 ほぼリアルタイムでドラゴンホーン基地周囲の戦闘状況がクレイジーモンキーには、送られて来ていた。

「欲深い騎士団長の中で、一番己の任務に実直だったあいつを嫌いでは、無かった」

 過去形で話すシックの言葉。

 エイテにも亥騎士団が壊滅的な被害が出る事が読み取れ、それが、亥騎士団長、ゴーノ=アレロスの死に直結する事も理解できた。

「次の亥騎士団長は、どうなるのでしょうか?」

 今後の展開の為の質問に対してシックが苦笑する。

「残念だが、それを検討する前に、仕事が出来たぞ」

「敵戦艦、多数確認!」

 管制官の言葉に緊張が高まる。

「亥騎士団の猛攻で火がついた。奴等も伸るか反るか、このドラゴンロードの封鎖がこの勝負の分かれ目になると判断したのだろう」

 シックの言葉にエイテが強い言葉で答える。

「我等が護るドラゴンロードには、指一本触れさせません」

 次々と新たな指示が発令され、警報が鳴り響く。



 ドラゴンロードを護る申騎士団の防御は、硬かった。

 元々、敵の強力な砲撃に対してドラゴンロードを護りながら戦う戦い方をしていた為、防御力は、高く、中途半端なチャージ砲では、有効打には、ならなかったのだ。

 戦況は、申騎士団有利で進んでいた。

 その中、敵戦艦の特に大きな戦艦が不審な行動を開始した。

 周囲に僚艦で囲み、ドラゴンロードに接近を開始したのだ。



 クレイジーモンキーのブリッジ。

「あの動きをどう見る?」

 シックの言葉にエイテが答える。

「出来るだけ接近し、そこで最大出力のチャージ砲を撃ち込み、ドラゴンロードに損害を出す作戦に出たのでは? もしそうだとしたら、我々も舐められたものです。十分な距離を接近する前に沈黙させます」

 シックも頷くも思案を続けた。

「あの戦艦がチャージ砲を撃った記録があるか確認しろ。その時の威力で、迎撃地点を決める」

 シックの言葉に、騎士達が動き、その結果がエイテに上げられる。

 それを確認し、エイテが眉を顰める。

「どうした?」

 シックの問いにエイテが答える。

「あの戦艦、一度もチャージ砲を撃っていないのです。主砲と思われる砲台から放たれたエネルギー弾は、通常のそれと識別されました」

 シックが敵の目的に気付く。

「近づく前に落とせ! あれは、自爆艦だ!」

 エイテが慌てて、配下の戦艦に指示を出して行くが、周囲の敵艦が邪魔し、有効打が決まらない。

 エイテが必死に指示を出す中、シックが宣言する。

「サードパーツの最終乗組員以外は、全員他のパーツに移動しろ」

 その言葉にエイテが驚く。

「団長、それでは、サードパーツを?」

「必要な犠牲を惜しむほど、愚かな事は、無い」

 シックの答えにエイテが悔しげな顔をして言う。

「クレイジーモンキーの分離機が突入する道を作ります。各艦、攻撃を集中して下さい」

 エイテの指示に答え、今まで全体的だった申騎士団の戦艦の攻撃が、相手巨大艦を警護する一部の戦艦に集中する。

 そして、シックがサードパーツの責任者に通信を繋げる。

『引継ぎ作業が遅れている、後にしろ!』

 シックと長く戦ってきた責任者の騎士の言葉にシックが答える。

「こっちも忙しいのだ、お前の都合に合わせられない。残った騎士達に通信装置を見ろと伝えろ」

 責任者の騎士が肩をすくませて言う。

『最後まで我侭だな。解った、少しだけ待て』

 一拍置いて答える。

『準備が整ったぞ』

 シックは、通信機に向って強い眼差しで言う。

「お前等の命、このドラゴンロードを護る為に貰い受ける。敵自爆艦に体当たりして、確実に無効化しろ。この命令に拒否権は、無い。最後の最後まで全力を尽くせ。以上だ、任務を続行しろ」

 サードパーツに残った騎士達が任務に戻っていく。

 重い空気がブリッジに流れる中、エイテに秘匿通信が入る。

 相手は、先程のサードパーツの責任者の騎士だった。

『安心しろ、誰もあいつの事を恨んでいない。最終乗組員と言うのは、この様な時に死ぬ事を前提に選ばれているのだからな』

 それでもエイテが複雑な顔をして言う。

「しかし、他に方法があるのでは?」

 責任者の騎士が真摯な顔で言う。

『覚えておけ、上に立つものは、部下に命令をする時に迷いを見せたら駄目だ。特に死に行く命令の時は、部下に一切の希望を見せたらいけないのだ。それが出来なければ無駄に悩ませて、無駄死になるだけだ』

 エイテが辛そうに頷くと責任者の騎士が言う。

『あいつの手を見てみろ、血がこぼれている筈だぞ。部下を死に行かせる自分の無力さを後悔している。だが、それを顔に全く出さないあいつだからこそ俺達は、喜んで死んでいける。それが、騎士団長と言うものだ。私が付き合えるのは、ここまで、後は、頼んだぞ』

 そして通信が切れる。

 エイテは、シックを見上げると、その手から赤い滴が落ちるのが見えた。



 クレイジーモンキーの分離機、サードパーツの体当たりで、ドラゴンロードから安全距離で敵巨大戦艦が爆発した。

 それを境目に襲撃が弱まっていくのであった。

 そして、申騎士団は、犠牲を出しながらもドラゴンホーン完全制圧作戦終了までドラゴンロードを護り通すのであった。

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