静かに忍び寄るスネーク
大きな戦いの前に巳騎士団は、大規模な海賊狩りを行うのであった
「今回のミッションは、解っているわね?」
巳騎士団長、ミリ=アルテの言葉に、緊張した面持ちで頷く、辰騎士団の新人、ミリオとイレブ。
「所で、どうしてまた辰騎士団の二人がこの作戦に参加してるの?」
必要な資料を渡しに来たマンカの台詞に巳騎士団のメンバーが苦笑しながら答える。
「今度の戦闘は、失敗の許されない物だから、ひよっこには、出番がないんだよ。それで、何でも良いから仕事をさせてくれと懇願した結果がこの仕事なんだよな」
複雑な顔をするミリオとイレブを尻目に、ミリがマンカに渡された資料を確認しながら言う。
「話しは、変わりますけど、イチカ様が、浮気を許さないって言っていたのって本当ですか?」
マンカが顔を引きつらせて言う。
「うん。だいたいハチバの人達って浮気に寛容か、地獄になるかどっちかなんだよね。有名な話だと、八刃の長だった人が、旦那さんが仕事で女性に誘惑された時に、その女性が住んでいた町が消滅したって逸話があるくらいだよ」
男性騎士達が一斉にひく中、ミリは、平然と言う。
「愛を軽く見ないことよ。女にとって、愛する人は、全て。その人の為だったら、世界を壊すことも厭わない。女は、そんな生き物よ」
マンカが首を傾げる。
「そんな物なのかな?」
ミリが苦笑しながら言う。
「マンカ様も愛する人が出来たら解ります。資料、ありがとうございました。これで今回のミッションを行えます。忙しい中、すいませんでした」
マンカが資料を返して貰い、ミリオ達の方を向く。
「それじゃあ、あちきは、新造艦の製造があるから帰るね」
他人に真似出来ない、単独での空間跳躍を行うマンカであった。
「相変わらず非常識だよな。あれが出来ないから俺達は、ドラゴンロードに頼るしかないっていうのに」
イレブの言葉にミリオが言う。
「大いなる力には、大いなる束縛があるらしい。羨んでても仕方ない」
「そうね、貴方達の仕事も一歩間違えば死ぬ危険な物よ。油断しないでね」
ミリの言葉に頭を下げるミリオとイレブであった。
「結局、ミリオ達の任務って何なの?」
スリーナの言葉に、クシナダから各種情報をダウンロードしていたマンカが答える。
「ドラゴンホーン以外の危険な戦力のあぶり出し。相手側にもぐりこんで、削り落とすのが仕事らしいよ」
「結構危険な任務じゃないの?」
スリーナの言葉に、テンダが不機嫌そうに言う。
「当然だ。ひよっこに手伝わせる物じゃねえよ」
オクサが笑顔でたずねる。
「そんなに弟さんが心配ですか?」
「違う! あっちの足を引っ張んないか、心配なんだよ」
怒鳴るテンダを周りのスタッフが微笑するのであった。
非合法コロニー。
そこに、ミリ達が居た。
「それで、帝国に一矢報えるのは、確かなんだな」
女海賊レディーコブラとしてミリが尋ねると、いかにも海賊風の男が答える。
「間違いない。奴等は、レイ帝国の基地を一つ占領している。そこは、簡単に、落ちない。このチャンスを逃すわけには、行かないよな」
卑しい笑みを浮かべる男にミリオとイレブが嫌悪の表情を浮かべると直ぐに周りの巳騎士団の騎士達が隠す。
「そうね、このチャンスを使えば、警備が厚いレイ帝国に大きな損害が与えられる。上手く行けば今後の仕事に大きなプラスになるわね」
笑顔で答えるミリの言葉に馬鹿笑いをあげる海賊や、裏社会の人間達。
シャドーコブラに戻ると同時に、ミリがミリオ達を睨む。
「もう少し感情コントロールを出来る様にしなさい。こういう裏任務でなくても、感情を表面に出るようでは、立派な騎士には、なれないわ」
落ち込むミリオ達を尻目に、巳騎士団のメンバーが調査報告を開始する。
「ここに集まった連中の中に、オーバーテクノロジーを持った奴等は、居ませんでした」
「集結率は、こちらが予想した通りで、今後これ以上待っていても、ロスの方が多くなると思われます」
報告を聞き、ミリが決断する。
「作戦は予定通りに行きます。各員万全の準備を行いなさい」
そして、ドラゴンホーン襲撃前のけして表の歴史には、出ない作戦が開始される。
「戌騎士団の巡回です」
その報告は、ミリがレイ帝国襲撃の会合に参加して居る時に届いた。
戸惑いが広がる中、ミリが机を叩き怒鳴る。
「裏社会の人間が、この程度の事でビビッて居るんじゃない! あたしが、足止めをするから、散れ。再集結の場所は、ここから少し離れたここだ」
一つの廃コロニーを指差してミリは、席を立つ。
その後、シャドーコブラは、海賊船として戌騎士団の巡回艇と戦闘を繰り広げた。
他の戦艦が逃げ切ったのを確認した所でミリが大画面で捨て台詞を吐く。
「この帝国の戌ども、このレディーコブラは、絶対に帝国に屈服しない。それをもう直ぐ教えてやる。覚えていろ!」
そして、ステレス機能をフル活用し、集合場所に向った。
再集結場所では、ミリは、英雄として迎えられた。
あの騎士団と互角に渡り合い、見事な逃げを見せた事に、その場に居た誰もが感嘆した。
「お前が居れば今度の作戦は、絶対に成功する」
そのお祭り気分の中、ミリが舌打ちする。
「冗談じゃない、折角溜め込んだ武器が半分も持ち出せなかったんだぞ! 奴等の基地を襲撃して、武器を奪わなければ十分な襲撃が出来ない!」
その言葉には、沈む裏社会の男達。
その中、一人の男が言う。
「今回の襲撃は、奇襲でなければいけない。基地を襲ったら相手の警戒が強くなる。ここは、各組織が保有している武器を集結させて、対応するほうが良い」
それに大半の者が同意するが、ミリが冷笑を向ける。
「馬鹿を言うな、どんだけの物があるか解らないのに戦えるか! だいたい馬鹿正直に自分のところの武器を差し出すお人好しがここに居るとでも思ったのか?」
言葉を無くす男達。
ミリが呆れた顔をして告げる。
「やっぱりここは、帝国の基地を襲撃して、まとまった武器を手に入れるのが確実だ。文句は、無いな!」
「貴女の所から人を出して、チェックすれば良い。好戦派のあんたの配下だったら、小細工するなんて誰も思わない」
そういった男をミリが睨む。
「そんな、何時後ろから刺されるか解らない危険な仕事をあたしの部下だけにやらせると言うのか?」
言われた男が怯む中、別の男が言う。
「あんたしか居ないんだよ、奴等を蹴散らしたあんただったら信用出来る。だから頼む」
ミリは、嫌々そうに答える。
「解った。だが、もしもあたしの部下に万が一の事があったら、宇宙の果てまで追いかけて殺すぞ」
冷や汗を垂らす男達を残しシャドーコブラに戻るミリであった。
「よくここまでこっちの想定通りに事が進みますね?」
イレブの言葉にミリが苦笑する。
「当たり前です。あの場所で発言した者の下には、こっちの密偵が仕込ませてあり、こっちの都合の良い方向に話を進むように思考操作を行っています」
ミリオが緊張した様子で言う。
「これからが本番ですね?」
ミリが二人を見て言う。
「今更だけど怖いのなら止めても良いわよ。奴等の基地に乗り込み、正確な戦力を把握して、報告、殲滅作戦中に脱出なんて正規の騎士の仕事じゃない。巳騎士団だけの仕事よ」
周りに居る巳騎士団のメンバーが頷く。
「竜人のお坊ちゃまには、ちょっときついぜ」
イレブが睨み中、ミリオがミリの顔をまっすぐ見て答える。
「こちらからお願いした事です。例えこの作戦に失敗して命を落としても後悔しません」
ミリが鋭い視線を向けてミリオを畏怖させる。
「そんな台詞を簡単に言うものでは、ありません。この命は、全て陛下の為の物。自己満足の為に失っていいものでは、無いのです。陛下の役に立たずに死ぬ事など私は、許しません!」
ミリオは、何も答えられなかった。
敵の船の客室に入りミリオが落ち込んでいた。
「俺の覚悟は、甘かったって事だよな?」
イレブもかなり効いた表情で言う。
「まあな、年季が違うのは、解っていたけどあそこまで強い信念持って言われると何も反論出来ないな」
ミリオが決意を固めて宣言する。
「今回の仕事は、絶対に成功させる。そして生きて帰って、陛下の為に戦い続ける」
「当然だ」
イレブも強く頷いた。
こうして、ミリオとイレブ・巳騎士団が送った情報を元に戌騎士団の指揮の下、軍が動き、レイ帝国へ襲撃を計画していた組織が壊滅的な被害を与えた。
軍の襲撃で海賊達の巻き添えで軽い負傷しながらも戻ったミリオを見てミリが言う。
「ただいま戻りました」
ミリが笑顔で答える。
「ご苦労様でした」
そして、ミリオが複雑な顔をして言う。
「もうあの作戦が始まっているのですよね?」
ミリが頷くとミリオが悔しそうな顔になるのを見てミリが告げる。
「直接、あの戦場で戦っていなくても、憂いを減らした我々もあの戦いに参加しているのです。自分の仕事に誇りを持ちなさい」
ミリオが胸を張り返事をする。
「はい」
ミリが率いる巳騎士団の作戦で憂いを減らす中、歴史に残るドラゴンホーン基地の攻防が始まっていた。




